05
レンとゴウキは煙で充満した狭い一方通行を歩いていた。
「なぁ、あいつ(ななせ)昨日1日中寝てたんだろ?
寝すぎじゃないか?」
ゴウキは前を歩いているレンに話しかけると、
レンは振り向きもせずに答えた。
「確かにな。
たぶん森で野宿してた時に“眠り粉”を
吸ったのかもな」
「えっ・・・
それは・・・大丈夫なのか?」
レンは顔色一つ変えずに
道端で座り込んでいる人を避けて歩いた。
「オレ達からしたらただの“眠り粉”だ。
けどあいつ(ななせ)は人間。
ちょっと吸っただけで丸1日眠る」
広い道に出ると、ゴウキはレンの横を歩いた。
「人間ってそんなに弱いんだな・・・
知らなかった・・・」
隣で話しかけてくるゴウキの言葉に耳を貸さず、
レンは考えていた。
確かに森には草タイプの異能者がたくさんいる。
だけど、あの森には異能者の気配なんて
しなかった。
そしてななせとレンは睡眠薬なんて
摂取した覚えがない。
でも眠りが深かったからこそ
トラックに運ばれた事に気づかなかった。
まだはっきりとは言えないが
確実にレンとななせはあの森で“眠り粉”を吸った。
それならななせが丸1日眠っていた事に納得する。
「おい!
聞いてるのか!?」
いきなりゴウキに大声で怒鳴られ
レンはゴウキの頭を拳で殴った。
「いった!!」
「いきなり怒鳴るな! このチビ!」
レンはゴウキを放って1人で
先を急いだ。
「おい! 待てよ!
あとチビって言うな!!」
ゴウキは殴られた部分を撫でるのを止めて
レンを追いかけた。
30分くらい歩いて2人は麻薬の煙が
ひどく充満した場所に来た。
レンは倒れている人の傍に落ちてる葉巻を調べた。
「・・・やっぱりな・・・
ほんのわずかだが毒の奴ら(異能者)のガスで
作られている・・・」
レンは葉巻を解体して眉間にしわを寄せた。
「全然知らなかった・・・」
ゴウキは倒れてる人の前にしゃがんで
骨と皮だけになった人の手を握りしめた。
「・・・・・・っ」
ゴウキは下唇をギュっと噛みしめると
小さくつぶやいた。
「1週間前は・・・あんなに元気だったのに・・・っ」
レンは他の倒れている人の
腕から古臭い腕時計を取って
「借りてくぜ」と言って腕につけた。
時計はレンズが割れているが
針はちゃんと動いていた。
時刻はもうすぐ12時になる頃だった。
ななせの酸素マスクは0時には効果が切れてしまう。
「・・・・」
ふとレンは留守番させているななせが
心配になった。
ちゃんと留守番してる・・・よな・・・?
ちょっと目を離すといなくなるななせだが
今回は重たい酸素ボンベがある。
12歳のか弱い女の子じゃあ
安易に持ち上げて動き回る事は出来ない。
そう、か弱い女の子なら。
「・・・・・・・・・」
レンは嫌な予感がした。
もしかしたら、酸素ボンベを持ち上げて
興味を示した場所に向かっていたらと思うと
考えたくもなかった。
「オレ・・・ちょっと戻るわ」
レンはゴウキを放って先に走って
ゴウキの家に向かった。
ゴウキが何かを言っていたが
そんな事に気にかけている暇はなかった。
レンは走ってゴウキの家に向かった。