06
宿をチェックアウトしたななせとレンは
クリミアジムに向かっていた。
「あっ! ななせー!」
ジムのある方向から太陽とリオンが
大きく手を振りながら走って駆け寄ってきた。
「あ、太陽く・・・」
ななせが手を振り返そうとしたと同時に、
太陽は笑顔でピンク色のボールを
余所見をしているレンに向かって投げた。
「ピッチャー第1球投げましたー!」
「いてっ。」
ボールはレンの頭にコツンと当たり、
半分に開くと、レンは原素となって
ボールの中に吸い込まれ
原素を全部吸い込んだボールは
地面に転がり、小刻みに揺れた。
「レンくんっ?!」
ななせは小刻みに揺れるボールを
拾って力ずくで開けようとした。
「ちゃんと自分のパートナー
管理してるのかー?
このままじゃあ、お前のパートナー
いつか盗まれるぜ?」
「ど、どうしたらいいの?」
半泣き状態のななせが
太陽を見上げて言うと、
ボールは破裂して中から原素が溢れ出てきて、
1つに合体した原素はレンになった。
レンはひどく疲れていて
地面に座り込んでいた。
「・・・レンくん!」
ななせはレンに駆け寄ると
水が入ったペットボトルを
差し出した。
「お前、昨日言ったろ・・・
あれ(ボール)から出るの結構大変なんだぞ・・・」
レンはななせからペットボトルを
ひったくると、水を一気に飲み干した。
レンに破壊されたボールを拾い、
太陽は笑いながら「ごめん。」と言った。
全部拾い終えた太陽は
ななせを見て話した。
「異能者を連れてるトレーナーなら
盗難には注意だぞー。
この『ヒールボール』に
入れて旅するのが一番安全だ。」
太陽はバッグから新品のピンク色した
ボールをななせに渡した。
ななせはヒールボールを
受け取って、まじまじと見た。
「太陽くんもリオンをボールの中に入れて
旅してるの?」
ななせはボールのボタンを押して
中も調べながら太陽に話した。
太陽は「んー・・・」と
頬をポリポリ掻いて
リオンのたてがみから何かを探し出した。
赤色の細い首輪が
リオンのたてがみの奥に現れた。
「首輪なんてしてたんだ・・・!」
ななせは驚いて近寄って
首輪を見た。
「ちゃんと名前も刻んであるんだぜ。
家族になってからつけたからな。」
太陽はリオンのたてがみの中を探り、
「リオン」と下手くそな字で書かれた
小さな金属プレートをななせに見せた。
「太陽くんが名前を書いたんだね。」
「すっげー小さい頃にな、
オレが書いた。
オレ、1人っ子で兄弟がずっと欲しかったから
リオンが家族の一員になるってなった時、
オレ本当に嬉しくてさ。
まだ字 全然知らない時に
母ちゃんから教えてもらって書いたから
すっげぇ下手くそだろ?」
照れくさそうに笑う太陽を見て
ななせは微笑ましい気持ちになった。
そして、羨ましくも感じた。
ななせも1人っ子で
幼い頃から父親がいなく、
母親と2人で暮らしていた。
唯一の友達が幼馴染のハレヤだった。
・・・ハレヤ・・・元気かなぁ・・・
ボーっとしているななせの目の前で
太陽は手を振った。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫!」
我に返ったななせは
苦笑いを浮かべた。
「んで、話戻すけど
トレーナーの私物を異能者に与えると
なんでか分かんねーけど
ヒールボールを投げると跳ね返ってくるんだ。
試しにリオンに投げてみ?」
太陽はななせに3つほど
新しいヒールボールを与えた。
「分かった。」
ななせはボールを持って
リオンから少し離れた。
「じ、じゃあ・・・いくよ!」
ななせはつばを飲み込むと
ヒールボールを1つリオンに向かって投げた。
ボールはリオンに当たると
ボロボロに壊れて地面に落ちた。
「ごめん!
変なとこに当てたかも!」
ななせはリオンに駆け寄って
ボールの当たった部分を撫でて
何度もリオンに謝った。
「本当に痛い時は吼えるから
さっきのは鳥がぶつかった程度の
痛みだと思うぞ。」
太陽は壊れたボールを
拾うと、ななせに渡した。
「な? 弾かれて壊れるんだ。」
ななせは壊れたボールを見て
驚くとまじまじと見た。
太陽はななせから
壊れたボールを取ると
近くのゴミ箱に捨てた。
「お前の連れ せっかく強いんだから
きちんと管理してないと
今のままじゃ誰かに盗られるぜ。
ボールを使うか、私物を与えるかは
お前次第だからこれ以上は
言わないけどよ。」
そう言うと太陽は
リオンの頭を撫でた。
「これからジム戦か?!」
「うん、そのつもり。」
ななせは太陽に残りの
ヒールボールを返そうとすると、
太陽は「それやるよ。」と言って
バッグを背負った。
「ジム戦頑張れよ!
またどっかの街で会ったら
バトルしようぜ!」
そう言うと太陽とリオンは走って
次の街に向かった。
ななせとレンは2人を見送り、クリミアジムに向かった。