第3話 迫るタイムリミット
ゴーン…ゴーン…
鐘の音が砦内に響き渡る。
起床時間の合図だ。
「時間だ!起きろ!」
口五月蝿い監視員が、僕達傭兵を叩き起こす。
あれから、ほんの数分しか寝ていない。
ネオンを一瞥すると、たった一日で
窶れてしまっていた。
「…お早う御座います…」
「うん…お早う」
僕自身はあまり変化してないけど、昨日作ったミミズ腫れは更に膨れていた。
「行こう…とやかく言われる前にね…」
砦内は、昨日の今日だった。
傭兵が右往左往し、所々では鞭の餌食となってしまっている。
変わった事と言えば、違う場所で働く事を要求された事位かな。
まぁそれはどうでも良いっちゃ良い。
問題なのは、オケアノの処置だ。
後3日。
長いようで短いような時間。
この間で、何とか策を練らなければならない。
何としても…オケアノは救わなきゃ…
「ハァッ…ハァッ…」
僕は――いつまでこんな事をしなきゃいけないんだろう……
「そこ!休むな!」
剣の素振りを止めてしまった僕は注意された。
剣がこんなに重いなんて、想像しなかった。
今僕は、色んな子供――僕も子供だけど――に交じって剣の素振りをしている。
でも、皆ぎこちない。
だって…戦った事なんて一度も無いから…
「す…すみません…」
息を整えて、また素振りを始める。
こいつらが居る間は、うわべだけでも真面目にやっている。
本当は、こんな事したくない。
早く出ていきたい。
オケアノさんなら……と考えた。
手にしている剣で、こいつらを皆殺しにして出て行っているかもしれない。
本当は、それが一番望ましいのかも。
けれど僕には、そんな体力や勇気、技術が無い。
どうしたら……
「止めるなと言っただろう!」
耳をつんざくような怒鳴り声。
いつの間にか、また素振りを止めていた。
「貴様…ノトスとか言ったな」
ジリジリと僕に近付いて来る。
パァン!
僕は、顔に張り手を食らった。
その勢いで、尻餅をつく。
「今の状況が分かっているのか!?今は戦士が必要なのだ!見ろ!貴様のように休んでいる者は
一人も居ないぞ!」
そう言われ「すみません」と返そうとした瞬間、もう一度張り手を食らった。
「”すみません”などでは済まぬ!そもそも、我々は貴様の許しなど乞うてなどいないわ!」
唾を掛けられ、僕はその場から動けなかった。
悔しさと悲しさ、怒り――色んな感情が一度に入り交じった僕は、声を上げずに涙を流した。
――誰か…助けて下さい…――
「……うう…?」
目を開けると、見知らぬ顔の男が俺を囲んでいた。
「お、目を覚ましたな。死んでんじゃねぇかと思って心配したぜ」
「お前…は…?」
「おいおい、まだ寝てろ」と、起き上がろうとした俺を制止した。
「お前の事は良く知ってるぜ…山賊団”ヴァイエン”リーダー、リギギ・ラグガ」
「ハッ…全部お見通しか…」
「それよりも…お前の仲間がここに居るんだ。話があるみてぇだから、聞いてやったらどうだ」
そう言って現れたのは…
「お…お前ら…!?」
「…久しぶりだな。リーダー」
オケアノの処置まで、後3日