03
ななせ、ルカ、レンはクラウンシティに向かって
歩いていた。
ななせとルカは道に咲いてる草花や
蝶などに興味を示して楽しそうに会話しながら
歩いていた。
レンは2人の様子を見ながら後ろを歩いていた。
一通り騒いだルカは道の真ん中を歩きながら言った。
「森には色々なものがあっていいなぁ!
まぁ、海にも美しいものに満ちているがな!」
「私、森も海も大好き!」
ななせは道端で拾った植物の種を眺めながら言った。
「レン、お前はどちらが好きだ?」
ルカはボーっとしながら後ろを歩いている
レンに話しかけた。
「あ?」
急に声をかけられ反応の薄いレンを見て
ルカはため息まじりに言った。
「なんだ、聞いてなかったのか?
海か森、どちらが好きだと聞いている」
「はぁ? なんだそれ。
別にどっちも好きじゃねぇけど」
質問の内容に呆れたのかレンは
適当にあしらうとルカとななせの前を歩いた。
レンの面倒くさそうな対応に
ルカは声をあげてレンを追いかけた。
「なんだその態度はっ!!
失望したぞ、レン!!!
そして案内人であるボクより前を歩くなっ!!」
2人の様子を見て
ななせはフフフと笑うと
持っていた種を地面に置いて
2人の後を追いかけた。
ルカはレンの隣でくどくどと説教をしながら歩いて、
レンはルカの説教を面倒くさそうに聞いてる2人の姿を
ななせは2歩後ろで微笑みながら見ていた。
心地いい風が吹いて
ななせは雲一つない空を見上げて立ち止まった。
空を見上げながら
ななせはハレヤの事を考えた。
「ななせ? どうした?」
ルカとレンは立ち止まって
空を見上げてボーっとしているななせに言った。
ななせはハッとしてルカ達を見ると
首を横に振って2人の後を追った。
「ううん。 何でもない。
ちょっと考え事してた」
「考え事・・・とは?」
ルカはななせの隣を歩きながら言った。
「わたしの幼馴染の事。
元気かな〜、とか。
どこにいるのかな〜、とか考えてた!」
「ななせは健気だな〜。
幼馴染もさぞ元気にやっているだろうさ」
ルカはななせに笑いかけると
ななせは照れくさそうに笑った。
「・・・よし!
健気で可愛らしいななせのためだ。
ボクもその幼馴染を探してやろう!」
ルカはふんぞり返って得意そうに言うと、
ななせの表情はパァッと明るくなった。
「健気で可愛らしいとかお世辞にも程があるぞ」
レンがボソっと呟くとルカは
剣を鞘から抜いて剣をレンに向けて怒鳴った。
「レン! お前は女性に対してひどい事を言うでない!」
「け、ケンカは駄目だよ・・・!」
ななせは2人の間に入って
今にもケンカしそうな2人を落ち着かせようとした。
ルカはあたふたしているななせを見て言った。
「安心しろ、ななせ。
ボクは技を出せない。
だからこれ以上ひどい事は起きない」
ルカの言葉を聞いてななせはキョトンとした。
「自衛隊になる異能者は原素の循環を受け付けない手術を
強制的に受ける。
簡単に言えば、レンのつけていた拘束道具をした状態と似ている。
僕ら自衛隊は一番人間に近い異能者とも言えるんだぞ」
ルカは誇らしげに言うとレンは鼻で笑った。
「はっ。 軍の犬が何言ってんだよ」
ルカは剣を鞘におさめながら言った。
「ただの異能者で生きていくのはボクには不似合いだ。
汚物のように扱われるのはもう嫌なんだ。
清く美しく生きていたい・・・」
ルカはサファイア色の目でレンを真っ直ぐ見た。
「何とでも言え。
ボクはこの仕事に生きがいを感じている」
ルカは腰に挿してある剣を見つめると
ななせとレンの3歩前を歩き出し、
3人はクラウンシティに向かった。
異能者としての力を自由に使えなくなるような手術をしてまで
人間から虐げられるのを恐れながら生きている者がいるんだ。
ななせは顔を下に向けながら
肩から提げているバッグをギュっと握りしめた。
自分の靴を眺めながら
ルカのような異能者が他にもたくさんいるのかと思うと
自然と足並みがトボトボと小股になっていった。
靴を眺めながら考え事をしていると
背中にドンっと叩かれた衝撃が来た。
ななせは驚いて声をあげると、背筋がピンと伸ばした。
背筋がシャンとしたと同時に頭をくしゃと撫でられた。
ななせはボサボサになった髪で
隣で1歩前を歩き出したレンを見た。
レンは横目でななせを見て言った。
「いつものバカみたいな元気はどこいったんだよ」
そう言うとレンはポケーっとしているななせを置いて歩いた。
「バ、バカみたいなって・・・」
レンの言い方にイラっとしてななせは頬を膨らます。
でも励ましてくれたのかと思うと嬉しくて
笑みがこぼれた。
「バカでいいもん!」
ななせは笑顔でレンとルカを追いかけた。
こんな世界を ハレヤはどう思ってるんだろう・・・?
私と同じ気持ちかな?
それともこのままで良いと思ってる・・・のかな?
ななせは立ち止まって空を見上げた。
「・・・私、頑張るよ、ハレヤ・・・!」
空に笑いかけると、ななせは走ってレンとルカを追いかけ始めた。
クラウンシティまであともう少し。