星降る夜に
星降る夜に





はーい!

おっ、予定よりだいぶ早くに着いたんだね。
……え?ううん、全然迷惑何かじゃないから大丈夫。
あいつに会うのが楽しみだったんでしょ?
さっきから顔がにやけてる。
あいつもね、きみに会うのがすごく楽しみにしてるみたいだったよ。

……っておいおい。そんなに服の裾を引っ張ったら伸びちゃうだろ。ブラッキーもあいつに会うのは久しぶりだから、楽しみなのはわかるけど、まだ会える時間じゃないだろー。もう少し夜が更けてからじゃないと。
そんな落ち込むなって。

……ん?何だって?ごめん、もう一回言ってくれる?
……ああ、あいつと初めて会ったときのことを聞きたい?
あれ?きみに話したことはなかったかな…でもいいや、まだ時間はかなりあるし、いいよ、今から話すね。




あいつと初めて会ったのは、もう何年も前のことだよ。

あの日は、どうしてもテレビでやってた満天の星空がみたくてみたくて、夜にこっそり家を抜け出したんだ。もちろん、親には内緒で。

……ん?ああ、ブラッキーが一緒だったから、暗い夜道でも大丈夫だったさ。ほら、ブラッキーはフラッシュが使えるから。

それで、俺とブラッキーは町からだいぶ離れた原っぱへ向かったんだ。ほら、昔よくきみとも飽きずに駆け回ったあの原っぱだよ。
あそこに一本だけ大きな木が生えてただろ?
あの木にもたれかかったり、草の上に寝転がって見上げる星は綺麗なんだぜ。

原っぱの周りには、外灯とか家の明かりとか一切ないから、星がよく見えるんだ。息するのも忘れるくらい、ホント…すごかったんだ。言葉じゃ表せないくらいで…。

……え?見たかったって?
あとで一緒に見に行くだろ、もうちょっと待てよ。

でな、そのとき丁度、何とか流星群の時期でさ、もう次から次へと星が流れていくんだ。
それを飽きずにずっと眺めてたなー。もうホントすごかったよな?ブラッキー。
おい、あくびするなよ。
……ん?さっきからすごいしか言ってないって?しょうがないだろ、ホントにすごかったんだから。

さあもういいだろ、話を戻すぞ。

まあそれでずっと眺めてたわけだけど。ふと、だんだんと大きくなっていく星があるのに気づいたんだ。

目を擦ったりとかして何度も確かめたけど、確かにそれは大きくなってて、これはまずいと思って逃げようとしたけど間に合わなくて。

頭に痛みを感じたね。あれは痛かった。
頭にぶつかってきたものを確認したら、それは薄いピンク色の星の形をしたもので、何だろう?ってブラッキーを顔を見合わせたよ。

そしたらそれがむくりと起き上がるから驚いたよ。
ぶつけたらしいところを短い手で擦りながら、全然届いてなかったけどね、小さい目には涙を溜めてた。
それから鳴き始めるものだから慌てたよ。

どうすればいいか分からなかったから、ブラッキーに何とかしてくれって頼み込んで、何とかブラッキーがしっぽであやしてくたっけ。
それから夜が明けるまで、俺とブラッキーとその不思議な生き物とで遊んだよ。
星を眺めたり、話をしたり、駆け回ったり。
仲良くなるのに時間なんて必要なかった。
ホントに楽しかったよ…。

だけどね、気がついたときにはそいつはいなくなってた。朝日があたりを照らし始めて、夜が明け始めてるって気付いたときには、姿がなかったんだ。

どこに行ったんだって思って、ブラッキーとあたりを探しまくった。けど、あそこはきみも知っての通り、あの大きな木以外は何もないから、隠れるところなんてないんだ。
だから、町の方へと向かったのかとも思って、町へ歩き始めたら、俺がいなくなっているのにきづいて、探しに来てた親に見つかって、あいつを探すどころじゃなくなって、あいつとはそれっきりだったんだ。

その日の夜もこっそり抜け出して、あの場所へ行ったんだけど、あいつに会えることはなくて。
それからも抜け出せるときには行ったんだ。それでも会えることはなくて。

あの日の夜はまさか夢だったのか?とも思い始めたとき、たまたま立ち寄った本屋で、星の特集を掲載した雑誌を見つけたんだ。

思わず立ち読みしちゃったけど、ページを捲っていくと、星に因んだポケモンの記事もあって、その記事を読んだとき驚いたよ。

だって、あいつとおなじ姿をしたポケモンの写真が載ってたんだから。
あいつはほしがたポケモンって分類されてて、ピィって名前で、結構珍しくてあまり目撃されることもないって書いてあった。
それに、星にのってやってくるって考えられてて、流れ星が多い夜には目撃数が多いこと、朝日が昇ると姿を消すこと。
そんなことも書いてあったんだ。

俺、そのとき初めて知って、もしかして次の流星群が見られるときに、またあいつに会えるんじゃないかって思ったんだ。
だから、次の年まで待ってみることにしたんだよ。
ほら、年に一度しかあの流星群は見られないから。

次の年のその日は、お母さんに手伝ってもらいながら作ったポケモンフーズを持って、ブラッキーと一緒にあの日と同じ場所で流星群を眺めてた。

そしたら、あの日と同じように落ちてくる星を見つけたんだ。

……え?またぶつかったのかって?
おいおい、同じことは繰り返さないよ。落ちてくるっていうのはわかってたから、ブラッキーがちゃんとサイコキネシスで受け止めてくれたよ。

あいつったら、驚いた顔してた。
けど、俺たちのこと覚えててくれてたみたいでさ、すごい嬉しかった。

俺が作ったポケモンフーズも、けほけほ咳き込みながら美味しそうに食べてくれたっけ。
あのポケモンフーズ、すっごく粉っぽかったみたい。

その日も、あの日と同じようにたくさん話して、たくさん遊んだ。それでも、夜が明け始めた頃にはあいつの姿はなくなってて。

それからかな、毎年手作りのお菓子を持っていくようになったのは。





……うん、そうなんだよ。だから俺、お菓子だけは得意なんだよ…!
おっ、ホントか?この間のチョコクッキーも美味しかったか。よかった。

おっと、話がそれたな。

それから俺たちとあいつは毎年、流星群が見られるこの時期に会ってるんだよ。
去年会ったときに、あいつにきみの話をしたら、すごく会いたそうにしてたから、今年は会わせてやるよって約束したんだ。

俺思うんだけど、星にのってさ、この広い宇宙を旅してるんじゃないかと思うんだよね。それで時々星から降りて、地球みたいな惑星(ほし)を巡ってるんじゃないかなって。

あいつとは言葉が通じるわけじゃないから、ホントのところはわからないけど、俺はそう思ってる。
……きみもそう思うって?ありがとう。

あ、そろそろあの場所に行こうか。
……どこに?って、あいつとの約束の場所。あの原っぱの大きな木だよ。
早く行かないと流星群始まっちゃうよ。
ブラッキー、いつものようにフラッシュを頼むな。

じゃあ行こうか。








きみの手を握り、ブラッキーと共に駆け出す。
向かうのは星降る約束の場所。
今年はどんなことを話そうか?どんなことをして遊ぼうか?

ねえ、いつかはお前の話も聞かせて欲しいな。
実はこの広い宇宙を旅してるんだろ?いろんな惑星(ほし)を巡ってるんだろ?
―――わかってる。これは俺の勝手な想像。
でも、強ち間違ってないと俺は思ってるんだよな。
だから、いつかはお前の話も聞かせて欲しいな。


もっとお前のことが知りたい。
一年に一度、星降る夜にしか会えないお前のことを。



■筆者メッセージ
2016年7月頃の短編です。
ばす ( 2019/01/17(木) 22:24 )