第3話 理想
「山賊団のリーダーだと…!?」
目の色を変え、再び剣を抜いた。
「”元”って言ってんだろう!詳しく話すから落ち着け!」
俺は山賊団のリーダーだった。
毎日盗みを繰り返し、次第に名前が知られるようになっていった。
近くの村から遠く離れた貴族の城まで。
そんな日を毎日続けていたある日、俺の仕切る山賊団と別の山賊団との間で武力紛争が勃発した。
大方、相手の山賊団は俺の仕切る山賊団を潰して、地位を上げようとしたんだろうな。
勿論、俺はその紛争に参戦した。
紛争は近くの村まで巻き込んで拡大していったが、その時の俺にとっちゃどうでも良い事だった。
そして遂に、俺達の勝利で紛争は終わった。
そりゃあ大喜びだったさ。
壊滅の危機を免れたんだからな。
だが……何故か俺の心ん中には、変な痼のようなモノがつっかえていた。
何かは分からなかったが、辺りを見回して直ぐに分かった。
死体の山。その中には、俺の部下達は勿論、村民や農民…子供まで居たんだ。
俺はブチ切れた。
その場で、こう怒鳴ったんだ。
”俺達が倒すべきだったのは、こいつらだけだ。何故関係ない奴らまで殺した!?”とな。
俺にも、それなりのプライドはあった。
必要の無い犠牲は払わない、と言うプライドが。
そして俺はその場で山賊団を解散し、当の本人である俺は現実逃避するように
遠くへ走って行った。
生きていく為には、金が必要だった。
だから俺は、稼ぎの良い傭兵になったんだ。
そして俺はその時、ある信条を掲げた。
”不死不殺。自分は決して誰かを殺さない。もし自分が誰かを殺すような事があれば、
それは自分も死ぬと言う事だ”と言う信条をな……。
「……って訳だ。分かってくれたか?」
「……ああ……。」
”不死不殺”。
それが、こいつの信条だった。
傭兵になる奴は、大体何かしらの理由をもって傭兵になる。
俺のような奴は除くが、大抵は”儲かるから”とか、”正規軍に入りたいから”なんつー理由だ。
まぁ実際の所、カルロスとネオンはどうか知らねぇが。
リギギ・ラグガは木にもたれ掛かり、溜め息をついた。
「…実際、俺が誰かを殺さないかは分からない。衝動に駆られ、つい殺してしまった、
なんて事が無けりゃ良いんだが……理想ってーのは大体実現しないモンなんだよ。」
「……」
「だがよ…お前なら、国を一つにするっつー理想は現実になるかもしれねぇな。」
「何故だ?」と返す。
リギギ・ラグガはフッと笑うと、こう言った。
「さっきも言ったろう、覚悟があるって。俺は覚悟のねぇ腰抜けが大ッ嫌いなんだ。」
リギギ・ラグガ―――
元・山賊で、人を殺さない事を信条にする挙げ句、覚悟の無い奴が嫌いな男。
全く分からねぇ。
けど…どこか惹かれる所がある。
「おい、リギギ・ラグガとか言ったな…」
「どうした?俺を殺すのか?」
「いや……お前が気に入った。一緒に来ないか?」
突然の事で、リギギ・ラグガは少し戸惑っていたが…
「ああ。喜んで同行しよう。」