06
カツラギタウンのイカヅチのアジトに
戻って来たななせとレンは
グリードに荒らされたあの日のままの状態で
廃墟と化していた。
レンは黙って奥の方に進んで行くのを
ななせは心配そうに見送り、
辺りを見回した。
不良団体イカヅチの中での
生き残りはどうやらレンだけのようで
ななせは下唇を噛み締めた。
「・・・1人でも多く・・・
サリバンに捕まってる人を助けなきゃ・・・!」
そうななせは小さく呟くとななせは
その場に咲いていた花を摘んで
大木の近くに添えて黙祷をした。
ななせが黙祷を終えた頃に
レンが戻ってきた。
「ちょっと寄るとこがあるからよ、
適当に時間潰しといてくれね?」
「分かった。」
ななせはきょとんとしていると
レンはどこかに去って行ってしまった。
ななせは大木の近くに腰かけて、
センターのコンビニで買ったサンドイッチを
食べてレンの帰りを待った。
心地の良い昼、木漏れ日の下でななせは
空を見上げた。
レンがどこかに行って
かれこれ1時間が経つ。
「遅いなぁ・・・」
ななせはペットボトルの水を一口飲んで
レンが去って行った方を見る。
人が通る気配どころか、人が来る気配がしない道。
「・・・もしかして・・・」
ななせは少し嫌な予感がした。
「・・・逃げた・・・?」
ななせは急いでサンドイッチを食べて
荷物を片付けてその場に立ち上がり
アジトから出て町の方に向かった。
「絶対に逃げたっ!!
こんなに遅いのおかしい!!」
全速力で走っていると
曲がり角から人が現れ、
ななせは止まる事が出来ず、
その人の胸部にぶつかった。
「ご、ごめんなさいっ・・・!
私、急いでて・・・」
顔を上げてぶつかった人の顔を見上げると
ななせは唖然とした。
ぶつかった相手は黒髪に所々金のメッシュが刻まれ、
後ろの方で適当に髪を髪ゴムで縛ったレンだった。
ななせは恐る恐る聞いた。
「・・・統領・・・さん・・・?」
レンは唖然としたままのななせの頬をつねった。
「・・・何驚いてんだよ。」
ななせはレンの手を掴んで
抵抗しながら話した。
「金髪オールバックから黒髪になったら
誰だって驚くよ!」
レンは手を放してななせから離れて
頬をポリポリと掻いた。
「やっぱそうか・・・
もう少し金の部分を多くしとけば良かったな・・・」
レンはブツブツと呟きながら
ガラス越しに映ってる自分の髪を
まじまじと見ていた。
ななせはつねられた頬を
さすりながらレンを見た。
「なんでまたイメチェンしたの?」
レンは前髪を触っていた手を止めて
深いため息をついてから話した。
「決意表明みたいなもんだ。」
ななせは意味が理解出来ず首をかしげると
レンはななせと向き合って
ななせを見下ろした。
「お前が頂点(てっぺん)目指すって
オレに約束したからな・・・
オレもお前に約束するよ・・・」
ななせはかしげていた首を元に戻して
レンを見上げていた。
「オレはお前がチャンピオンになるまで、
ずっとお前のパートナーでい続ける。
いいな?」
そう言ってレンはななせに拳を突きつけた。
ななせは瞳を輝かせてレンを見た。
「ずっと私の傍に(パートナーとして)いてくれるんだね・・・?!」
レンはななせの反応に固まった。
レンはななせに背を向けて
大量に汗をかきながら必死に考えた。
・・・ずっと傍にいろってか(意味深)・・・?!
こいつ(ななせ)・・・
オレの事が好きなのか・・・?!
「どうしたの?」
ななせに背後から声をかけられ、
レンは驚いてななせを見た。
「えっ?! な、なんでもない!」
レンはななせと目を合わせずに答えると、
ななせはレンの服の裾を少し引っ張って、
微笑んだ。
「私、その髪型の統領さん、好きだよ。」
レンはななせを見て唖然とし、
すぐに顔が赤くなった。
「う、うっせ!」
レンは片手で顔を覆って、ななせに背を向けると
「・・・さんきゅ。」
と、小さく呟いて
ななせの手を放して先に歩いた。
ななせはきょとんとしてレンの後を
ついて行った。
「統領さん・・・今日様子がおかしいなぁ・・・」
そう小さくななせが呟いたのを
レンは聞いてないフリをした。