04
「クラウンシティに到着〜!」
ななせはクラウンシティの街並みを走り回った。
クリミアシティとはまた違った街の雰囲気で
ななせは興味津々で街を歩き回った。
空を見上げると鳥が団体で飛んでいて、
飛行機が飛ぶ音も聞こえる。
すれ違う人々は聞いた事のない言語で話していて
ななせは別世界に来たような感じがした。
「ななせ! 迷子になるぞ!」
後ろを振り向かないで寄り道しながら歩くななせを
ルカは人ごみ中を避けながら追いかけた。
レンはため息をついて2人の後を追いかけた。
一通り寄り道をしたななせは
クラウンシティの真ん中に建っている白いタワーを見上げた。
「クラウンシティの象徴であるクラウンタワーだ。
タワーの最上階にクラウンジムがあるぞ」
ルカはななせの隣に立ってタワーの頂上を指差した。
「トレーナーであるキミはこれから
ジム戦をするのだな・・・!」
ルカはななせに背を向けて黙りこくった。
「ルカくん・・・?」
ルカの様子が変だと感じたななせは
ななせは背後から話しかけた。
「・・・もし、ボクがトレーナーの異能者に仕えるとしたら
キミがいいな、と思っていた」
ルカはゆっくりとななせに振り向いて向き合った。
「時すでに遅し、ってやつだな。
ボクはもう軍に身を捧げている。
トレーナーの力にはなれない」
一瞬苦笑いをして
ルカは真っ直ぐななせを見た。
「名残惜しいがここでお別れだ、ななせ。
また会えたらいいな・・・!」
ルカは二カッと笑うと右手を差し出した。
ななせはルカの右手を両手でしっかり握って
笑いかけた。
「ここまで送ってくれてありがとう、ルカくん!
私、頑張るね!」
ルカの手を放すとななせはレンと
クラウンシティの市場の方に歩いて行った。
何度も振り向いて手を振ってくるななせに
ルカは微笑みながら軽く手を振り返して見送っていた。
そんなルカに頑丈な鎧を着た1人の騎士が近寄って来ると、
ルカは騎士の方に体を向けて敬礼した。
「お久しぶりでございます、アレックス将軍」
アレックスと呼ばれる騎士は
横目で遠ざかって行くななせとレンを見ながら
眉間にしわを寄せた。
「・・・あれは?」
「先日お話しした火事の件に関わっていた者達です。
火事の件は書類に全て記してあります」
ルカは淡々と話しながら
懐からレポート用紙の束を取り出してアレックスに手渡したが
アレックスは受け取ろうとせずに
ななせとレンを見ていた。
「・・・サファイア隊長殿、
彼(レン)・・・どこかで見た気がしないか?」
ルカはハッとしてレンを見ると
すぐにアレックスを見た。
「将軍もそう思いますか?!
私もそう思うのですが、分からなくて・・・」
アレックスは「ふむ・・・」と目を細めてななせを見ると、
ルカから書類を受け取った。
「・・・あの者(ななせ)、我が君に似ている」
書類をパラパラと目を通しながらアレックスが呟くと、
ルカはギョッとしてアレックスを見上げた。
「し、将軍の主・・・
現チャンピオン様にですか?!」
アレックスは横目でルカを睨むと、
「雰囲気がな」と呟いて書類を背後に控えていた部下に渡した。
「あまり我が君の事は大声で言わないでいただきたいな。
非公開にしている意味が無くなってしまう・・・」
ルカは口を抑えて「申し訳ございません」と言うと頭を下げた。
「・・・まぁ、我が君も少し変わっていらっしゃる・・・
あれほどの実力を持っていながら、チャンピオンである事を
非公開にして趣味に没頭しているのだから・・・」
ルカに背を向けて立ち去ろうとすると、
アレックスは何かを思い出したように言った。
「サファイア隊長殿、
これから暇かね・・・?」
ルカは背筋をピンっと伸ばしてアレックスに言った。
「はい、書類も渡し終えましたし・・・」
アレックスはゆっくり振り向いてルカを見て言った。
「少し・・・遠征兼調査をしていただきたいんだが、
よろしいかな?」
アレックスの眼差しにルカは思わず冷や汗が流れた。
将軍自ら指令を与えられて心臓の鼓動が高鳴り、
唾をゴクリと飲み込むとルカはフッと口元に笑みを浮かべると
サファイア色の目で真っ直ぐとアレックスを見上げながら言った。
「何なりと。
ボクは、軍に命を捧げた者でございますから・・・!」
「・・・本部で準備をしてきたまえ。
内容はその後だ」
アレックスはしばらくルカを見下げていると
背を向けてその場を立ち去った。
ルカはアレックスの背中に一礼してななせとレンが向かった方を見たが、
2人の姿はもうクラウンシティの人ごみで見えなくなっていた。
「ななせと現チャンピオンが似ている、かぁ・・・」
そう呟くとルカは自衛隊本部の方に向かって
走り出した。
ななせは賑やかな市場の真ん中でくるくると回りながら
笑顔で歩いていた。
「お肉にお魚! お菓子に洋服に靴屋!
ここで全てが揃っちゃうんじゃないかな?!」
店を1件1件眺めてジグザクに前に進むななせを見て
レンは呆れて言葉も出ない・・・・わけでもなかった。
目を輝かせて店の品物を眺めているななせを見ていると
自然と笑みがこぼれた。
「レンくん! 見て!
アイスクリーム!」
ななせはレンの手を取り、アイスクリーム屋まで手を引いた。
「私、イチゴ味食べたい!
あ、でもでも! チョコ味も食べたい!」
1人で騒いでるななせを見て
レンはフッと笑った。
「1人で騒ぎすぎだろ、お前」
ななせは「えへへっ」と笑いながら
アイスクリーム屋までレンの手を引いて歩いた。