父の話
時を遡る事、凡そ700年前……
”それ”が確立したのはこの時だった。各国家は戦争により国自体が疲弊していた。
各地で内乱、天災、飢餓、伝染病の流行……
一度は和睦や同盟が結ばれ、一応の平和は訪れた。
しかし、衰退した各国の軍が”傭兵”として活動を始めたのだ。
それこそ当初は山賊や盗賊のような振る舞いだった。
強奪や無益な殺生…
時代は流れ、各国の国力が回復すると傭兵は金で雇われるようになり、同時に和睦や同盟が
破棄された。
傭兵は軍の主力となっていった。
更に時代は流れ、傭兵は独立するようになった。
傭兵はこの世界に何万と存在し、ひと度傭兵が団結し国を攻めたら1日で制圧されると
恐れられたぐらいだ。
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と、私のお父さんカルロスは毎日のように語る。
お父さんも元傭兵で、数多の戦場を駆けたらしい。
そして話の最後に、得意げに「”オケアノ”は強かった」と威張る。
その”オケアノ”と言う傭兵に会った事が無いから強かったかは私には分からない。
今日は4月16日。
今日も得意げにお父さんは語る。
「ねぇお父さん」
私はふと聞いてみた。
「何だね?」
「そのオケアノっていう傭兵さんには……会えるの?」
瞬間、お父さんの顔が強張った。私は驚き、身を固くした。
今までこんな顔をした事が無かったから。
「………オケアノはな…」
「オケアノは……?」
「……今世界中を旅してるかもしれん」
お父さんは一転して笑顔で言った。けれどその言葉は、ちょっと疑わしかった。
何か私に知られたくない事でもあるのか…
そんな事を考えつつ、私は自分の部屋に戻った。
入るやいなやベッドに倒れこんで、足をばたつかせた。
「(何なのよ…教えてくれたって良いじゃない…)」
「…………ん………」
辺りを見回す、暗くなっていた。どうやら私は寝てしまっていたようだ。
のっそりベッドから起き上がり、ランプに火を灯そうとした瞬間。
「入るぞ」
お父さんが入ってきた。
「ど、どうしたのお父さん?」
「言おうか迷っていたが……教えようと思う。傭兵オケアノの事を――――」
お父さんの顔は、これまでには見た事が無い程の真剣な表情だった。