13
ガンゼルはしゃがれた声で笑いして
軽く肩回しをしながら言った。
「バトルとは久しぶりだのう。
腕がなるわい。
ルールは2対2のシングルバトル、
2対共戦闘不能になったら負けでよいな?」
「うん!」
ななせはうなづくと、レンを見た。
「頑張ろうね・・・!」
レンはななせのでこに拳を軽くぶつけて言った。
「当たり前だ」
ななせはゴウキに笑いかけると、
右手を差し出した。
「私の指示が必要な時は言ってね!
お互い頑張ろう!」
ゴウキはフッと笑ってななせの手を握った。
「頼りにしてるぜ、人間!」
「人間だけど、ちゃんと名前があるの!
ななせって名前がね!」
不満気に頬を膨らますななせを見て
アハハとゴウキは笑った。
「よろしくな、ななせ!
オレはゴウキだ」
「よろしく! ゴウキくん!」
ななせとゴウキは握手を交わした。
ガンゼルはプリシモに木の実を3個ほど与えると
ななせ達を見た。
「では、バトルスタートといくかのう・・・!」
ガンゼルはボールが地面に放り投げると、
ボールは半分に開き、
中から長い黒髪の青白い顔をした女性が
ため息をつきながら現れた。
女性は地面に座り込むと
口から紫色の煙を吐きながら
地面に指でいじいじと落書きを始めた。
「じゃあ、こっちはレンくんで!」
ななせに名前を呼ばれたレンは
5歩前に出た。
「さっそく攻撃いくよ!
レンくん、”かみなり”!」
ななせが女性に向かって人差し指を向けて言うと、
レンは雨雲に向かって電撃を放つと
女性の真上に雷が轟き始めた。
ガンゼルは杖で女性の頭を木魚のように
軽く叩くと余裕ぶった笑みで言った。
「グローリア、”ないしょばなし”だ」
ガンゼルの命令を聞いたグローリア(女性)は
小さな声で何かぶつぶつ呟き始めた。
グローリアの呟きがレンの集中を乱し、
雷は女性の左隣に落ちてしまった。
「相手の話なんて気にしないでいこう!
もう一度”かみなり”!」
ななせはレンを励まして言うと
レンは舌打ちしながら雨雲をグローリアの真上に集めた。
ガンゼルはグローリアの背中を杖で押して言った。
「グローリア、”ベノムショック”」
ガンゼルに背中を杖で押され、
グローリアはフラつきながら頭を抱えた。
すると、グローリアの髪の毛が針のように鋭く尖って
先から濃い紫色したドロドロとした液体の毒が
レンに向かって噴射された。
毒を噴射したと同時に
グローリアの頭上に雷が落ちた。
グローリアは悲鳴をあげ、
地面に寝そべって
しくしくと泣きだした。
レンはグローリアの放った毒を避けようと思ったが
避けてしまうと毒はななせとゴウキにかかってしまう。
「避けて!」
ななせはレンに言ったが
レンはその場から動かず、
毒を全てかぶった。
案の定、レンは猛毒を浴びた。
「どうして避けなかったのっ?!」
後ろでうるさく怒鳴っているななせを無視して
レンは言った。
「毒消しはあと2個しか無ぇんだから大事に使え。
あと、オレが避けたらお前ら死んでたぞ」
徐々に毒に体力が奪われていくレンを見て
ななせは納得して申し訳なく思った。
「いいからさっさとオレに命令しろ。
もう相手は虫の息だ」
出しかけていた毒消しをバッグにしまって
ななせはグローリアを指差して言った。
「あ、うん!
”ほうでん”!」
ななせの命令を聞いたレンは
体中の電気を全体に放出した。
「おぉ、こ、これは素晴らしい・・・!」
ガンゼルはレンの”ほうでん”に見とれ、
懐からデジカメを取り出し、
写真を撮り始めた。
ガンゼルの命令が来なくて不安そうに焦るグローリアは
レンの”ほうでん”を浴びて悲鳴をあげて地面に倒れると
原素となってガンゼルのダークボールに吸い込まれた。
「まず1人目・・・っ」
レンはそう言うと苦しそうに地面にひざまづいた。
ななせはレンに駆け寄って
毒消しを1つ渡して言った。
「レンくんは休んで。
次はゴウキくんと私で何とかするから・・・!」
レンは悔しそうに舌打ちすると
ななせから毒消しを引ったくり、
ゴウキと場所を入れ替わった。
「よし・・・っ!」
ゴウキはレンの立っていた位置に立つと
深呼吸をして戦闘態勢の構えをした。
ガンゼルは木の実を食べ終えたプリシモを見ると
プリシモと目が合った。
「ゆけ、プリシモ」
ガンゼルに呼ばれ、プリシモは頷くと
7歩前に出てゴウキを見た。
ゴウキは震える自分の拳を見て色々考えた。
体術には自信がある・・・だが・・・
もしオレがプリシモに全然敵わなかったらどうしよう・・・
ゴウキは左目の下に貼ってあるパッチに触れた。
昔、ガンゼルの手下にこのパッチを貼られた時の
言葉を思い出した。
『このパッチを外して力を使いすぎると死んでしまうよ』
まだ死にたくないという気持ちと
足手まといになりたくないという気持ちが
葛藤してゴウキは目をギュッと瞑った。
「ゴウキくん!」
緊張気味なゴウキの背後から
ななせは声をかけた。
ゴウキは振り返ってななせを見ると、
ななせは笑顔で親指を立てた。
「自分の力を恐れないで!
あなたなら大丈夫!
思いっきり暴れちゃおう!」
その言葉でゴウキは今まで考えていた事が消えた。
そしてなんだかななせとなら
何だってやれそうな気がした。
自分の力、死を恐れず・・・
今までのうっぷん晴らす感じに暴れてやる・・・!
ゴウキは決意した目でプリシモを見ると、
髪の毛が燃え盛る炎に包まれた。