解放戦争(中)
あれから何時間経っただろうか。
どうやら俺は眠ってしまったらしい。
グーディアの家もとい地下は石造りで出来ている上、時計とかが全く無い。
あるとしたら、机と椅子のセットと藁のベッドぐらいだ。
目を覚ますが、明かりが無いため自分がどこに居るか分からない。
数時間前はまだカルロスとかが見えていたんだが…
記憶だと、机の上にランプがあったが…
「おー…い?カルロスー?」
返事は無い。
「カルロスー!?」
ギュッ
「ぁッ!?」
瞬間、誰かが俺の背後から抱き付いた。
突拍子すぎる出来事に、声が出てしまった。
……この感じ…
「カッ…カルロスッ…!?」
「えへへ〜、驚いた?」
一向に離れそうもない。
どうするんだよ誰か来たら…
「なぁッ…離れてくんねぇか…?誰か来たらマズイだろ…?」
「ん〜?まぁそうだね。でも…オケアノあったかいんだもん。何でだろうね〜?」
そう言うと、カルロスは頬を擦り付けてきた。
「やッ…止めろッ…!」
そろそろマズイぞ…
「ただいま戻りました。」
グーディアだ。
俺は慌ててカルロスを引き剥がし、何事も無かったように振る舞った。
「あ、ああ。随分遅かったな?」
「ええ、ちょっと……あ、それとですね…」
「何だ?」
「実は…あなた達と同じ”傭兵”を連れてきたんです。幼馴染みだったので……」
「あっ!もしかして君達がグーディアの話してたオケアノ君とカルロス君ですか?」
そう言って現れたのは”リオル”だった。
手には”コリシュマルド”と”カイトシールド”を携えていた。
「じゃなかったら」
「って事は…本物なんですね。初めまして、二人共。ボクは”ネオン”。君達と同じく傭兵稼業に就いてます。」
「ふぅん。君珍しいね。」
「えっ?それはどういう意味ですか?」
「”盾”さ。傭兵稼業に就いてるポケモン達は、大体盾なんて持っちゃいないんだよ。」
すると、ネオンはカルロスの前までやってきた。
「それは詰まる所…”死ぬのが怖い”って言いたいんですか?」
「まぁね。傭兵は皆”死ぬ覚悟”で戦場に出てる。」
「だって……死んだら”終わり”じゃないですか。死んだらもうこの世に帰ってこれない…。
だからこそ、こうして防御手段として盾を持ってるんですよ?」
「成程、ねぇ……確かにそうだ。じゃあネオン…テメーは”何の為に傭兵稼業やって”んだ?
死んだら終わりなんて考えを持ってる奴が、戦場に立つと思うのか?別に防御手段なんて盾じゃ
あなくたって武器で防御したって良いんだぜ?俺はそう言う奴が真っ先に死ぬと思うがな。
それで良く生きたモンだ。」
ネオンは黙り込んだ。
そして今度は俺に寄ってきた。
何をする、言うのか分からない……
俺は身構えた。
しかし……
「……流石オケアノ君ですね!”双剣のオケアノ”と呼ばれているだけの事はあります!」
「はっ…?」
「いえ、何でも。そう言えば、グーディアが戦いを起こすとかどうとか…」
「……あ、ああ。首謀者は俺だ。」
そう言った瞬間、ネオンは顔色を変えた。
「え…ガチですか?」
「少なくとも俺は嘘をつかねぇぜ。」
「もしかして……あの大軍に挑むって言うんですか!?」
「お前、結局どうしたいんだよ?のこのこやって来たが……俺達と来るのか?
だったら、それ相応の覚悟はするんだな。」
「え、ええ…付いて行きますが……もしや解放戦争!?」
「もしやの解放戦争だ。一応グーディアに頼んで、謀反の準備はしてもらってるが…」
「そ…そんなの無理ですよ!」
「”無理なら最初からこんな事はしねぇ”よ。それに、”何もせずに無理って決めんな”。」
「……!」
「良いか?傭兵の本質は”逆境を引っくり返す”だ。傭兵はな……」
ワァァァァ……
怒号が轟いた。
いよいよ、たった一つの町を掛けた戦争が始まる。
「っと…話は後だ。カルロス、ネオン、グーディア…行くぞ。」