02
不良達に連行されて着いた場所は、
とても広いバトルフィールドだった。
初めて見るバトルフィールドにななせは
関心して辺りを見回した。
レンはななせとは反対側の方のバトルフィールドに立った。
「さぁ・・・いつでもかかって来いよ」
そう言ってレンは髪をくくった。
身体中には電気が火花のようにほとばしっていた。
「えっ!?
え、えー・・・っと・・・」
1人で挙動不審になるななせを見て
レンは舌打ちをした。
「どうした。
さっさとお前の連れ(異能者)出せよ。」
ななせは抱えていたバッグを強く抱きしめて頭を下げた。
「あ、あの!
私・・・まだ仲間(異能者)連れてないんです・・・!」
一瞬 沈黙が流れ、ギャラリーの不良達が大笑いし始めた。
ななせは恥ずかしくなって下を向いた。
「・・・・・・・・・・・・・」
レンは構えていたのを止めて、ため息をついた。
もう・・・家に帰りたい・・・
ななせはその場に座り込んで泣きそうになっていると、
レンがゆっくり近づいてきた。
「お前・・・トレーナー辞めれば?」
冷たく言い放つとレンは不良達を連れて
バトルフィールドから去って行った。
1人バトルフィールドに残されたななせは
静かに涙を流した。
・・・苦戦して、もう嫌だって思う事がこれからたくさん起こるでしょう。
ふと小鳥の言っていた台詞を思い出して
ななせは涙を拭いて立ち上がった。
「こんな事で泣いてちゃ駄目だ・・・!」
自分に言い聞かせるように頬を2回叩いて
鼻水をすすった。
すると突然、爆発音がしてななせは爆風で飛ばされた。
気がついて辺りを見回すと、
ななせはありえない光景を目にした。
黒いスーツ姿に黒い帽子をかぶった細目の男性と
ボロボロで傷だらけのレンがいた。
スーツ姿の男性の周りには怪しげな
真っ黒のボールが宙に浮いてた。
男性は鼻歌を歌いながら持っていた
ステッキをクルリと振り回した。
「しぶといですねぇ〜。」
ヘラヘラと笑いながらその場に座って
帽子の中からティーカップを取り出した。
「しかし・・・こんな汚い場所にひっそりと
暮らす異能者(メーヴェ)がいたとは・・・」
そう言って男性は近くにいる
死んだ目をした大男に茶菓子の準備をさせた。
もう1人の大男はティーカップにお茶をゆっくりと注いだ。
「流石はアナザー地方1の不良グループの頭領・・・
とでも言っておきますか。」
男性は注がれたお茶を1口飲んだ。
ななせは物陰に隠れて2人の様子を見ていた。
優雅にお茶を飲む男性見て
ななせは嫌な感じをしていて
さっきかから震えが止まらなかった。
男性の周りの原素が見た事ないくらい
真っ黒で殺気立っていた。
・・・あの男の人の周りの原素・・・
なんであんなに真っ黒なの・・・?!
男性の原素を見てななせは直感した。
・・・この人は危ない。
ななせは息を殺しながらその場を動いた。
「おやぁ? どちら様ですか?」
背後から背筋がゾッとする声が聞こえ、
振り向くとスーツ姿の男性がにこやかな笑顔で
ななせを見下していた。
「ん〜?
見たところ・・・あなたは人間ですねぇ〜。」
男性は細い目を少し開いた。
でもすぐにまたにこやかな笑顔で
ななせを見た。
「おっと。 自己紹介が遅れましたね。
私(わたくし)、グリードと申します。
全国の異能者を保護しているマダム・サリバンの下で
働いている者です。
どうぞよろしく。」
そう言ってグリードは少し帽子をずらして
軽くお辞儀をした。
ななせは震えながらグリードを見上げた。
「あ・・・あの・・・それ・・・な・・・何・・・ですか・・・?」
ななせは気になっていた
真っ黒のボールを指差した。
グリードはニッコリと笑って
宙に浮いていた真っ黒のボールを
1つ取ってななせに見せた。
「これはダークボールというものです。
ダークボールには捕まえた異能者を
絶対服従させる力が施されており、
トレーナーにはとっても便利なものです。」
そう言ってグリードは持っていたボールを
宙に浮かせた。
「素晴らしいと思いませんかぁ?
ダークボールで全ての異能者を捕まえると
全ての異能者を意のままに操れるんですよぉ?」
不気味に笑うグリードを見てななせは
辺りを見回した。
「・・・もしかして・・・他の不良の人達は・・・」
「あぁ。 これの事ですか?」
グリードはフッと笑って大男が持っている
袋の中身をステッキで指した。
袋の中にはダークボールが隙間なく
敷き詰められていた。
「雑魚ですが・・・サリバン様が立派に
育ててくださるでしょう・・・。
後は・・・彼だけなんですけどねぇ。」
そう言ってグリードはステッキで
膝から崩れ落ちているレンを指した。
「あ、そうだ!」
グリードは手をポンと叩いて
笑顔でななせを見た。
「お嬢さん、トレーナーなんですよね?
ちょうどいい!
私が異能者の捕まえ方をお教えしましょう。」
「え・・・・・」
グリードは宙に浮いたダークボールを1つ手に取り、
説明し始めた。
「いいですか?
まず相手を弱らせます。
・・・といっても先ほど弱らせたので
もう充分でしょう。」
「な・・・何をするの・・・?」
ななせの小さな声はグリードには
届いてなかった。
レンを見るとフラつきながら立ち上がっていた。
グリードは構わず説明を続けていた。
「そして弱った相手にこのダークボールを投げます。」
そう言ってグリードはレンに向かってダークボールを投げた。
・・・守れなかった・・・
ふとななせの頭の中から声が聞こえた。
声の主はレンだった。
その声を聞いたななせはレンに向かって走り出した。
一方、レンは悔しそうな表情をして目をギュっと
つぶると、何かを弾く音が聞こえてダークボールが
地面に叩き落とされた。
「どういう風の吹き回しですか・・・?」
グリードの冷たい声が聞こえ、レンが目を開けると
ななせがレンを庇って前に立っていた。