第2話 畜生共
――――「んん…?」
目を開けると、地下牢のような――いや、地下牢に居た。
頭が痛ぇ…
頭を抱えようとしたが、それは叶わなかった。
何故なら、俺の両手――挙げ句の果てには、両足まで鎖で縛られている。
「クソッ…!」
必死に足掻くが、どうにも力が入らない。
ジャラジャラと鎖のぶつかり合う音が響く。
「あ〜、無駄無駄。今のお前じゃ余計に体力を減らすだけ」
どこかで聞き覚えのある声がした。
数秒も経たない内に、ゲコガシラが現れた。
「テメェ…は…マールスか…ッ!」
「良く覚えててくれたね〜」
「カルロス達を何処へやりやがった!!教えねぇならブッ殺してやる!!」
必死にマールスのクソ野郎に近付こうとするが、壁と繋いである鎖のせいもあって
まるで動けない。
「ブッ殺す?状況良く見たら?」
せせら笑いながら、俺に近付いて来る。
バキィッ!
俺は、マールスのクソ野郎に蹴りを入れられた。
それも、強力な。
口から血を吐き、頭を項垂れる。
間髪を入れずに、もう一発蹴られた。
「いやぁ、ガキを出す作戦は有効だったよ。まさか本当に斬らないとは」
その後も、俺は何度も顔を蹴られた。
そして、30分程経ってマールスのクソ野郎は蹴りを止めた。
「うッ……クソッタレがッ……」
「ふん、何とでも言えば良い…お前はどうせ何も出来ない…そうだ、お前の仲間達を
見せてやろう」
そう言って、マールスのクソ野郎は横に逸れる。
その先には…俺と同じように顔を蹴られたのか、顔面が血でまみれていたカルロス、ネオン
が居た。
「カッ…カルロスッ……ネオンッ…!」
俺は声を張ろうとしたが、思うように声が出ない。
それでも、俺は必死に声を出す。
……返事は無い。
「お前よりは多めに蹴った。もしかしたら…死んでるかもしれないね」
ガァァン!
「うおおあああああッ!!」
俺は、石造りの床に頭を叩き付けた。
脳にまで衝撃が走る。
下手したら頭蓋骨が割れてるかもしれない。
「…どうした?自殺でも図る気か?」
「野郎ォォーーーッ!!」
ガァァン!
再び頭を叩き付ける。
さっきよりも頭を強く叩き付けたせいで、意識が飛んだ。
俺は――仲間すら助けられない上に、守れないのか――
次に目を覚ました時は、最早身動き一つすら取れない状況に居た。
斜めの十字架にくくりつけられ、胴まで鎖で縛られている。
「ふぅーう、これぐらいしておけば大丈夫だろ」
「ッ……」
「あー、喋らなくて結構。って言うか、喋れないし」
今思えば、全身の感覚が無い。
「強い麻酔をかけておいた…まぁ、今お前を斬っても斬られたかすら分からないぐらいのな」
本当に…クソ野郎だぜ…
マールスは俺に背を向け、そのまま去ろうとした。
「あ、言い忘れてた」と、何かを思い出したのか振り返る。
「お前、4日後処刑か売り渡すかが決まるからな?ま、処刑に決まってるだろうがな」
そう言い残し、再び背を向けて去ってしまった。
――俺は……どうすれば良い…?――
俺は心の奥でこう思った。
――この世に神なんて奴が居るんなら、そいつも畜生だ――
「モタモタするな!さっさと働け!」
バチィン!
「ぐぅッ…!」
力の限り鞭で叩かれ、体に赤くミミズ腫れが出来る。
もう何個目だろう…
僕は黙って頷き、柵を運ぶ。
何でこんな奴らなんかに……
「今は耐えるしかありません…」と、ネオンが囁く。
僕達は、こいつらのアジトと思われる砦に居る。
居る――と言うより、連れてこられた、と言った方が正しいのかな。
どうやら、ある一団がこの砦に攻撃を仕掛けるらしく、僕達――の他にも居るけど――は
それを食い止める為に働かされているんだ。
柵を運びながら、奴らを見やる。
相も変わらず、揚々とカードゲームをしたり酒を飲んだりしている。
近くに居る監視員に気付かれないように、小さく舌打ちをする。
僕とネオンは砦の外へ出ていった。
「っと……」
「急げ!次の柵を持って来い!」
柵を地面に刺すや、間髪を入れずに命令を出した。
僕は返事も頷きもせずに、砦の中へと戻った。
少し焦ったけど、監視員は気にしていない。
僕は”一団”に少しの希望を掛けた。
――もし”あの人達”なら――ってね。
オケアノの処置まで、後4日――