02
小鳥に案内されて、ななせは赤い建物の中に入った。
「じゃあいきなりだけど問題です。」
小鳥はななせの前でロングスカートを翻して1回転した。
「この建物は何の施設でしょうか?」
ななせは辺りを見回すと、包帯をした人や
車椅子に乗った人や看護婦などがたくさんいた。
「・・・病院・・・ですか?」
「正解。」
小鳥はニコッと笑うと抱いていた黒猫を地面に下ろした。
地面に下りると黒猫は小鳥から離れて
施設の奥へと行ってしまった。
「いいんですか? 猫ちゃん・・・」
黒猫を見送りながらななせは小鳥に言うと、
「いいの。
ダニエルはセンターが好きだから。」
と言って 小鳥は施設内の雑誌を一冊手に取り始めた。
「この施設は『センター』といってね、
異能者を治療する専門の病院なのよ。
まぁ、人間の治療も出来ない事はないけどね・・・」
「そ、そうなんですか・・・?!」
ななせは驚いて人々は見回した。
「で、でも・・・異能者らしい人なんて・・・
どこにも見当たらないけどなぁ・・・」
施設内を見渡すななせを見て
小鳥はフフフと笑った。
「ななせちゃん、
あなたにはきっと分かるはずよ。
原素(エレス)が見えるあなたなら・・・」
そう言って小鳥は施設内のソファーに座って
持っていた雑誌を読み出した。
「あ、あのー・・・
原素(エレス)って何なんですか?」
ななせが恐る恐る質問すると
小鳥は驚いたように立ち上がった。
「そういえば、原素(エレス)の説明まだだったわね・・・!」
小鳥は近くにいた赤髪の青年の前に立って
「悪いけど・・・時間ある?」
と 問いかけた。
赤髪の青年は「はい。」と答えると小鳥に手を引かれ
ななせの近く立った。
「ななせちゃん、彼は異能者よ。
今から軽く技を出してもらうから、
原素(エレス)をよく見ててね。」
「は・・・はい!」
ななせはいくつか質問したい気持ちを
抑えて返事した。
小鳥の「お願い。」という合図で、
赤髪の青年は片手の上に小さな炎をポッと浮かせた。
「えっ?! ・・・ええっ?!?!」
ななせは目をこすってよく目を凝らして
赤髪の青年の手の平に浮いている炎を見た。
「さ・・・触ってみても・・・」
「触ると火傷するよ。」
青年の台詞を聞いてななせは出していた
手を引っ込めた。
「ななせちゃん、原素(エレス)を見て。」
小鳥が指差す方向を見ると、
青年の手に光の粒が吸い寄せられていた。
「うわぁ・・・」
不思議な光景を目の当たりにした
ななせは言葉を失った。
「原素(エレス)はね、異能者の力の源で
異能者が無自覚で出してる命令式に
反応して自然の色んな力になる。
・・・って今の研究段階で発表されているの。」
「すごい・・・」
ななせが炎に見とれていると
「あの・・・もういいですか?」
と 青年は不機嫌そうに言った。
「ごめんなさいね。 ご協力ありがとう。」
小鳥がポケットから出した赤い木の実を1つ渡すと
赤髪の青年はまたソファーに座った。
「これで原素(エレス)について分かってくれたかしら?
まぁ分かりやすく言えば・・・
原素(エレス)がたくさん飛び交っている人が
たいてい異能者ね・・・。」
その台詞を聞いてななせは
あの白髪頭の不思議な青年を思い出した。
・・・あの人の周りには眩しいくらいの
原素が飛び交っていた・・・
・・・もしかしたら異能者なのかも・・・
「あ、そういえば・・・
小鳥さんにもたくさん原素(エレス)が
飛び交ってましたけど・・・」
ななせが素朴な質問をすると、
小鳥はクスッと微笑んだ。
「さて・・・なぜでしょう・・・?」
「え・・・・?」
小鳥の台詞と同時に眩しいくらいの
原素(エレス)が飛び交った。
「さ、次はトレーナーについて教えるわね。」
小鳥は左手で髪を耳にかけて笑った。