04
「絶対・・・負けません・・・!」
ななせはグリードを見上げて
歯を食いしばり、レンに向かって叫んだ。
「私が戻るまで耐えて!
すぐ戻るから!」
「無茶・・・言うなよ・・・っ」
レンは両手と片足で大男から
押し潰されるのを防いでいた。
ななせは走ってその場を去ってある場所に向かった。
グリードはにこやかに笑い、帽子に手を触れた。
「おやおやぁ〜、何をしてくるのか
楽しみですねぇ〜。
ですが、これはチャンスでもあります。」
そしてグリードはステッキで1回地面を強く叩いた。
「ラルゴ、“のしかかり”。」
グリードの声を聞いた大男はレンを押し潰す力を強めた。
「ぐ・・・んぐぐ・・・っ」
レンはどんどんラルゴに押されていった。
一方そのころ、ななせは
カツラギタウンのショップに入って3つほど売り物を取り、
店員にお金を渡して走ってレンの所に向かった。
「さ、これで終わりにしましょう。
ラルゴ、さらに“のしかかり”。」
グリードはステッキで2回地面を叩いた。
ラルゴはレンを押し潰す力をさらに強めた。
「もう・・・限界だ・・・っ!」
レンがギュっと目をつぶったその時、
ななせの声が聞こえた。
「おまたせっ!」
ななせはレンに向かって何かを投げた。
レンはななせが投げたものを手でキャッチし、驚いた。
「スタンガンっ?!」
ななせは息を整えながら笑った。
「これで・・・電気使えるでしょ・・・?」
レンはフッと笑って、スタンガンの刃を噛んだ。
「あぁ・・・サンキュ。」
そう言って、レンはスタンガンの電源を入れた。
すると、ラルゴの上空から大きな雷が落ちた。
グリードは細い目を見開いた。
しばらくして、ラルゴを蹴飛ばしてレンが立ち上がった。
「ちっと安物の電気だが・・・
無いよりかはだいぶマシだ。」
レンはスタンガンの刃を噛みながら
ななせの横に立ち、笑みを浮かべてグリードを睨んだ。
グリードは鼻で笑うと、
「・・・それで勝ったつもりですか?」
不気味な笑顔でななせとレンを見た。
ななせとレンが背後の気配を感じ振り向くと、
ラルゴが真っ黒の原素を体に吸収しながら
攻撃をしかけてきていた。
「あぶな・・・・っ!」
レンはななせを突き飛ばした。
ななせは地面に転がり頬と膝を擦りむいたが、
そんな事には全く気にも留めず
起き上がってレンを見た。
ななせがレンを見たと同時に
レンはラルゴによって壁に押し潰された。
壁は破壊され、粉々になり
レンは吐血し その場に倒れこんだ。
ななせは目を見開いて
言葉を失い、絶句した。
レンは全く動く気配を見せず
地面に倒れていた。
「おや? 死にましたか?」
グリードがゆっくりレンに近寄ると、
ラルゴがレンの腕を持ち上げた。
ななせは立ち上がろうとすると
擦りむいた膝の傷が痛み、地面に座り込んだ。
ななせの脳内には恐怖しかなかった。
このまま私が座り込んでたら・・・
頭領さんは・・・捕まる・・・?!
「だ・・・駄目・・・助け・・・なきゃ・・・っ」
立ち上がろうとすると腕が奮え、
自分の無力さに涙が流れた。
怖くて怖くて仕方なかった。
グリードの周りの原素が真っ黒な闇色に輝き、
まるでななせに圧力をかけているようで。
ななせは流れる涙を手でぬぐいながら
消えそうな声で呟いた。
「・・・誰か・・・助けて・・・っ。」
ななせの涙が一滴地面に落ちると、
ななせの周りに風が吹き起こった。
グリードは細い目を開いて振り返った。
風には花びらがたくさんあり、風が止むと
あの時の白い2本のアホ毛の青年が
ななせを見下ろして微笑んだ。
「呼んだ・・・?」
ななせが唖然としていると、
青年は座り込んでななせと目線を合わせて
ななせの手を優しく握った。
「泣かないで・・・なっちゃん。」
相変わらず青年の原素は眩しく金に輝き、
ななせを照らした。
「・・・そこで待ってて。」
青年は握っていた手を放して
グリードに近寄った。
グリードは青年に警戒し、舌打ちをした。
「ラルゴ! あいつを倒せっ!」
ラルゴは青年に向かって殴りかかろうとした。
青年はラルゴを見上げて悲しそうな表情をした。
「・・・かわいそうに・・・」
青年はラルゴの手に触れると、
触れたラルゴの手から大きな木の根が生えて
ラルゴの動きを封じた。
「・・・もう、自由だよ。」
青年の声を聞いたラルゴは死んだ目から
涙を流し、大きな樹木に包まれた。
グリードは舌打ちをして その場から立ち去った。
ななせは驚きの連鎖で声が出なかった。
青年はレンを抱えてななせに近寄った。
「・・・もう大丈夫だよ。」
青年はそういうとななせに微笑みかけた。
ななせは溢れる涙をぬぐわず
青年に抱きついて静かに泣いた。