Chapter  6   ゴミ捨て場のヒーロー
04

まるで水の中にいるような浮遊感と心地よさに
ななせはゆっくり目を覚ますと
本当に水中にいた。


「あれ・・・?」


水中の中では呼吸が出来た。


「ここは・・・どこだろう・・・?」


なぜかとても眠かった。


「レン君は・・・?」


辺りを見回しても綺麗な熱帯魚が泳いでるだけだった。


「なんでだろう・・・このままずっと・・・
 こうしてゆったりとしていたい・・・」


ななせはまた目をつぶり、
フフッと笑った。


「・・・幸せだろう・・・?」


水中の中から見知らぬ声が響き渡った。


「誰・・・!?」


ななせは目を開けて辺りを見回したが
人の姿は見えない。


「お前にはまだ私の姿は見えないさ・・・

 ・・・それよりどうだ?
 ここは素晴らしいだろう?」


声は女の声だった。


ななせは目の前を泳ぐ熱帯魚に
触れようとしながら言った。


「うん!
 私、ここ大好き!」


女の声は嬉しそうに言った。


「そうだろう、そうだろうともさ・・・!

 ここがそんなに気に入ったなら
 ずっとここにいるがいい・・・!」


ななせは熱帯魚を指でつつきながら
女の人の声に向かって言った。


「でも私、どうしても叶えたい夢があって旅をしてるの。

 もう行かなくちゃ。 きっとレン君心配してる」


ななせは声のする方を見ると、
途端に女の声は低くなった。


「・・・駄目だ・・・」


ななせの周りにいた熱帯魚は
ななせから逃げ去り、水中はだんだん暗くなった。


「私、帰らなきゃ・・・!」


ななせは声のする方を見ながら後ずさりした。


「お願い!
 どうしたら帰れるの?!」


ななせは目の前にある黒い物体から
後ずさりをしながら言った。


怖くて手が震えが止まらなかった。


「返・・・さ・・・ない・・・」


黒い物体から
黒い髪に袖口がボロボロの
黒いワンピースを着た女性が現れた。


その女性には目が無かった。


「・・・っ!!」


悲鳴すら出ない恐怖に
ななせは女性から逃げようとがむしゃらに走り出した。


「待テ・・・逃ガサナイ・・・
 ななせ・・・こっチへおいデ」


ななせの頭の中から女の人の声は
ずっと聞こえてきた。


「やめて・・・!!
 やめて・・・!!!」


頭の中から聞こえる声を掻き消すように
ななせは叫びながら走った。


「助けてっ!!! レン君っ!!!!」


悪夢から目覚めたななせは勢いよく目を開いた。


見たことのない暗い部屋にボロボロの天井。


恐怖で心臓がバクバクして
呼吸が荒いのが分かった。


無意識に天井に向かって手を上げていたようで
ゆっくり手を下ろすと誰かに手を握られた。


驚いたななせはゆっくりと手を握った相手を見ると
そこには真っ直ぐ見つめているレンがいた。


「やっと起きたか、バカ」


ななせは夢の中で名前を呼んだレンが目の前にいて
あの女性から逃げ切れた事に安心して涙が溢れた。


「・・・っ」


ななせは酸素マスクを外して
ソファーから転げ落ちるように
レンにしがみついた。


「・・・ただいま・・・」


ななせはレンの胸に頭を当てポタポタと涙を流した。


ここでいつものレンなら
「くっつくな!」と行って怒鳴るはずだが
レンは何も言わず微かにに震えている
ななせの手を握っていた。


「怖い夢を見たの」と言いそうになったが
ななせはレンに見透かされてるような気がして
何も言わなかった。


悪夢にうなされている事に気づいて
夜中なのに起きて傍にいてくれたのかと
思うとななせは嬉しかった。


「・・・ありがと・・・レン君・・・」


ななせはそう呟くと
レンは無言で手をななせの頭に乗せた。




そして、朝日が昇るまで
レンにななせが眠っていた時に
目が覚めたらゴミ処理場にいた事、
ゴウキに会って泊めてもらってる事、
ゴミ処理場に充満している異臭の事など
一通り説明してもらった。


ななせはレンに言われた通り、
酸素マスクを着けて窓から外の様子を見た。


「こんな所にも人が住んでるんだね・・・」


「好きでここに住んでるとは限らねーぞ」


レンは欠伸をしながら答えた。


欠伸するレンの姿を見て
ななせは申し訳なく思い、言った。


「レン君、眠たいなら寝ていいよ・・・」


「お前から目ぇ離したらまたトラブル起こして
 すぐオレを呼ぶだろ。

 これくらいどうって事ねーって」


レンは隣で寝ているゴウキに掛け布団代わりに
使っていた布をかぶせて言った。


「無茶しないでね」


ななせはレンにそう告げるとゴウキを見た。


「彼も異能者なんだってね」


「あぁ」


レンはソファーに寝転がって目を閉じた。


ななせはゴウキを見て微笑んだ。


「力になってあげたいな・・・」


「・・・そうだな」


レンはそう呟くとそのまま眠ってしまった。


ななせはレンを見ながら
小さく「ありがと」と言った。


ななせは窓から離れて
少し部屋の中を見て回って時間をつぶした。


昼頃になってレンとゴウキは起きた。


「おはよう」


ななせは手帳に文章を書いてる手を止めて
レンとゴウキに言った。


「おぉ」


無愛想に2人はそう言うと
身支度を終えるとななせを置いてすぐに外へ向かった。


ななせも2人について行きたかったのだが
酸素マスクの酸素を運ぶ酸素ボンベのチューブの長さが
部屋の中までしか届かず、外に出る事は出来なかった。


酸素マスク無しでも死なないと思ったななせだったが、
昼頃になると煙で部屋が充満したのを見て
マスクしてて良かったと思った。


夜中にレンから渡されたゴーグルをつけて煙から目を守り、
ななせはひたすら2人の帰りを待った。


しかし、じっとしていられる訳なかった。


ななせは重たい酸素ボンベを持ち上げ、
辺りを見回し、フラつきながら外へと出た。




水野 翡翠 ( 2014/07/23(水) 15:21 )