NANASE - Chapter 4  特訓
03
ななせと太陽は広い場所に来て
50mの距離を開けてお互い向き合った。


太陽はななせに聞こえるように
大声で言った。


「オレが勝ったら、オレの手持ちの仲間と
 お前連れを交換な!」


ななせも太陽に聞こえるように
大声で言った。


「私が勝ったら、この件は諦めてね!」


「OK lah !(おっけーら!)

 約束だかんな!」


太陽は頭上OKのサインをすると、
傍で大人しく座っているリオンの隣にしゃがんで、
リオンの背中を優しく叩いた。


「無茶はすんなよ。」


リオンは太陽の頬をペロッと舐めると
5歩ほど前に出た。


ななせはレンを見て小声で言った。


「頑張ろうね!」


「おぅ。」


レンはうなづいてななせと拳を軽くぶつけると、
3歩ほど前に出てリオンと向き合った。



喫茶店で新聞を読んでいた男性に
審判をしてもらい、いざ、バトルスタート。


「先制決めるぜ!

 リオン! “きりさく”!」


太陽の命令を聞いたリオンは全速力で
レンに向かった。


「オレの技は2つある。」


レンは向かって来るリオンを
真っ直ぐ見ながら、人差し指と中指を立て、
後ろにいるななせに話しかけた。


「“かみなり”と“放電”だ。

 どれも電気技だが、どう使うかはお前に任せる。」


そう言い残すとレンはリオンに向かって
走りだした。


「“雷”・・・“放電”・・・」


ななせはそう呟き、目を閉じ
精神統一をすると目を開き大声で言った。


「レンくん、“放電”!」


ななせの命令を聞いたレンは、
勢いよく立ち止まって体中の電気を一気に放電した。


「リオン! 地面に潜れ!」


太陽の命令を聞いたリオンはその場で
穴を掘り、地面に潜った。


ななせは辺りを見回して
嫌な予感を感じた。


「地面に潜ったって事は・・・」


太陽は指をパチンと鳴らして
ななせを見てウインクした。


「そう、“穴を掘る”さ!」


太陽のパチンという音と同時に
レンの足元からリオンが勢いよく出て来て
レンは弾き飛ばされた。


「レンくん!」


リオンが地面に着地すると同時に
太陽は指を1回パチンと鳴らして
拳を前に突きつけた。


「決めるぜ、大技!」


リオンがたてがみを大きく揺さぶると
みるみるたてがみが燃え出した。


レンがよろけながら地面に着地したのを
確認したななせは、ホッと胸を撫で下ろした。


「“大文字”!!」


太陽がそう言ったと同時に
リオンはレンに向かって口から炎を噴き出した。


炎大きな大の字を描き、レンに迫った。


「レンくん! 避けれるなら避けて!
 そして・・・!」


レンはギリギリのタイミングで
リオンの“大文字”を避けると、
左手の平を空に向けた。


すると、空はみるみる曇っていき、
ゴロゴロと雷を鳴らした。


「気をつけろ、リオン。

 すごいの来るぞ。」


太陽の言葉にリオンは尻尾を1回振った。


「“雷”!!」


ななせがリオンに向かって人差し指を向けたと同時に、
大きな落雷がリオンの下に落ちた。


太陽の目は一層輝いていた。


「すっげぇ!!

 ・・・でも、おっしいなぁ。」


太陽はいたずらっぽく笑うと、
落雷が起こった方を指差した。


「・・・あっ!」


ななせは太陽の指差した方を見て驚いた。


落雷が落ちた場所にいたリオンは
原素となって消えてしまったのだ。


「とっておきの逃げ技、“みがわり”だぜ!」


そう言うと、太陽は指をパチンと鳴らした。


「“みがわり”使ってもう体力も限界だからな・・・
 さっさと勝敗決めようぜ!

 “穴を掘る”!」


太陽の命令と同時に、レンの足元から
リオンが勢いよく現れ、レンは再び弾き飛ばされた。


「空中なら、落雷を逃げる事は不可能だよね・・・?」


ななせはフッと笑って、
レンを見て大声で言った。


「もう一度“雷”!!」


「何っ?!」


太陽が驚いてレンを見ると、
レンは力無さげにフッと笑って、
リオンに抱きついたと同時に
さっきよりも大きな落雷が2人の下に落ちた。


「リオンっ!!」


地面に落ちたリオンのもとに
太陽は駆け寄った。


審判の男性がリオンに駆け寄り、
リオンを少し見て、手を挙げてななせに向けた。


「リオン、戦闘不能。

 勝者、レン!」


「・・・やったぁっ!!」


その声を聞いたななせは
その場で高くジャンプし、
レンは地面に倒れた。


「レンくん!?」


ななせはレンに駆け寄ると、
太陽はななせに近寄って
ニカッと笑って傷薬を1つ渡した。


「地面技2回くらって平気でいる方が不思議だぜ。
 倒れて当たり前だ。

 良かったら使えよ。」


「・・・ありがとう。」


ななせは傷薬を受け取って笑い返した。




バトルが終わった頃には
日が暮れ始めていた。


ななせと太陽は共に戦ってくれた
パートナーに傷薬を傷口にかけて
さっきのバトルの感想を言い合った。


「最後の”雷”は予想外だったなー!」


太陽はリオンの頭を優しく撫でながら
傷薬をリオンの傷口にかけた。


「私、初めてまともなバトルを経験したんだけど、
 色々勉強になったよ。

 ありがとう、太陽くん。」


ななせはレンのおでこに
濡らしたタオルを乗せて、太陽を見た。


「初バトルだったのか!」


元気になったリオンに頬を舐められ
笑いながら太陽は答えた。


仲の良い太陽とリオンを羨ましく思ったななせは、
こんな質問を太陽に投げ掛けた。


「リオンと太陽くんって仲良いね。

 ライオン、怖くないの?」


太陽は擦り寄ってくるリオンを
撫でながら答えた。


「リオンとオレは小さい頃から
 ずっと一緒にいるからなー・・・

 リオン、人間慣れしすぎて
 ライオンとしての本能が消えちまったのかもなー。」


太陽はかばんから小さな青い袋を取り出し、
サクランボのような木の実を取り出すと
手の平に乗せたまま、リオンに木の実を向けた。


「オレん家、違う地方でサファリパークやってんだ。

 そこでリオンは生まれたんだけどよ、
 リオンは動物型異能者で、すぐに母親に捨てられたんだよ。

 それをオレの父ちゃんと母ちゃんが保護してさ、
 赤ん坊だったオレと一緒に育ったんだ。」


太陽の手の平に乗った木の実を食べてる
リオンを見ながら太陽は話した。


「リオンは炎タイプの異能者で、
 これまでに何度も母親のもとに返そうとしたんだけど・・・

 動物って敏感だからさ、
 リオンが自分達と違う存在なんだって
 すぐ気づいてさ・・・
 リオンを半殺しにしかけた事があったんだ・・・

 オレの父ちゃんと母ちゃんは
 すごい悩んでたよ。

 このままサファリに返しても
 また仲間に殺されかけてしまうかもしれないって。
 本当は野生のライオンとして生きてほしかったけど、
 『異能者』として生きて一番なついていたオレと
 旅に出ようって話になったんだ。」


リオンを撫でながら話す太陽の表情は
寂しそうで、太陽はリオンのたてがみに
顔をうずめた。


「オレがトレーナーになった話でもある!」


太陽は顔を上げてニカッと笑った。




■筆者メッセージ
この話はひたすらポケモンXYのトレーナーとの戦闘BGM聴いて書きました
水野 翡翠 ( 2014/05/03(土) 11:44 )