それぞれの目的…
あれから三日……。二人はバイクで移動中。次の街へと向かっていた。CHERRYはヘルメットのお蔭で向かい風を受けなかったが、チエラは思いっきり顔面に風を受けていたため、目が開けられなく、落ちないのがやっとというところだ。
「……!!」
それを見兼ねたCHEERYは片手を使いチエラを自分のジャケットの中へと入れた。急に入れられて吃驚したのか、その中で暴れだした。
「ちょっ……くすぐったいからwwwやめ…www危ないから!!」
暴れるせいで、バイクの操縦が鈍くなった。
彼女はくすぐったいのが苦手だ。深くまでやられると、気がおかしくなりそうなほどだ。よっぽどのことである。そこのところは彼女の素の部分と捉えることができる。
チエラはようやく上の方から顔だけ出す形となった。とても………可愛らしい。
三日間過ぎたところで、二人の関係は若干近づいた程度だ。あの夜に少し話したことがよかったのだろう。だが、『少し』というのはあまり変わらないものだ。そんなことに頭を悩ませていた。何かいい方法はないものかと。
「(待つべきか…。それとも、なにかこっちからしたほうがいいのか…)」
考えても出てこない。正直なところ、彼女は考えるのが苦手だ。昔、幼い頃文もろくに書けない脳なしだった。ということだったので、現在の彼女のモットーが
[考えるくらいなら考えないで思いつくのを待つ]
らしい…。ということで、考えることをやめた。
「まぁ、いつか慣れるだろうな。そっちから…。」
次の街が見えてきた。
「さぁ、行くよ!!」
バイクのハンドルを強く握り締め、一気に加速させた。
…ところで、CHERRYが戦っている間、チエラはなにをしているのか。疑問に思ったかもしれないが、チエラは…
「チエラ!何処か隠れてて、そこから敵が来たら叫んで教えてね♪」
「……(シラッ)」
そう、こんな事だ。CHEERYの解釈によると、チエラはあまり血のあるところには近づかせず、建物の瓦礫のところに隠れて居たほうがいいということらしい。その代わり、そこら辺にいる敵の状況を教えるという役をやらされている。
チエラは嫌々やっているように見えるのだが…。
「おい、女ぁ!!呑気にそいつと喋ってんzy((ズダダダダ!!! ぐっ……!!!」
「女たぁ、嘗めてもらっちゃ困るねぇ!!!お前も呑気に喋るなよ!!!(ズダダダダダ!!!)」
相も変わらず容赦が無い。チエラもどこかでぞっとしていた。二日前にもこういうことがあったが、カーキー色のジャケットを緋色に染めて帰ってくる。おまけに、
「ただいま!大丈夫だった??」
なんて。こっちが言いたくなる言葉を平気で、しかも笑顔で言ってくる。なんて恐ろしいんだ…。
さて、そんな二人を離れて、JOKERはと言うと…。
「(カチカチカチ…)」
暗闇の中、ぎりぎりバッテリーが切れていないPCを使って、CHEERYに頼まれたことを検索していた。ムゥークとは別行動に。
この世界は何故かネットワークだけは繋がっているようだ。
なかなか見つからない。情報が少ないのだ。あっても嘘っぽい、なさそうなことばかり載っている。ネット上も荒れている。誰かが、ネット世界を仕切り・管理しているはずなのに、偽の情報が氾濫しているのだ。二割の確率でしか、本当の情報がないものだ。見分けにくいものも多数ある。
そんなことに飽き飽きしていたので最初の勢いもなくなり、頬杖をついてやるように、いつしかなっていた。
「……ん?…コレだ!」
すると、そこに記載されていたネットの記事が目に留まった。編集日もつい最近のものだ。紋章のことについて詳しく載っている。これは来たとばかりにJOKERは笑みを浮かべる。
一方、ムゥークはJOKERの知り合いの元に資料を集めにいったのだ。JOKERに頼まれて現在、空を飛行中。足には手紙が括りつけてある。下には、汚い街並みが広がっているのが視界に入る。ムゥークの翼にも一層力が入った。
「そう、可哀想に……。はやく引き裂いてあげたいわね。…ウフフフフ。ねぇ…?あなたもそう思うでしょ…?」
「……!!」
「俺もさっさと殺して、CHEERYというやつに逢ってみたいよ。なぁ…?」
「……」
「お前らに任せる。この男とムクホークが会う前に、な……。信頼しているぞ。」
「「はい……総裁」」
JOKERとムゥークにも災難が降りかかるときが、もうそこまで来ていた。影の動きに彼らは気付くことなく、自分のやるべきことをただひたすらこなすだけだった。
「っ…。水の都に行ってみるか…。ラティオスとラティアスの解封を目指すか…。」
その者はマントを熱風に揺らし、弓を握り締め、紅蓮に包まれた街を眺めていたのだった。