01
クリミアシティに向かう道のりを歩く
レンとななせ。
2人はクリミアシティにあるジムに挑戦しようとしていた。
「ジムリーダーってやっぱり手強いよね・・・」
ななせはカツラギタウンで買ったおにぎりを
1つレンに渡しながら恐る恐る聞いた。
「何やる前から弱音吐いてんだよ。」
レンはおにぎりを受け取って
一口食べた。
「お前からしたら手強いだろうな。
けど、上には上が絶対いるんだ。」
ななせはもう1つのおにぎりの方に
目線を落として不安に感じた。
ジムリーダーに勝てるだろうか、
もし負けてしまってレンに見捨てられて
またパートナー探しに戻ってしまうのだろうか。
「おい。」
ななせがそんな事を考えていると
レンがななせの頭に軽くチョップした。
ななせが驚いてレンを見ると
レンはななせを目で見ながら
そのままななせの頭をくしゃっと撫でた。
「オレがいるだろ、そんな考え込むな。」
そう言ってレンはななせが持っていた
おにぎりを奪って一口食べた。
その言葉を聞いたななせは
今まで感じていた不安が一気に無くなり、
笑顔になった。
「・・・そだね。」
森に入ってしばらく歩いたところで、
レンは立ち止まり、ななせと向き合った。
「うし、この辺でいいか。」
木々に囲まれた道が広い場所の
真ん中にレンは立って
軽く準備運動をした。
「何をするの?」
ななせはきょとんとして
辺りを見回した。
今にも野生の動物が出そうな雰囲気に
ななせは少し怖く感じて
2歩ほどレンに近寄った。
「お前はトレーナー初心者で
バトルや特性、相性について何も知らねぇだろ。
そんなままでジム戦に挑むのは
ただの間抜けだ。」
ななせはレンの話を聞いて相づちをうった。
「そこで、だ。
今ここでオレがお前に必要最低限の事を
教えてやる。」
「よろしくお願いします!」
ななせは軽くお辞儀をして、
レンを見た。
「よし。」
レンは空を眺めたり、
森の奥の方を見回したりすると、
「そんな都合よく現れる訳ねぇよな・・・」
と、呟いて頭を掻いた。
「?」
ななせも辺りを見回していると
レンはななせを少し突き放して言った。
「なるべくオレから離れて
オレが『いい』って言うまで伏せていろ。」
「分かった。」
ななせは近くの木の後ろに隠れた。
「木には近寄るな。」
レンの声が聞こえて
ななせは大きな石の後ろに隠れた。
「ここならオッケー?」
レンは頭上で手を使ってOKのサインをした。
レンはななせに背を向けて
大きく深呼吸をした。
ななせは石の陰に隠れて
レンを見ていた。
大きく息を吸ったレンは一度呼吸を止め、
息を吐くと同時に一気に体中から電気を放電した。
眩しい光と打ち上げ花火を連続で聞いているような
凄まじい音。
耐え切れないななせは石の後ろに隠れて
耳を塞いで終わるのを待った。
騒音が聞こえなくなり、
ななせはゆっくり石の陰から辺りを見回し
驚いて立ち上がった。
ななせとレンを囲っていた木々は
全部レンの雷を受けて
倒されていた。
レンは走ってななせに近寄って来た。
「悪ぃ。
おびき寄せようと思ったら失敗した。」
「何をおびき寄せようとしたの・・・?」
ななせは恐る恐るレンに聞くと、
レンは顔色一つ変えずに即答で答えた。
「この辺にいる強い野生の奴(異能者)。」
予想通りの回答に、ななせは下を向いて拳を握った。
「初心者にいきなり強いのは駄目だってばっ!!」
「ぐほぉっ!!!」
ななせはレンに右アッパーを決めると
気を失ったレンを引きずって
元来た道を歩み始めた。
「相性、特性、バトル方法とかは
本読んで勉強するから!
いいね?!」
ななせがレンに強く言うと、
レンは力無さげに指でOKのサインをした。