07
ゴウキの家に着いたレンは
扉を開けようとしたがドアの建付けが悪かったのか
扉は開かなかった。
レンは舌打ちをすると
窓を勢いよくこじ開けて中に入った。
出かける前にななせが座っていた
場所にななせはいなかった。
「おい! 出て来い!」
家の中を一通り探しても
ななせはいなかった。
家の中は特に荒らされた様子がなかったため
誘拐されたわけではないと判断したレンは
深くため息をつくと窓から出て付近を捜索しに出かけた。
「・・・ったく、絶対トラブルに巻き込まれてんだろうなぁ・・・」
レンは自分の予想が的中して胃がキリキリと痛んだ。
歩くのを止めて壁にもたれかかり
深いため息をつくと
かすかに毒ガスの臭いがする通路を見つけた。
異能者の発した毒ガスだとすぐに分かった。
・・・やっぱりオレ達以外の他に異能者がいる・・・!
レンはそう確信した。
毒ガスのする方にもしかしたら
トラブルメーカーであるななせがいるかもしれない、
そう思ったレンは手で鼻と口を覆いながら
毒ガスの漂う道を進み始めた。
毒ガスの霧が濃くなるにつれ
めまい、頭痛、吐き気がひどくなってくるのが分かる。
徐々に体力が毒に奪われていき
レンは壁伝いに歩き出した。
足元に倒れている人に
つまづきそうになりながらも
レンは隅っこで体育座りしてうつむいている
ななせを見つけた。
「・・・お前・・・」
「留守番してろって言っただろ」と
言う前にななせは消えそうな声で
つぶやいた。
「私が・・・殺したの・・・」
「・・・は・・・?」
レンはななせが震える手で指差した方を見ると、
毒ガスを吸って亡くなった人々が地面に倒れていた。
レンは信じられなかった、
というより信じられるわけがなかった。
「どう考えてもお前じゃねぇだろ。
この周りに毒ガスが漂っている。
この毒ガスを出した奴がこいつらを殺したんだ。
だから・・・」
淡々と話すレンの腕を掴んで
ななせは涙をためた目でレンを見上げた。
「私が!! その異能者の子を怒らせたの!!」
酸素マスクがななせの発した大声でビリビリと響いた。
ななせは涙を流しながらうつむいた。
「私が・・・私が・・・
あの子を怒らすような事言ったから・・・」
深い紫の長い髪の子供の冷たい目が
脳裏によみがえる。
「私が・・・あの子を怒らせなかったら・・・
ここにいた人達は・・・
死ななかった・・・っ!」
レンは今のななせにこのゴミ捨て場の状況を説明すべきか迷った。
『ここにいる人間は麻薬というものを摂取しているから
どのみち長生きはしない。
だから気にするな』
慰めの言葉として真実を言おうと思ったが
自分を責め続けるななせを見ていると言えなかった。
「(・・・落ち着いたら話を聞くか・・・)」
レンは静かに泣きじゃくるななせを見て思った。
・・・こいつにはまだ早いと思ったが・・・
いつまでもこのままでいてもらったら困る・・・
レンの金髪が淡く光りだした。
今の状況をよく理解して行動してもらう必要がある・・・
レンの瞳が金色に輝くと
レンの体からかすかに電気がはしった。