ACT.1 不思議な日記
セミの鳴き声が聞こえ始める初夏。僕は授業を終えて、家に帰る前に行きつけの書店に向かった。買いたい本があるわけではないが、ただ立ち読みをして時間をつぶす。僕はそれだけでよかった。しばらく時間が経過し、家に帰ろうとしたときに、ふと一冊の本に目が留まった。それは書店にはあまりお目にかかれない日記のような本だ。中世の古文書みたいな装飾をされた表紙に、辞典のような分厚さを誇っている。僕はその本が気になり、買うことにした。早速それを持って帰り、家に帰って自分の部屋で読んでみた。ところが、その本はのページが全て白紙で、タイトルも載っておらず、おまけに著者も出版社も載ってない。いわばこれは、誰のものでもないただの洒落た日記だった。僕は少しがっかりした。けど、ポジティブに考えてみればこういうおしゃれな日記はないし、この機会に日記でも書いてみようかな…。僕は筆箱から鉛筆を取り出し、日記を書いてみた。…だが、書き始めて五分で飽きてしまった。それも当然だ。ここ最近、特に何か変わったことは起きてないし、書くほどの事でもない。僕はつまんなくなり、昨日は夜更かしをした事で眠かったため、寝ることにした。ああ、何か変わったことが起きないかな…。そう思いながら、眠った。