04
とある病室の扉の前に着くと、
ボルサリーノはななせを見た。
「・・・この奥に彼(レン)がいるよ・・・」
そういうとボルサリーノは廊下の窓を開けて
身を乗り出した。
「えっ!?
な、何をするの・・・!?」
ななせはボルサリーノの腕を掴んだ。
「ここ8階だよ・・・!?
じ、自殺は駄目だよ・・・!」
必死に説得するななせを不思議そうに
ボルサリーノは見ていた。
すると、窓から大きな木の枝が
ボルサリーノの絵画セットがたくさん入った
かばんを枝にぶら下げながら
ボルサリーノの頬を優しく突いた。
「やぁ・・・」
ボルサリーノは優しく微笑んで
木の枝を撫でた。
ななせは開いた口が塞がらなかった。
ボルサリーノは大きな木の枝に足を乗せて
かばんを肩にかけた。
「じゃあ・・・僕は次の街に行くよ・・・」
ななせは驚きを隠せないまま
ボルサリーノを見た。
ボルサリーノはフフッと笑って
頭のアホ毛を突いてる木の枝に手を触れた。
「・・・僕の友達だよ。」
「そうじゃなくってっ!」
ななせがツッコミを入れると
ボルサリーノはきょとんとした表情でななせを見た。
「なんでわざわざ窓から去るの?!」
ボルサリーノはフッと微笑んで
ななせを見た。
「・・・愚問だね。
元来た道を歩きたくないからだよ・・・」
「は・・・?」
ななせが首を傾げるとボルサリーノは
「クラウンシティでまた会おうね・・・」
そう言って1輪の花を手の平で咲かせて
ななせに渡した。
すると、ボルサリーノを乗せた木の幹はゆっくりと
地面に向かって下り、地面に到着すると
ボルサリーノは木の枝から降り、8階を見上げ
窓から見下げているななせに向かって
軽く手を振り、歩き去って行った。
ななせは見えなくなるまで
ボルサリーノを見送り、
「クラウンシティ・・・」
と 小さく呟き、花を握りしめるとレンのいる病室に入った。
病室に入ると、
レンは包帯やガーゼで治療された姿で
帰る準備をしていた。
「あっ!!
まだ安静にしてないと・・・!」
ななせは花をテーブルに置いて
レンに近寄ると、
「もう大丈夫だ。」
と、ななせを見ないで言うと
ガーゼと包帯を外し始めた。
ななせはレンのガーゼを外した部分を見て
驚いて声が漏れた。
「あ・・・・」
傷の跡は綺麗に消えていて、
どこを怪我したのか分からないくらいだった。
「異能者は人間と違って身体が丈夫なんだよ・・・」
「わっ!!」
ジロジロ見ているななせに向かって
包帯を渡すレンの声は怒っているような
感じだった。
軽く肩回しをしているレンに向かって
ななせは明るく振舞いながら
レンに声をかけた。
「あ・・・あのね・・・
私・・・あなたの力になりたいんだ・・・っ!」
すると、ダンッと力強くレンはななせを壁に追いやった。
「助けるだと・・・お前が?
自分の身すら守れねぇお前がっ?!」
レンは驚いて見上げている
ななせに向かって怒鳴り散らした。
「お前みてぇガキがどうにか出来るような
事じゃねぇんだよ・・・っ!」
握りしめるレンの拳からは血が流れ、
ななせはそれを見て自分の体が
小刻みに震えているのが分かった。
ズルズルと地面に座り込んだレンは、
うつむきながら呟いた、
「・・・頼むから・・・オレを一人にしてくれ・・・」
レンはゆっくりと立ち上がり、
少し乱暴にななせを病室から追い出した。
ななせはその場に座り込んで
涙をポロポロと流した。
「私・・・なんて・・・バカなんだろ・・・」
彼の事を分かっていた気がして
全然分かってなかった・・・
「・・・・ッ。」
ななせは声を殺してその場で静かに泣いた。