第3話 火
カルロスと共に野宿用のテントを張り、火を焚いた。
本当は近くの町で宿を借りたかったのだが、カルロスが疲れるなどとぼやいたので野宿することにしたのだ。
「ほらよ」
楕円のパンを半分にちぎり、木の実と共に放った。
「あ、ありがとう」
「…オケアノ、聞いても良いかな」
食事を済ませた後、カルロスが寄ってきた。
「近寄るな。話はそれからだ」
俺は腕でカルロスを払い、距離をとった。こいつを信用したわけじゃないからだ。
「…で、何だ。聞きたい事ってのは。多くは答えてやらねえけどな」
「君って、仲間とかつくらないの?ずっと独りで戦場を駆け回ってるって聞くけど」
「独りの方が気楽なんだよ」
「…そういうものなの?」
火の粉がはぜた。
「ああ」
仲間など必要ない。余計な情を生み、その情は戦いには邪魔なのだ。
独りだから、己だけを頼り、強くなれる。
そう信じている。
「てめえも独りになりゃ分かるさ。聞きたい事はそれだけか?なら、とっとと寝てくれ」
強引に切り捨て、寝るように促した。
「俺はとっととてめえのお守りを終わらせてえんだ」
カルロスがテントに入るのを見送った後、俺は火を見つめていた。
赤く燃える火。
そこに意識を向けていくと、俺が斬った者達の顔が浮かび上がった。
苦悶、恐怖、悲壮、絶望。
剣を握り戦場を巡っていく内に、そういった表情の一つ一つを意識するようになっていた。
きっと、仲間や家族が居たのだ。そして俺が、その繋がりを断ち切った。
俺は恨まれているだろう。憎まれているだろう。だが、俺が傭兵として剣を振るう以上、仕方がない。俺が出来るのは、それを忘れない事。それが償いなのだ。
そして、その償いを遂げる為に、俺は独り戦い続けるのだ。
「……俺が、戦争を終わらせてやる」