二つの鍵…
イーブイの手当ても済まし、一人と一匹は再び街中に戻ってきた。殲滅したはずの敵が、またどこからか湧いて出てきたのか、激しい銃声音がまたたくまに響き渡っていた。
「あっれ?おかしーなぁ…、全部倒したと思ったんだけど…。」
彼女は面倒くさそうに頭を掻く。そう思いながらも、勢いよく銃を構えた。
「君は…って、名前決めとこっか。んーとぉ……なにその目は。」
「……(怒)」
名前を決めていなかったことを思い出し、彼女は決めようとするが、イーブイは嫌そうな目でCHEERYのことを見ている。陰に隠れながら、そんな会話をする。
「いいでしょ!別にさぁ…。大丈夫!!私センスいいから(ドヤッ)」
「……」
イーブイは余計に嫌そうな目で彼女の方に視線を注いだ。そんなのこともお構いなしに頭の中で考える。
「あー、どーしよーかなぁ…。三つあるんだけど……。」
その彼女が考えた三つのうち、一体彼女はどれにしたのかというと…。
「よし!!じゃあ、君の名前は、『チエラ』!!」
「……?」
「君の名前はこれからチエラで!!どーお?センスは悪くないでしょ?(ドヤッ×2)」
自信満々のCHEERY。チエラになったイーブイは爪を静かに立てて、彼女目掛けて飛んできた。彼女は寸前のところで反応して避けた。もふもふの毛は逆立ってぼそぼそになっている。
「そんなに怒んないでよ。付いて来たのはきm…チエラでしょ?」
「……!!」
「いいじゃん……名前でケチつけられたの初めてだよ…。おっと、敵さんのおでましだぁ。下がってて。」
「……」
そんな話をしているうちに、彼女たちの周りには敵が続々と集まってきていたようだ。CHEERYは両手に銃を持ち、相手に向かって撃ちまくった。チエラは黙って見ていた。
「ぐわぁ!!」
「ははっ!!刃向かってくるからそうなるんだよ!!男なのにみっともないねぇ!!」
返り血を少々浴びながらも、気にせずに撃ちまくる。見た目、彼女は楽しんでいるようにしか見えない。チエラはそう思っているようだあった。
しばらくして、銃声は止んだ。つまり、CHEERYが周囲の敵を全滅させたということだ。彼女は少し息をきらしていた。
「はぁ、はぁ……。敵が、集まりすぎちゃったね。ごめん、時間掛かっちゃった。」
きらしながらも、チエラの方を見て謝った。……彼女はちょっとした異変に気が付いた。
「チエラ……目、さっきより濃くなってない?」
チエラの目色が一層と濃くなっていた。どす黒い赤に変わっていたのだ。しかし、チエラは平然としている。
「気のせい…?」
彼女は気のせいだとぼかした。重い銃を肩に担ぎ、チエラを肩に乗せた。チエラはそこに当たり間のように座る。
「なにその、満足そうな顔は…。さっき、飛びついてきたくせに…。」
「……」
「まぁ、いいか…。」
彼女は気を取り直してこう言った。
「んじゃ、違うところに行きますか……。」
瓦礫と屍の上を歩いてゆく。
何歩か歩いたところで、チエラに話しかけようとした。チエラに顔を少し向けた。その時、また何かに気付いた。
「チエr……。ん?何、それ……。」
チエラの耳に何かの紋章らしきものが刻まれていた。蛇を中心に、背景に二本の旗が交わっている謎の紋章。
「(こんなもん見たこと無いな……。)」
少し考えているときに、チエラがこっちを向いてきて面倒な顔で見てきた。彼女は軽く首を振った。
「ううん、なんでも、ない……。」
チエラは顔の向きを戻した。彼女は不審に思い始めた。
チエラの目と謎の紋章。これはこれから起こることに関わっていることであったのだ。この二つの謎が握る鍵とは…。