ポケットスペース
第一章
2話「騒動」
ファス地方にあるサイゲタウン
そこには老人たちしか住む者はいない


「2年、か・・・」

そう重くつぶやく一人の男性
目元を皺だらけにし、遠くを見つめていた。

少しじめっとした陰鬱な季節と夕暮れ
それらも相まって、より物悲しげな感じであった。

「6番、速く行くように」

本来このサイゲタウンにいるはずのない若い女がそう言う
老人は何も言わず、ただ俯き
そして山の中へと入っていった。



―ファス地方・めいきゅうのもり―

「なんなんですか、あなたは!」

レイゴが言い放つ

「あ、ごめんなさい!決して怪しいものじゃないです!本当に!マジで!」
少女は慌てふためく
「私はさっきのやつに、あなたたちみたいに目をつけられちゃって・・・
 走って逃げ回ってたんだけど迷っちゃって、木の上に登って隠れてたの!」

「随分とこう、アグレッシブだね…」

流石のシンペイも呆れ顔だ
しかし状況が状況だっただけに仕方が無かったのであろうという気持ちも
わからないではなかった

「シンペイ、急ごう! 追わなきゃ!」
「無理だよ、もう追いつけない それに…」

少女に視線を落とすシンペイ

「……惚れた?」
「そんなわけないだろ! ただ放っておくわけにはいかないし」
「あ、あの… あたし『ミカ』っていうの
 かわいいポケモンを集める旅してんだ! よろしく〜♪」
スっと立ち上がるミカ
意外と頑丈なようだ。

「あ、シンペイって言うんだ よろしく」
「俺はレイゴ、じゃあ気をつけて」
その場を離れようとするレイゴにミカが背後から掴みかかる。

「ま 待って! またさっきみたいなのに襲われたらヤダし、一緒に行こ!?
 ね、ね、ね!」
「ちょっ ベルト掴むな! 脱げる脱げる!!」
「脱がして叫ぶよ!? へんたーいって叫ぶよ!? OK!?」
「わかったわかった、わかったからはなして!」
パアァ・・・っと明るい顔になるミカ
そして喜び飛び跳ねる。
急に手を離されたレイゴは前に倒れ、シンペイも(叫んでもこんな所誰もこないでしょ・・・)と呆れていた。




「んで
 いつまで付き合えばいいの? この森抜けるまでだよね?」
歩みながら会話する3人

「えっとぉ… まぁそうしてもらえると嬉しいんだけど、目的を達成するまでは付き合ってほしいかなーって」
「目的?」
「そ、世界中の可愛いポケモンをゲットする旅!」
そう言うとポーチの中から1冊のノートを取り出す
中には旅の目的から計画、手に入れるポケモンの名前や絵が描かれていた。

「え、これ全部手に入れるために付き合うの? 俺たちが?」
「ゴメイワクナノハショウチデスガ…」
小声でそう言うミカ

「でも、僕たちも僕たちの目的があるから ねぇ?」
「うん、無理だな」
キッパリ言い切るレイゴ

「だよねー・・・ さっきみたいなのに襲われたらと思うと怖いけど」
「旅をするのにポケモンとか連れてないのか?」
「連れてるよ!出ておいでバチュル!!」

ミカはボールを上に投げ、ポケモンを出した。

「どう?かわいいっしょー!」
ドヤっとするミカ

「へぇー確かにかわいいね!」
「このポケモン、強いのか?」
「ううん、バトルなんて殆どしたことないからわかんない!
 でも可愛いポケモンと一緒だとそれだけで癒されるっていうか〜
 何かマジでとにかく幸せ!って気持ちになるの!」

そう言いながらバチュルをボールに戻す

「それじゃあバトルに特化したポケモンはいない、と」
「うん、バトルは苦手」
「よくそれで旅に出ようと思ったね」
「もち、可愛い子たちのためならたとえ火の中水の中森の中!」
両手を腰に当て、エッヘン!と言わんばかりの顔だ

「そしてその森の中で迷った、と」
「ヴッ…」

そんな話をしてると出口が見えてきた
ここを抜ければ【カワゴエシティ】だ
一刻も早くポケモンたちを回復させたかったレイゴは急ぎ足に、2人もその後を追う。


―カワゴエシティ・ポケモンセンター―
ポケモンを預け、回復を待つ3人
その間にミカがレイゴとシンペイの旅の理由を聞き、「それならば自分も手伝う」と言わんばかりに燃えていた。

レイゴは荷物が増えるだけだと気を重くするのだが、話を聞く限りミカは色んな所と繋がりがあるらしい

『自分はその繋がりで情報を提供するから、共に旅をするのはどうだろうか』
悪くはなかった
もしかしたらゴブニュ団の情報が手に入るかもしれないのだから
レイゴの旅の修行ルートはミカにとっても通りたかったルートだ。


「要するに、Win-Winの関係ってことね!」
またしても両手を腰に当て、エッヘンといわんばりのミカ

「まぁ、そうなるか・・・?」
すると回復が終わり
レイゴがセンター内のアナウンスで呼ばれる

「お待たせしました、ポケモンさんたちはすっかり元気になりましたよ!」
「ありがとうございます」
ジョーイさんから2つのボールを受け取ると、ボールベルトにセットし
3人は施設を出た


「レイゴ君、これからはどうする?」
「そうだな、まずはショップで買い物したいな」
「はいはーい!賛成賛成! その街でしか売ってないコスメとかもあるし、巡ってみよーよ!」
「いや、薬を買いたいんだけどね・・・」
そんな話をしていると突然おっさんの叫び声が響いた

「うおーいっ!また出たぞ! あのニャースだ!」
声を聞き住民たちが集まり、あらゆる道具を用いて捕まえようとする

「なんだありゃ・・・」
思わず呟くレイゴ

「おや、ここの街の子達ではないのかい?」
ふくよかで気の良さそうなオバちゃんが話しかけてきた
何でもこの街では物をくすねるニャースが以前から出現し始めたらしい

「よし、バトルで修行がてら問題解決といくか」
「言うと思った、よし! 僕たちも捕まえよう!」
「あ、ちょ、ショップは〜!?」

そんなやり取りをしながら3人はニャースを追い始めた

「見る限り、何もとってないような・・・!」
「いや、尻尾だ」
「し・・・尻尾・・・?」

既に息を切らせているシンペイ

「あ、何か青いのがはみ出てる!」
「『みずのいし』だな」

すると急にニャースは横に飛び、公園内へと入る
しかしその瞬間、ニャースの身体は電気を帯び 倒れた

「! なんだ!」

後には何もなかった少し遅れて何人かが集まってきた。
街の人たちはレイゴ達が懲らしめたと思い、感謝の言葉を口にしたが
何もしていない本人たちは少し放心状態である。

「これでやっと何も気にせず露店を出せる、ボウズ
 礼と言っちゃあ何だがその『みずのいし』受け取ってくれ」
「え、あの…」
「いやぁ〜よかったよかった!」

ガハハと笑いながら消えていくそのオッサンに続き
散り散りになっていく者達
ニャースは網で捕らえられ、保護施設に送られるのだという

「一体なんだったんだ… 『あれ』は…」

未だあの電撃が頭から離れない
すると1人の女性がスっと出てきた

「随分とヌルイのね、あんな雑魚に翻弄されるなんて」

歳はレイゴより少し上だろうか?
冷たい雰囲気と妙な妖しさも感じる。

「…さっきの電撃はあなたの…?」
「だったら何? 君に関係あるかしら?」
「何か生意気ぃ…」

ミカがそう零す
すると相手も少し見下したように言う。

「アナタのような頭の中までハッピーな子には敵わないわよ」

薄い笑みを浮かべながらそう言う

「はぁ?超失礼! さっきから偉そうになんなの!?」
「そりゃ偉いわよ、だってこういう者ですもの」

女は【Pギア】を取り出し、身分を証明する項目をタップし
見せつけてきた
するとシンペイが食い気味に

「あ!国際警察! それにその星のバッジ…」

カードの証明写真の下には二つ星のバッジが付いていた
女は得意げに話し始める。

「階級は4段階あるの
 バッジなしから星が1つ、2つ、3つ…とね」

「すごい!初めて見た! あ、僕シンペイって言います! へへっ」
「ちょ、あんた何いきなり自己紹介してんの!」
「だって〜 えへへ…」

「じゃあ、これで」

キルリアを出し"テレポート"で消える。

「あ、行っちゃった! サイン欲しかったな〜
 というか、何だかこう 何とも言えない色気があったな…」
「あたし、あいつ嫌い」
「なんでさ! そりゃ少しクールかもしれないけど―」
「き・ら・い・な・の!」
「「そうですか…」」

思わずレイゴもそうハモってしまった。

「(あの雰囲気、本当に妙だったな…)」

どうにもレイゴはあの女の雰囲気が気になるようだ。

「なに? レイゴも気になるわけ?」
「え、いや …ショップいこっか!」
「男って生き物は…」

呆れるミカと未だフワフワした状態のシンペイを連れ
ショップへと入っていくのであった。



―ドーマの祭壇―

「良くないのぅ、良くないのぅ…
 こういうのは本当に良くないわ… ふぇっふぇっふぇ…」

ドーマの祭壇
ここには壁や台座や地面
その他様々な物に色んな文字が刻まれてる。

ここを知る者は本当にごく一部の人間だけである。

「そろそろ、そろそろ繋がれるかぁぁ…?
 うえっふぇっふぇっふぇ…」

老婆がそう呟いていると、着物を着た色白の若い女がやってきた。

「まだ、かかりそう?」
「そう焦りなさんな、まだまだまーだまだ
 時間はある たっぷりあるのだからのぅ」

色白の女はポケモンを出し、そのポケモンと目を合わせる

「この星の時代、再び零から始めなければね
 ねぇ? キリエル…」





―場所は戻り、レイゴ達は買い物をしていた
フワフワしてるシンペイはショップのわきにあるベンチに座って2人を待っていた

「お、『わざマシン』に… 『わざレコード』まで!」
「ねねね、その2つってどう違うの?」
「どっちもポケモンに技を覚えさせられるけど
 『わざマシン』は1度使っても無くならないけど『わざレコード』は1回使うと無くなるらしいんだ」

「え、だったらマシンの方がいいじゃん!」
「そうとも言えない、レコードはレコードで便利な技も多いからね」

そんな会話を交えつつ、買い物を終えてシンペイと合流した。

「ちょっとはなおった?」
「へ?何が?」
「シンペイの色ボケよ!」
「い、色ボケとは失礼な! 僕は純粋にあの人に憧れと尊敬の念を抱いてるだけさ!」

レイゴは2人を無視して歩き始めた。

「「待ってよ!!」」

そう大声を出し、2人はレイゴの後を追った。

「なんで無視するのさ!」
「ちょっとマイペースすぎない!?」
「急いでるんだよ、早く強くなって
 早く奴らを潰さないと…」
「強くなるったって… あ、もしかして!」

シンペイが素っ頓狂な声を上げる。

「『ジム』だ 『ポケモンジム』に挑戦する
 あそこなら強いリーダーと戦うことで強くなれる」

「そっか、友達のこともあるもんね そりゃ急ぎたくなるけど
 折角一緒に旅してるんだからさ、もうちょっとコミュとろうよ」

少し苦々しい笑みを浮かべ
ミカが顔を覗き込むように言う。

「ちょっとあたしも強引に付いてってるけど、その分ちゃんと情報提供するからさ
 ね?」

フーっと息をつくレイゴ

「…悪かった」

その一言を聞き、笑顔で顔を見合わせるシンペイとミカだった。



つづく
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■筆者メッセージ
今回から書き方を変えました
前回は小説って感じより台本って感じでしたしね

元々そういった書き方の方が書きやすいのですが、あくまで小説サイトですから小説を意識しないとなぁ・・・なんて思ったりしたのですが
それでも小説とは程遠い出来なものでお恥ずかしい・・・

「」による行の区切り方は、その時々において
「ここはこの行とこの行は空けない方がいいかな」と個人的見やすさを重視しているので
話題の区切り方がおかしいとは思いますが、ご了承くださいませ
クロロ ( 2020/06/14(日) 19:01 )