第5話 傭兵狩り
結局その夜、別のテントにカルロスとリギギ・ラグガを寝かせ、
俺とネオンで寝る事になった。
因みに、この組み合わせはカルロスが勝手に決めた。
クソォ……
ネオンとは気まずい関係なのに…
俺は渋々テントへ入り、横たわった。
「……なぁネオン……」
「…な、何でしょう…」
ネオンが恐る恐る応える。
「あれ……忘れてくれねぇかな……」
「……え、ええと…何の事でしょうか……」
「忘れてくれたなら…それで良い…」
俺はそれだけ言うと、ネオンに背を向けて寝息をたてた。
―――――――――
「………い、起きて下さい。」
「んん……?」俺はネオンに揺すられて目覚めた。
可笑しいな…
いつもなら、日が出る数時間ぐらい前に起きるのに…
まぁ良いか…
俺はテントから這い出た。
そこでは、カルロスとリギギ・ラグガが仁王立ちしていた。
思わずたじろいでしまった。
「ど、どうした…?」
「どうしたじゃないよ!オケアノが起きるのをずぅっと待ってたんだよ!?」
「はぁ…?どういう事だよ…?」
ネオンがテントから這い出てくると、
俺に言った。
「現在の時刻…午前11:54分、もう直ぐで昼時です。」
……は…?
「じゃ、じゃあ…お前らは何時に起きたんだ…?」
起きて間もない俺は、まだ眠気がとれていなかった。
寝ぼけ眼をこすりながら、俺は聞いた。
「僕達は5:30に起きたよ。」
「……………」
俺が少し落胆していると、リギギ・ラグガが肩を叩いた。
「でもよ…良い事なんじゃねぇのか。」
その言葉に、俺は耳を疑った。
「何でだよ…?」
「”安心してる”って事だろ。寝坊するって事は。感じねぇか?心身共に少し和らいでんのを。」
確かに、少し体と心が軽い気がする。
思えば…アホみたいな時間に起きていた。
しかも、寝る時間も遅かった。
けど――今は違う。
早く眠り、遅く起きた。
要するに、十分に休養が摂れたって事だ。
「気持ちにゆとりが出来るってのは良いぜ。自然と落ち着き、集中出来る。」
リギギ・ラグガはそう付け足した。
「…そうか…」
「まぁ…急がないといけねぇがな。」
「…何でだ?」
「傭兵狩りの一団が近くまで来てるそうだ。カルロスが言っていた。」
俺はやっと目が覚めた。
急いで立ち上がり、身支度を整える。
「おい!テントを回収して、早くここから離れるぞ!」
回収後、俺達は直ぐ様キャンプ地を離れた。
傭兵狩り――
別に恐怖した訳じゃないが、こいつらの身の安全の為に離れたんだ。
林を抜け、川を渡って野へ…
景色が次々流れていく。
今日はいつになく天気が良い。けど、こういう日は大抵良くない事が起こる。
何故分かるかって?
いつもそうだったからさ。
暫く急ぎ足で進んでいくと、目の前に丘が開けた。
一面に青い草が生え、風に揺れている。
その中に、誰かが倒れているのを見つけた。
カルロスはそれに誰よりも早く気付いていたらしく、俺達がカルロスを追い掛ける頃には、
もうそこに辿り着いていた。
「君!大丈夫!?聞こえるなら返事をして!」
カルロスが必死に呼び掛ける。
「全身に斬り傷、火傷、打撲…こりゃ酷ぇな…」
リギギ・ラグガがポツリと溢す。
「急いで手当てをするぞ。一体何があったのか聞かなきゃならねぇ。」
俺は医療品を取り出し、そいつに応急措置を施した。
傷に消毒薬を塗る度、そいつは悲鳴を上げた。
包帯をあらゆる箇所に巻き、一応の措置は完了した。
「治ったとは言えねぇが…何もしねぇよりはマシだろ。誰か水を持ってきてくれるか?」
「……うう……?」
「…ん。目が覚めたか。」
そいつは俺達を見るなり、飛び上がった。
「うわぁぁぁぁ!?やめてくださいィィィ!」
「おい!落ち着け!俺達はお前を助けたんだ!」
言い忘れてたが、こいつは見るからに子供だ。
おまけにイーブイ(一応二足歩行という事で…)ときた。
…まさかこいつも傭兵…?
「兎に角落ち着いてくれ。ほら、ただの水だ。」
水の入った筒を渡すと、恐る恐る口をつけ、流し込んだ。
「飲み終わったらで良い。何があったのか話してくれるか?」
イーブイは少し躊躇ってから、小さく頷いた。
「ぷあっ……あ、あの…話の前に聞きたいんですが…」
かすれかすれの声で問い掛けてきた。
「なんだ?」
「あなた達は…一体…」
「同じかどうかは知らねぇが……俺達は傭兵だ。」
そう言うと、イーブイは安堵の息をついた。
「よ…良かったです……うう…傭兵狩りかと…」
目に涙を浮かべ、そう返した。
「って事は…お前も傭兵なのか…?」
「は…はい……子供ですが…」
子供まで戦場に……
酷い時代になったモンだ…
「で、では……何があったかお話しします…」