07
「アナタがジムリーダーだったんですね!
早速なんですけど、ジム戦にチャレンジさせてください!」
ななせは立ち上がってミントに頭を下げた。
ミントは穏やかに微笑んで、ななせの頭を優しく2回叩いた。
「もう少し待ってね。
私の子供達がお仕事から帰って来るから」
「はい! 全然待ちます!」
ななせは元気よくミントに返事をして、片付けの手伝いをしに一緒に台所へ向かった。
ゴウキも2人の手伝いをしようと席を立つ。
「オレも!……」
レンとムクにも手伝いをしないのかと尋ねようとしたが伸ばした手を引っ込めた。
2人は黙りこくって窓から外の野菜畑を見ていた。
レンは頬杖をついて、ムクは姿勢良く座っているがいつもより黒目が大きい。
外で仕事しているであろうミントの異能者達を探しているんだ。
この空間だけ張り詰めた空気が流れている。
この2人はきっと闘う準備が出来ているんだ。
ゴウキもだんだん緊張してきた。
自分も2人のようにしていればいいのだろうか…
2人の真似すると余計緊張して本番で失敗してしまいそうだ…
ゴウキは自分の座っていた椅子を引いたり・やっぱやめたりを繰り返し、座ろうかどうしようか悩んだ。
「オ、オレ、手伝いしてくる…」
「ああ」
「構わないよ」
2人は一切振り向かずに答え、ゴウキを逃げるように台所へ向かった。
ゴウキ台所に来ると、ななせはミントにマリアから預かった手紙をミントに渡していた。
ミントはチェーンのついた眼鏡をかけ、手紙を読み始めた。
表情一つ変えずに黙って手紙を読むミントにななせもゴウキも唾を飲んだ。
一体どんな内容が書かれているんだろう…
聞いてもいいのか、それとも聞いちゃ駄目なやばい内容なのか…
手紙を読み終えたミントはフフッと笑って手紙をしまった。
「これはこれは…どうしましょうかね」
ミントがそう呟いた途端、玄関のドアが開く音がした。
ミントの言っていた『子供達』が帰ってきたのだとななせとゴウキは玄関の方を見た。
そこにはレンと同い年くらいの双子の男女がいた。
双子は急な客人に驚いているのだろう、一言も発さず辺りを警戒している。
2人共栗毛色の髪に緑の目。女の子の髪は背中まで伸びている。
青年は白シャツにオーバーオール。やや土汚れがついている。
女の子は濃いブラウンのロングスカートに白エプロン。背中に何かを背負っているがよく見えない。
「あらあら、おかえり2人共。たくさん汚れたでしょう?」
ミントがやってくると双子はサッとミントの方へ逃げ、ミントの後ろに隠れた。
人見知りなのだろうか一切双子は喋らない。
ミントの背後からななせ達の様子を伺っている。
「ほらほら、綺麗にしてきなさい。
休憩をしたらお客さんの相手をしましょうね」
ミントに頭を撫でられ双子は頷くと、手をつないで奥の部屋へと入っていった。
ミントは双子の様子を微笑ましそうに見送った後、ななせ達に言った。
「スタジアムで待っていてもらえるかしら?
そこでお互い悔いのないジム戦をしましょう」