開始
「これだな。いやー懐かしい」
段ボールの中にあったブルーのGBA本体とサファイアのソフト。埃を被っていて、かなり古くなっている。
「まぁ、小学生のとき以来だからなぁ。じゃ、早速やってみますか」
母親から電池を二本もらい本体に装着する。本体とソフト各々の接触部分に息を吹きかけて装着させる。
「フーフー!!よし、これでいい」
ゲームの電源を入れる。すると、画面が表示されてオープニングが流れる。
「久しぶりだなぁ……あっデータが壊れている。マジか、初めからしかできないなこれ」
若かりし頃につけた可愛らしいポケモンの名前や、改造データで千単位で持っていた飴なんかがないのは辛い。あのときは友達のなかじゃヒーローだったことを覚えている。
「ま、いまさら執着なんてないからいいか。
」
すこし思うところはあるけれど、はじめからを選択する。
『いやーおまたせおまたせ!ポケットモンスターの世界へようこそ!』
『私の名前はオダマキ!でも、皆からは「ポケモン博士」と呼ばれているよ!』
『ポケットモンスターすなわちポケモン。この世界にはポケモンと呼ばれる生き物たちが至るところに住んでいる!』
『我々人間はポケモンと仲良く遊んだり助け合って仕事をしたり時には力を合わせて戦ったりしながら一緒に暮らしているんだ!』
『……しかし我々はポケモンのすべてを知っている訳ではない。ポケモンの秘密はまだまだいっぱいある!その秘密を解き明かすため私は研究を続けているというわけなんだ!』
へぇ、そうなんだ。ぶっちゃけた話ポケモンのコンセプトなんて覚えていなかったな。
『ところで君は…』
俺のプロフィール設定だ。勿論男の子、ネカマなんているがあれは論外だと自分的には思っている。
名前はユウタ。そのままにしておくのが流儀だ。
『……そうか!君が今度私の住む町、ミシロタウンに引っ越してくるユウタ君だったのか!』
『よーし準備はいいかい?これから君だけの物語が始まろうとしている!夢と冒険と出会いに満ちたポケットモンスターの世界へ勇気をもって飛び込んで見てくれ!ではまた会おう!研究所で待っているぞ!』
その時、俺は強い頭痛で意識を失ったのだった。
「裕太、友達が来ているわ……あれ?どこにいったのかしら?」
部屋に入った裕太の母は、先程までいた息子がどこにいったのかは分からないのだった。