01
金髪の女性は後方にいた同じ軍服を着た軍人に指示を出すと
軍人達は全員何も無い場所から水を出して
炎は瞬く間に消化された。
金髪の女性は剣を鞘にしまって言った。
「アナザー地方自衛隊、水軍(マリン)である。
怪我人はボクが預かろう」
女性が左手を上げると2人の軍人がななせと
ゴウキを抱えて救急車に連れて行った。
女性はななせとゴウキを見送ると
振り返ってレンを見た。
「君から聞きたい事がある。
抵抗するならこちらも手段も選ばない」
鋭い眼差しでレンを見ると
レンはため息をついて軽く両手を挙げた。
「何もしねーよ。
オレは無罪だからな」
女性は「ふんっ」と鼻であしらうとパトカーに向かった。
レンは大きく伸びをしながら女性の後を歩きながら
あくびをした。
目を覚ましたななせは勢いよく起き上がった。
キングサイズのベッドに広い部屋、
怪我した部分は治療済みで
服装は少しサイズの大きい青色のパジャマ、
そして自分以外誰もいなかった。
「ここどこ?!」
パニック状態のまま出た言葉がそれだった。
だけど、部屋には自分以外はいないため
返事なんて返って来る訳なかった。
ななせは、ベッドから降りて
部屋を探索し始めた。
手洗い場では綺麗に洗濯された自分の服を見つけた。
冷蔵庫の中には天然水の入ったペットボトルが3本。
ななせはペットボトルを1本取り出し、
水を飲みながら探索を続けた。
テレビの置いてある広い空間の壁は大きな水槽になっていて、
美しい魚が泳いでいた。
「わぁ・・・!」
ななせは息を呑んで、水槽に近寄った。
美しい魚の他に白くて大きな鯨がゆっくりを前を泳いで行った。
「水族館みたい!」
ななせは手洗い場に戻って顔を洗い、
歯磨きをしながら考えた。
レンくんとゴウキくんはどこなんだろう・・・
歯磨きを終えたななせは部屋を出て
廊下を見渡した。
水の流れが聞こえてとても落ち着く。
気の赴くままにななせは廊下を歩いて探索した。
水の中にいるように思えて
自然と笑みが出た。
ガラスの向こうには熱帯魚などが泳いでいた。
ななせは、扉を見かけたら、
中に入れるかどうか試してみた。
だげど、扉は全部鍵がかかって
中に入れなかった。
「皆どこにいるんだろう・・・」
ななせはさっき来た道の逆を道を歩いてみた。
しばらく歩いていると、
話し声が聞こえる扉を見つけた。
話し声がレンの声であると分かると
ななせは扉を勢いよく開いた。
「レンくん! やっと見つけた!」
ななせのいきなりの登場に
レンと金髪の女性は驚いてななせを見た。
「あぁ、やっと起きたか。
キミの連れ(レン)をしばらく預かっていたよ」
女性はニコッと笑うとななせに近寄った。
「初めまして。
ボクはアナザー地方自衛隊、水軍(マリン)隊長のルカ・サファイア。
ルカと呼んでくれても構わない」
ななせに軽くお辞儀をして
金髪の女性、ルカは自己紹介をした。
ななせは目を輝かせてルカを見た。
「ルカさんって美人!!
声が低いけど、スタイルもいいし男の人から
絶対人気あるよね!」
「は・・・は?」
ルカはきょとんとしてななせを見下ろした。
「失礼、ボクはれっきとした男だ」
ルカの言葉を聞いて、ななせが呆然としていると
レンは鼻で笑った。
「性別はよく間違われる。
身長も低い方だし・・・」
ルカは苦笑いしながら
近くにあった椅子に座った。
「ご、ごめんなさい・・・」
ななせは縮こまって、ルカに謝った。
ななせは顔を上げて
レンを見て驚いた。
レンの体は白い布に包まれ、
ベルトで何箇所も縛られていて
身動きが取れない状態で椅子に座っていた。
「レ、レンくんどうしたの?!?!?!
えっ、えっ、た、逮捕されてない?!?!?」
1人状況を把握していないななせを見て
ルカは言った。
「説明がまだだったか。
ボクら自衛隊は異能者専門の警察、のような者だ。
昨日の大火事の件について色々聞きたい事があったのだ。
彼(レン)が放火した犯人だと疑っていないんだが、
法律でここに運ばれた異能者は
このように拘束しなければならない。
誤って技を発動されては困るからな」
真剣に話すルカの話を聞きながら
ななせはレンの近くにある椅子に腰掛けた。
「拘束したら、技を出せなくなるの?」
「あぁ。
道具が最新技術を使って作られた物で、
異能者の原素の循環を阻止するようになってある」
ルカの難しい話を聞いてななせは
頭がパンクしそうだった。
理解していないななせを見て
ルカは剣を鞘から抜くと、
剣の先からいきなり少量の水が現れた。
「ボクら異能者は、原素(エレス)という空気中にあるもので
水に変えたり、彼(レン)のように電気に変える事が出来る。
これらは、なぜ異能者(ボクら)にしか
出来ないのかは分からない。
ボクらも、このような技を無意識に扱っているため
喜怒哀楽に反応して技を発動したりもする。
この道具は、異能者が勝手に技を発動させないような
細工がされているらしい。
詳しくは僕らも知らされていない。
このような道具を作ったりするのは
人間が異能者(ボクら)の力を恐れる証拠だ。
この力を使って悪さをする輩もいるんだからな・・・
キミも人間であるなら分かるだろう?」
剣の先にある水を手洗い場の方に放り投げ、
ルカは剣を鞘におさめた。
ななせは「う〜ん」と首を傾げると、
笑顔で言った。
「水や雷みたいな自然の力が使える異能者と、
人間がもっと仲良くすればいいのになぁ〜とは思うけど・・・
レンくんやゴウキくんの力の事を怖いって
思った事は無いなぁ〜。
すごい!!って思うよ!」
ルカはフッと笑うと
カップに紅茶を注いでななせに渡した。
「キミ、人間にしてはなかなか面白い事を言うじゃないか。
気に入ったぞ。 名前は?」
ななせは紅茶を受け取りながら
ルカを見て笑った。
「私、ななせ!
レンくんと旅してるトレーナー!」
2人の話を聞いてレンはフッと笑うと
目を瞑って少し顔を下向けた。