05
ななせ、レン、HALは
一緒に近くのレストランで食事をしていた。
HALの周りに飛び交っていた
黒い原素は無くなっていた。
ななせは少しだけHALへの警戒心がとけて
向かい側に座ってコーヒーを飲んでる
HALに話しかけた。
「HALさんって何歳さんですか?」
HALはななせを見て苦笑いをして答えた。
「25だよ。」
「私と13歳も離れてるんだ。」
ななせはナポリタンを食べながら
HALに色々な質問をした。
ななせがHALと楽しそうに会話している隣で
レンはその会話を聞きながら
オムライスを食べた。
1時間後にななせ達は
会計を済まし、レストランを後にした。
ななせはHALから少し離れた場所から
レンにこっそり耳打ちした。
「レンくん、
私、ジムで忘れ物したかも・・・」
レンは「はぁ?!」と呆れると、
ななせはレンの頭を叩いた。
「大きな声出さないでよ・・・!!
ちょっとあまり知られたくない事だから・・・!」
ななせに叩かれた部分を
さすりながらレンはななせを見て
深いため息をついた。
「大事な物なら忘れてんなよ・・・」
レンはHALに聞こえないように
小声でななせに言うと、
ななせは目線を下に下げた。
「レンくんに私の私物渡そうとした時に、
カバンの中身を全部ひっくり返したの・・・。
その時かもしれないけど・・・
手帳を無くしたかもしれなくて・・・」
「手帳?」
ななせとレンがヒソヒソ話をしてるのが
気になったHALは、ゆっくりと
背後から2人に近寄って耳をすました。
「手帳にそんな恥ずかしい事書いてあんのか?」
「そんなんじゃないけど・・・
日記みたいなものだから・・・
毎日書きたいから・・・」
HALが背後にいても全く気づかない2人を見て、
HALは何かを思い出したのか、ズボンのポケットから
小さな手帳を取り出した。
「手帳ってこれ?」
HALに背後から話しかけられ、
ななせとレンは驚いて振り向いた。
「それ!」
ななせはHALの持っていた手帳を
手に取ると目を輝かせた。
「ありがとう!
これ、とっても大事なの!」
ななせは無くした物が見つかった事に
喜びを隠しきれなくて
その場で小さくジャンプした。
「クリミアジムの前に落ちていたんだよ。
良かった、持ち主が見つかって。」
HALはにっこり微笑むと
ななせも何度もお礼を言いながら
にっこりと微笑んだ。
レンはその様子を見ながら
手帳を探す手間が省けた事に気づき、
安堵した。
次の街に向かう途中で、
ななせとレンはHALと別れる事になった。
「ななせちゃんはジムを制覇する予定なんだね。
くれぐれも、危ない事には
首を突っ込まないようにするんだよ。」
「分かった、ありがとう!」
ななせとレンはバスに乗るHALを見送って、
バスが出発した後もバスが見えなくなるまで
ななせはHALに手を振り続けた。
HALの乗ったバスが見えなくなると、
ななせはレンを見て言った。
「次の街に向かおっか!」
「そうだな。」
レンのやる気の無い返事を聞いて
ななせはバッグから取り出した地図で
レンの頭を軽く叩いて地図を開いて見た。
クリミアシティから一番近い街は
クラウンシティである事に気づき、
ななせはボルサリーノの台詞を
思い出した。
『クラウンシティでまた会おうね・・・』
ななせはボルサリーノに会える事に
胸が高鳴った。
「ボンちゃんに会える・・・!」
ななせは小さくガッツポーズをすると、
ベンチに座って何かを懸命に作って
レンを見た。
「今からクラウンシティに向かうよ!」
「随分とまた唐突かつ、計画性の無(ね)ぇ事
言ったな。」
レンはななせからもらった
プラスチックの指輪を紐に通して
ネックレスにしながら言った。
「でもまぁ、クラウンシティには
ジムもあるし・・・別にいいけどな。」
髪を結び直しながらレンは言った。
「じゃあクラウンシティにレッツゴー!」
ななせは笑顔でレンの腕を引っ張りながら
クリミアシティを後にした。