第五話 分かち合う痛み
翌日……
「それは……どういうことですか?」
その日のハンドボール部の練習中に、カエデは顧問の先生に呼び出されていた。
「いや、だから今度の大会、お前はメンバーから外れてくれ」
「ど、どうしてですか!その日までには、絶対に治ります!いや、治してみせます!だから」
「ダメだ。万が一お前の足がまたひどくなったらどうするつもりだ」
「……!」
さらに顧問はこう続ける。
「第一、お前は無駄に気負い過ぎなんだ。お前の評判、部の中でもあんまりよくないぞ」
「え……!」
「最悪の場合、主将から外れてもらうことになり得るかもな」
「……」
その言葉を聞いた瞬間、カエデの肩から力が抜けた。
「今日はもう帰っていいぞ。くれぐれも安静にな」
「……」
「二階堂?どうした?帰っていいぞって」
顧問の言葉を聞く前に、カエデはフラフラと歩き出した。
その日の夕方。
マイ、シズル、ミオの三人は、下校道を歩いていた。
「今日、ちょっと寒いね」
「うん……寒がりの私には堪えるよ」
「なんだか栗生さんが言うとリアリティが出ますね」
「そ、そう……?」
すると……
「ん?」
橋の高架下に、カエデの姿を発見。
「どうして……どうしてもっと早く……!」
三角座りをしながら、うずくまるカエデ。
姿は体操服のままだ。
そこへ……
「?」
冬服をかけるマイ。
「小鳥遊……?」
「こんなところでじっとしてたら、風邪ひくよ」
「……」
「……?」
ただならぬオーラを感じたマイは、思い切ってこういった。
「何かあったの?教えて欲しいな」
「いい。教えても、どうせ分かんないだろうし」
「……またそうやって自分で解決しようとしてる。ダメだよって言ってるじゃん」
するとカエデは血相を変えて、
「本当のことを言ったまでだ!それの何が悪い!?」
と、大声で言い放った。
「……」
しょんぼりとした顔をするマイ。
「ご、ごめん……小鳥遊、関係ないのにな」
「うんうん、大丈夫だよ」
「……」
してあげることはもちろん大切だよ。だけど、してもらう事も大事だと思う
その言葉を思い出すと、
「あれ?」
「ど、どうした……?」
涙を浮かべた。
「二階堂さん、目から涙が」
「え……な、なんでもねぇよ!」
「……二階堂さん」
するとマイは、背筋を伸ばして立って、
「笑わないし、怒らないから私に話してみて。何か力になれるかも」
「……」
その瞬間、カエデの押さえていたものが、
「小鳥遊……!」
「ん?」
ガシッ
「う……うわあぁぁ〜〜〜!」
一気に爆発した。
「二階堂さん……」
すると、マイは背後を見て、
「ごめん、シズルちゃん、ミオ。二人にして欲しいの」
「……うん、分かった」
シズルは早々と歩き始めた。
「あ、待ってください栗生さん」
ミオも追いかける。
「そんな事があったの」
「……」
カエデは洗いざらい、今日練習中に起こったことを全て話した。
「オレ……今の状態だったら、ハンドボールを抜いたら何にも残らない。そのハンドボールですら……もうダメかなって思ったら、急に何もかも嫌になって……!
何だろう、オレって……こんなに弱かったのかな……こんなに、脆かったのかな……!」
「……」
それを聞いたマイは、
「……あははははは」
「!?」
突然笑い出した。
「な、何が……何がおかしい!」
「知ってたよ。そんな事。弱いとか、脆いとか。二階堂さんが気付かなかっただけだよ。
昨日の放課後、精神が弱いって言ってたけど、まさしくその通りだと思う」
「え……」
「何というか、二階堂さんってずっとずっと、自分に素直になれなかった。それだけだと思う」
「素直に、なれてない」
こくりと頷くマイ。
「でも、大丈夫だよ。二階堂さん」
「大丈夫じゃないよ……きっと……みんなオレを煙たがってたみたいだから……」
「大丈夫だって。失くしてしまったら終わり。そうじゃないでしょ?失くなったら、また探せばいいし、取り戻せばいいんだよ」
「!?」
カエデは、ハッとした。
「きっと二階堂さんが変われば、みんなもまた、二階堂さんに手を伸ばしてくれるよ」
「……」
「こんなふうに、ね」
マイはカエデの左手を、そっと握った。
「……ひとつだけ、教えて欲しいんだ」
「え?」
「何でオレに、ここまで接してくれる?」
少し考えたあと、マイはこう言った。
「友達、だからかな」
「……」
カエデの顔は、耳まで赤くなった。
「へくち!」
が、マイの大きなくしゃみで我に返る。
「そ、そういえば……冬服……」
「いいよ。また明日返してくれたら。着替えるのも忘れて飛び出しちゃったんでしょ?」
「あ……」
パタパタと衣服についた汚れをはらったあと、マイは歩き出した。
「じゃ、また明日ね。二階堂さん」
「うん」
河原を登ると、そこにはシズルとミオがいた。
「あれ?待っててくれたんだ」
「気になって戻ってきちゃった。ごめんねマイちゃん」
「うんうん?いいよ。大丈夫……へくち!」
また大きなくしゃみをする。
「大丈夫?お姉ちゃん」
「え?……うん。大丈夫。ちょっと寒いだけ」
「じゃあ大丈夫じゃないよ……」
その日の夜、カエデの部屋。
部屋の中は片付けられていて、壁にはハンドボールのチーム、{マグマヒートモンキーズ}のポスター。
ただ女の子らしさはない。
「……」
ベッドに寝転びながら、考え事をするカエデ。
ガチャ。
「ん?」
「何だ、帰ってたのか」
部屋の中にカエデの兄が入ってきた。
「ダイにぃ」
「早く降りて来い。メシできてるぞ」
「……」
するとカエデは、あえて聞いてみた。
「ねぇ、ダイにぃ」
「何だ?」
「今日、この間話した転校生に言われちゃったの。オレは自分に素直じゃないって。
それに……オレ、今日次の大会のメンバーから外されちまった。
……何やってんだろうな。オレ。足とか怪我しちまうとか……さ。今までなかったのに……」
カエデの兄は、少しだけ黙ったあと、カエデの肩を持って、
「カエデ、お前は、自分に素直じゃないだけじゃねぇ。お前はほかの人との関わりを自分から放棄しちまってる。
本当に出来る人っていうのは、自分自身でなんでも出来る人じゃねぇ。
たまには半歩下がって他の人を立てたり、ほかの人と痛みを分かち合える人こそ、本当に出来る人って奴だ」
「ダイにぃ……」
「それを、その転校生の子は分かってる。それがお前と転校生の子の、大きな違いだ」
じっと見つめ合う二人。
「それが分かったら、お前も頑張るんだ。自分の気持ちに素直になるんだ」
「……うん」
しかし、自分にそれが出来るのだろうか。カエデは少し不安になった。
翌日……
「ふんふんふふ〜ん♪ふんふふ〜ん♪」
鼻歌を歌いながら靴を履き替えるマイ。服はジャージを着ている。
と、そこへ。
「あ、小鳥遊」
「ん?……おはよう。二階堂さん」
「お、おはよう。……えっと……」
「ん?」
カバンからマイの冬服を取り出す。
「き、昨日はありがとう。ほら、礼を言い損ねたからさ……」
「そんな、お礼なんていいのに。困ってる人を助けるのは当然だしさ」
「当然……か」
そのまま教室へ向かう二人。
「……」
その様子を見るユウジ。何やら確信したようだ。
その時通信が入った。
「もしもし」
「進藤君。今エンプティらしき影が、地上に向かって落ちてきていると連絡が入った」
「何……!」
土曜日の授業は2時間で終わり、放課後、マイとシズル、そしてミオは下校路を行く。
と、そこへ……
「あ、あのさ」
「?」
カエデが現れた。
「ご、ごめん。悪いけど……い、一緒に帰っても……いいかな?」
勇気を出してしゃべってみる。すると、
「うん。もちろんだよ」
「私も二階堂さんと、お話がしたいです」
「いいですよ!」
マイ、シズル、ミオは三人とも、喜んで歓迎した。
「足、大丈夫?」
「あぁ。大分ましだ。でも、大事をとってしばらく練習しないようにしてる。心配かけたね」
「うんうん?大丈夫だよ」
と、カエデのカバンにキーホルダーがついてあった。
気づいたのはシズル。しかしそのキーホルダーは幾分ぼろぼろだ。
「そのキーホルダー、どうしたんですか?」
「あぁ、これ?オレの好きなハンドボールチームのマスコットキャラ、ゴウカくん。
初めてハンドボールの試合を父さんと兄さんと一緒に見に行った時、兄さんが買ってくれたんだ。
それ以降、ずっと肌身離さず持ってる。お守りみたいなもんかな」
「へぇ……二階堂さんって、昔からずっとハンドボールやってたんですね」
「父さんの事、ずっと見てきたから」
遠い目をしながら、話を続けた。
「父さん、ハンドボールの選手だったんだ。だけど、世界大会が近づいた日、足のケガで選抜に選ばれなくなって……
その影響が災いしたか何か知らないけど、世界大会への切符を、父さんのチームは逃した。
すると、父さんは責められた。お前さえケガしていなければ、セイザ地方代表は世界大会に行けたのに。
それで父さんは、ハンドボールセイザ地方代表として、一度も試合をせずハンドボールから身を引いた。
父さんは未だにそれをショックに思っていて、オレがハンドボールをするって言ったら、まぁ怒られたよ。
だけど、オレはそれでも、父さんの背中を追ってハンドボールをしたかんだ」
「それで足のケガで代表を外された時、あんなに取り乱してたんだ」
こくりと頷く。
「じゃあ、どうしてハンドボールを今でも続けてるの?」
「ん〜……父さんに追いつきたいってのもあるけど、結果的には……」
笑みを作って、カエデはこう言った。
「ハンドボールが好き、だからかな」
それを聞いて、3人も笑顔になる。
「二階堂さん、かわいいですね」
「え?」
「だって、ハンドボールが好きだからハンドボールをする。とても素直なんだと思います」
「す、素直はともかく、かわいいはや、やめろよ」
笑い合う4人。
「……」
本当に出来る人っていうのは、自分自身でなんでも出来る人じゃねぇ
たまには半歩下がって他の人を立てたり、他のと痛みを分かち合える人こそ、本当に出来る人って奴だ
なんだか、マイたちと話していると心が晴れてくる。
兄が言っていたことは本当だ。カエデはそう思った。
「本当だな、ダイにぃ」
「ん?」
「え?あ、いや。何でもない。何でもないよ」
だがその時だ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
「?」
「じ、地震!?」
ドゴ〜〜〜ン!
突然道路の背面が割れたと思うと、中から巨大なポケモンが飛び出した。
「ギッシャ〜〜〜〜〜!」
「ハガネール?」
確かに見た目はハガネールだが、真っ白く変色している。
「エンプティ!」
「……は?」
すると二人はフュージョンボールを取り出し、
「な、ちょ、何を」
「「スタートアップ!」」
キラ〜〜〜ン!
「ミオ、二階堂さんを連れて逃げて」
「うん、分かった。気をつけて!」
マイはシズルに乗り込み、空を飛んだ。
「無茶だ!あんな奴に勝てるわけが」
「勝てますよ!お姉ちゃん達は!」
「え?」
ミオは握りこぶしを作り、カエデにそう言った。
「おりゃ〜〜〜!」
シズルから飛び降り、メガホーンを打つマイ。
キィン!
「!?」
しかしまるで効いておらず、反対にハガネールはしっぽを振ってきた。
ブウン!
「ぐっ……!」
ブウン……バシ!
「うわぁ!」
ドサ!
「小鳥遊!」
カエデは駆け寄ろうとするが、
「二階堂さん……逃げて!」
「そ、そんなこと言われたって……」
ハガネールはその鋭い眼光を、カエデに向ける。
「……!」
「くっ……!」
バシ!
「ぐぅ……!」
しっぽをうまく防御するが、返しのしっぽが襲ってくる。
ズウン……!
「うぐ……!」
目の前にコットンガードが立ちふさがった。
「小鳥遊!栗生!」
「は、早く……逃げて……!」
「……」
必死で防御するが、ハガネールの体重を乗せたしっぽの一撃は強烈で、
ドッゴォ!
「「うわぁ〜〜〜!」」
コットンガードごと、マイとシズルは吹き飛んだ。
「あっ……あっ……!」
そしてハガネールは、ミオに対してしっぽを振り上げた。
「ひっ……!」
「あぶなっ……!」
考えるより先に、カエデの体が動き、
ガッ……!ズサ!……ズシ〜〜〜ン!
「グル!?」
「……」
目を開けると、目の前にカエデがいた。
「だ、大丈夫か?」
「は、はい。ありがとうございます」
「二階堂さん!」
声を上げるシズル。上を見上げると……
「!?」
ハガネールが再びしっぽを振り上げていた。
「くっ……!」
ミオをかばうように両腕を広げるカエデ。
「やれるなら……オレからやれ!」
「グルアァ〜〜〜〜〜!」
ズウン……!
カエデに、痛みはなかった。
「んがあああぁぁ……!」
「!?小鳥遊!」
マイが両腕の槍を使い、受け止めていた。
「私の妹と、友達に……手を出すなあぁ〜〜〜!」
グググググ……!
「んぐ……!」
しかし重さが増してきて、徐々に膝が折れてくる。
「二階堂さん……!だから……!逃げてって……!」
「……」
自分の気持ちに素直になるんだ
と、兄の声が響く。
素直になるとは、どうすればいいのだろうか?
答えは、簡単だった。
ガシ!
「二階堂さん!何を……!」
ハガネールを支えるカエデ。
「オレの兄さんは、オレに、自分の気持ちに素直になれって言った。だから、オレは素直になるよ。
本当に出来る人っていうのは、オレみたいに自分自身でなんでも出来る人じゃない。
たまには半歩下がって他の人を立てたり、ほかの人と痛みを分かち合える人……
小鳥遊や栗生みたいな人が、本当に出来る人って奴だって、兄さんが言ってた……
今はそう思える!だからオレは、気付かせてくれた友達を傷つけたくない!」
「に、二階堂さん」
「だからオレは、逃げることなんて出来ない!」
そう聞いたマイは、笑顔になった。
その時だ。
キラン!
「!?」
カエデの目の前に、赤いフュージョンボールが現れた。
「これは……!」
「フュージョンボール!?」
そしてカエデはその中に入ってしまい……
「!?」
目を覚ますと、目の前にはゴウカザルが見えた。
「こ、ここは……」
「やはり、小鳥遊さんは不思議な力を持ってる」
「!?だ、誰!?」
「このボールを開発した者だよ」
ユウジの声だ。
「だが、今は何分時間がない。急いでスタートアップを始めてくれ」
状況が全く飲み込めない。
「な、なぁ」
「なんだい?」
「それをすれば……オレは守れるのか?」
「もちろんだよ」
自分の痛みを分かち合ってくれた友達を守る。それだけで、戦うには十分な理由だった。
カエデは、指をパチンと鳴らすと、融合を始めた。
「スタートアップ!<Infanape>!」
ゴォ〜〜〜〜〜!
「うぐぐ、も、もう……ダメかも……!」
少し地面にめり込むマイ。支え続けるのも限界のようだ。
「ま、マイちゃん!」
近づくシズル。だがこのままでは間に合わない。
「くっ……!」
「お姉ちゃ〜〜〜ん!」
その時、
「ブラストバーン!」
「!?」
チュド〜〜〜〜〜ン!
何かがハガネールのしっぽのあたりで爆発した。
「……」
カエデだ。しかし姿はゴウカザルのようなものになっている。
「に、二階堂さん……けほっ」
少し煙を吸い込んだが、マイは無傷だった。
「……!?」
そしてカエデは自分の姿を見て、
「な、何だこれ!?ど、どうなってるんだ!?」
「す、すごい……二階堂さん、変身してる……」
「へ、変身?ちょっと説明してくれないと意味が……」
しかし、
「ギッシャ〜〜〜〜〜!」
そんな話をしているうちに、ハガネールは大きくのけぞって頭を突っ込ませてきた。
アイアンヘッドだ。頭はまっすぐ、カエデに向かって突き進む。
「危ない!」
「!?」
ズシ〜〜〜ン!
しかしハガネールの頭部はカエデを押しつぶしておらず、
「ぐっ……!」
カエデは、ハガネールの背にしがみついていた。
そのまま腕の力だけで背中の上に立ち上がる。
「グワアォ!グワアォ!」
カエデを振り落とそうと暴れるハガネール。しかしカエデは抜群のバランス感覚と素早さでハガネールの胴体を駆け上がり、
「大人しく……しろ!」
パチン!シュボウ!
指を鳴らすと、腕に炎がほとばしり。
ドッゴォ!
思い切り頭を殴りつけた。
「グワアムゥ……!」
ドシ〜〜〜ン!
倒れ込むハガネール。
「わ、我ながらすごい力……」
「聞こえるか、赤いお嬢」
カズマの声が聞こえる。
「え?お、オレ?」
「うむ。見事な戦いぶりだぞ」
「そ、そう……てか、あなたは……」
「説明する暇はない。後日、改めて連絡をしよう」
ホロロジウム軍事センターのモニターが、マイを写す。
「しかし、3人目のフュージョンボールの持ち主が現れるとは、君はすごい人望の持ち主のようだな。小鳥遊君」
マイは、えへへと頭をさすった。
しかしその時、ビルの屋上から、
「……」
フードをかぶった少女が、羽のダーツを手に取り、
グサ!
それがハガネールに命中すると、
ブシ、ブシブシブシブシ……グワッシャ〜〜〜〜〜!
「ギガッシャ〜〜〜〜〜!」
ハガネールは、青紫色に変色した。
「な、何だ!?」
「変色した……!」
ハガネールは、口から砂埃のようなものを吹き出している。
「く、そっちがその気なら……エンプティブレイクだ!」
「え、エンプティブレイク!?」
戸惑うカエデ。しかしマイは、そんなカエデの腕を取った。
「大丈夫。二階堂さん」
「……」
するとにっこりと、カエデは笑みを作った。
「あぁ。分かってる」
じっくりと力を貯め始める二人。
「ギガ〜〜〜〜〜ッシュ!」
そこへハガネールが突っ込んでくる。
「させない!」
ポワワワワ……ファサ!
コットンガードでなんとか防ぐシズル。
「んん〜〜〜……はぁっ!」
すると上空から。ブレイクボールがふわふわと降りてくる。
「はぁ、はぁ、あ、あれは……」
「今だよ!二階堂さん!」
「……あぁ!」
カエデは猛ダッシュで駆け抜けたあと、ジャンプして……
「エンプティ……」
ガシ!
「ブレイク!」
片手でボールを持ち、ハンドボールの要領で力いっぱい投げつけた。
ズウン……!
「ギッシャアァ〜〜〜〜〜!」
キラ〜〜〜〜〜ン……ドゴ〜〜〜ン!
「「やぁったぁ〜〜〜!」」
喜び合うマイとシズル。
「はぁ……よかった」
ミオは力が抜け、腰が砕けたようである。
「……」
凛とした表情で、ブレイクボールに入ったハガネールを見るカエデ。
その心は、すっかり晴れ渡っていた。
それをビルの上から見つめるフードの少女。
「……」
「仲間に?」
変身を解いたマイは、カエデの一言に驚く。
「あぁ。この力があれば、友達を守れる。オレと痛みを分かち合ってくれた、大切な友達を」
「うん。もうひとりじゃないよ。二階ど」
途中でカエデは右手を開き。
「カエデ、でいいよ」
「……」
見つめ合うカエデ以外の3人。
「よろしくね!カエデちゃん!」
「あぁ、よろしくな。マイ、シズル!」
4人は大声で笑いあった。
カエデの顔に、心からの笑顔が見えた。
TO BE CONTINUED……