Chapter  6   ゴミ捨て場のヒーロー
08


レンはうつむいてめそめそ泣いている
ななせの腕を持ち上げた。


ななせは驚いて酸素マスクを床に落とした。


「来い、お前に見せたいものと話したいことがたくさんある」


レンはななせに落とした酸素ボンベを預けると
ななせを手を引いて走った。


自分の体力もそろそろ限界に近かったし
何より人間であるななせがいくら酸素マスクをしているからって
毒ガスの中でいつまでも平気でいれる保障なんてなかった。


ななせはきょとんとしながら
レンを見ていた。


「は・・・話したい事?」


ゴウキの家の前を通過して
ななせが来た場所は
なんとも目を瞑りたい光景だった。


死体にたかるハエやカラス。


「うっ・・・!」


ななせはレンの後ろに隠れた。


人の死、ついさっきななせは目の当たりにしたばかりだった。


出来ればもう二度と見たくない。


「逃げるな、ちゃんと見ろ」


レンに体を前に押し出され
ななせはガリガリに痩せて腐敗した死体を
恐る恐る見ると突然吐き気が起こり、
レンから離れた場所で嘔吐した。


「麻薬を一度摂取すると人はこうなる。
 一度摂取すると体がそればかりを欲する。

 最初は少量でも、どんどん量が増えていく。

 そして、最終的にはこんな風にガリガリに痩せて
 麻薬を買う金が無くなり・・・死んでしまう」


嘔吐がおさまったななせは
淡々と話すレンを見た。


「どうして誰も助けないの・・・」


レンはななせに見向きもせず壁にもたれて言った。


「助けたくても助からないんだ」


その言葉がななせに重くのしかかった。


『助けたくても助からない』


グリードとの戦いでボルサリーノが
グリードの異能者であるラルゴを
ダークボールの呪縛から解放していたのを思い出した。


助けたくても助からない、
この言葉がななせの胸をしめつけた。


そしてななせの脳裏に人々の欲していた
あの言葉がよみがえった。


「ガンジャ・・・

 ガンジャってやつがきっと薬だよ!
 だって、皆欲しがってたもん!
 ガンジャさえあれば・・・」


ななせは希望を手にした気分だった。


「ガンジャ・・・?!」


レンは勢いよく振り返ってななせを見た。


これで麻薬に溺れた人々も救える、
そう思ってななせは
レンが同意してくれるを期待して待った。


すると、レンはななせの肩を掴んで
怒りに満ちた表情でななせに怒鳴りつけた。


「お前それ正気で言ってんのかっ?!

 ガンジャってのはこの世で一番最悪な
 麻薬なんだぞっ?!」


ななせの希望が粉々に砕け散った瞬間だった。


レンが怒鳴りつけているが耳に入らなくなった。


「じ・・・じゃあ・・・
 異能者の子供に物乞いしていたのは・・・」


ご飯でも薬でもなく・・・


「麻薬だったの・・・?」


今まで幸せな日々を故郷で送ってきたななせからしたら
麻薬なんて全然関わりのないものだった。


ルイタウンより外の世界は・・・
こんなにも怖い世界だったの・・・?


人々が簡単に命を落としてしまうような
そんな世界だったの・・・?


一気にたくさんの出来事が起きすぎて
ななせはめまいがしてよろけたが
レンが支えてくれた。


「・・・急にこんなの見せて・・・悪かったな」


急に疲労感がドッと来たななせは
レンにもたれてボーっとしていた。


レンはななせの頭に手を置いてゆっくりと撫でた。


「けど・・・知ってほしかったんだ。
 本当の世界を・・・。

 ずっと平和ボケしてると
 後々苦労するだろうと思って・・・

 その・・・」


ななせをゆっくり目線をレンに向けて
そしてゆっくり目を閉じた。


慰めてくれてるのかな・・・


だんだん眠くなってきたななせは
目を閉じながら小さく呟いた。


「・・・ありがとう・・・」


「ん?」


レンはななせの口元に耳を近づけると
ななせは静かに寝息をたてていた。



ありがとう、レンくん・・・
私・・・ちゃんとこの現実を受け止めるよ。
そして、もっと皆が幸せになれる世界に変えていくの・・・



■筆者メッセージ
話が・・・暗いです
水野 翡翠 ( 2014/09/10(水) 18:07 )