第82話「ポケモンリーグ準決勝第1試合前編」
「ポケモンリーグ13日目、今日は準決勝の2試合が行われます。今日勝った選手が、最終日である15日目の決勝戦に参加します。今や、残るトレーナーはたったの4人。しかし、その4人を見ようと今日も観客席は大入り満員です。では、そろそろその期待に応えてもらいましょう。準決勝第1試合、選手入場!」
「今日勝てば決勝戦か……」
湧き起こる歓声を浴びながら、ダルマはスタジアムに乗り込んだ。毎回見てきたトーナメント表は敗者の名前が消され、すっかり寂しくなっている。
そんな中、感傷に浸るダルマに対戦相手が声をかけた。
「遂に当たったな、ダルマ」
「カラシ! 準決勝でお前と勝負か、こりゃかなり厳しいな」
「ふん、まだ残っていたか。俺とぶち当たるまでに負けやしないかと心配した
が、杞憂だったな」
ダルマの準決勝の相手、カラシは不敵な笑みを浮かべた。ダルマは苦笑いしながら受け答えする。
「全くだよ。それより、報酬はもらえたか?」
「……ああ。想像以上の額だった。しかも正式に四天王候補のオファーまで来た。全てお前のおかげだ、感謝する」
カラシはダルマに向けて頭を下げた。ダルマは一瞬目を丸くしたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「はは、どういたしまして」
「……だが、当然この試合では本気でかかる。手加減なんて考えないことだ。さあ、命を賭けてかかってこい!」
カラシはこう宣言すると、ボールを手に取った。ダルマも釣られてバトルの準備に入る。2人の様子を確認した審判は、試合開始を叫んだ。
「これより、ポケモンリーグ本選準決勝第1試合を始めます。対戦者はダルマ、カラシ。使用ポケモンは最大6匹。以上、始め!」
「キュウコン、いくぞ!」
「キリンリキ、出番だ!」
準決勝の幕が、遂に上がった。ダルマの先発はキュウコン、カラシの1匹目はキリンリキである。スタジアムは早速強い日差しが降り注いできた。
「準決勝が始まりました。カラシ選手はキリンリキ、ダルマ選手はキュウコン。共に各選手の戦術を支えてきたポケモンです。さあ、どちらが先に主導権を握るのでしょうか」
「キリンリキか、またバトンタッチかな。よし、まずはわるだくみだ!」
「こうそくいどう!」
まずはお互い様子見だ。キュウコンは低い笑い声を漏らし、尻尾から熱を噴出した。一方、キリンリキは体の力を抜いて辺りを駆け回る。
「バトンタッチだ」
「させるか、大文字!」
ここで、キリンリキはカラシの元に帰り、別のポケモンと交代した。そうはさせじとキュウコンは大の字の炎を発射。大文字は交代したポケモンに命中したものの、相手は余裕たっぷりの表情である。しかも、とんでもないことが起こった。
「カラシ選手、素早さを引き継ぎゴルダックに交代してきました。おや……天気が落ち着いてきましたね」
「な、なんだ? あんまりパワーが出なかったぞ」
ダルマは図鑑を開いた。ゴルダックはコダックの進化形で、バランスが良いとも中途半端とも言える能力を持つ。このポケモンの特性ノーてんきは天候の効果を無効にするというものである。非常に強力な特性であり、能力差を気にせず使う人も少なからずいる。
「なるほど、晴れをかき消されたから耐えられたのか。仕方ない、戻れキュウコン。オーダイル!」
「逃がすな、ハイドロポンプで仕留めろ!」
ダルマはキュウコンを引っ込めオーダイルを繰り出した。オーダイルは登場早々、ゴルダックの槍の如き水を受けたが、意に介さない様子である。カラシもこれは計算済みなのか、眉1つ動かさない。
「ふん、その程度で止められるものか。めざめるパワーだ」
「なんの、つるぎのまい!」
先手はゴルダックだ。ゴルダックは若草色の光を放った。オーダイルはその顔を苦渋に歪ませるも、懐のオボンで回復。そして戦いの舞いを披露した。
「もう1発、これで終わりだ!」
「そうはいくか、地震攻撃!」
ゴルダックは再びめざめるパワーを使った。オーダイルは脂汗を滴らせたが、踏ん張った。オーダイルは地面を踏みならし、地震波でゴルダックに襲いかかる。ゴルダックはこれを耐えきれず、倒れこんだ。
「ゴルダック戦闘不能、オーダイルの勝ち!」
「よし、まずは1匹。……だけど、また日差しが強くなってきたぞ。このままだとやり辛いな。カラシの奴、そこまで見越していたのか?」
ダルマは額の汗を拭いながら空を見上げた。ゴルダックが倒れたことで、天候はまたかんかん照りになってきている。
「ふん、俺を舐めたら痛い目見るぜ。クロバット、仕事だ」
カラシはゴルダックを回収すると、自信に満ちた表情で次のポケモンを投入した。現れたのは、素早さに定評のあるクロバットである。
「カラシ選手の2匹目はクロバット、さっそうと登場です。オーダイルは激流の特性、つるぎのまいを駆使した攻撃で、数多の強敵を突破してきました。今回はどこまで活躍するのでしょうか」
「オーダイル、アクアジェット!」
「無駄だ、アクロバット」
オーダイルは全身に水をまとい、激流の如くクロバットに攻め込んだ。しかし晴れているせいか、いかんせん火力がない。これを受けとめたクロバットは、華麗に4枚の翼でオーダイルを叩きつける。蓄積ダメージもあり、オーダイルは地に伏せた。
「オーダイル戦闘不能、クロバットの勝ち!」
「はっ、これでお前の切り札はいなくなったな。あとは厄介な晴れ使いさえ潰せば俺の勝利は決定的、せいぜいあがくことだ」
「……おいおい、そんな天狗になったらろくなことにならないぞ。まあ良いか、今はバトルに集中だ。頼むぞ、ブースター!」
・次回予告
準決勝は一進一退の攻防が続く激戦となった。そこでカラシが投入した秘密兵器に、スタジアムが唸りをあげるのであった。次回、第83話「ポケモンリーグ準決勝第1試合中編」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.63
やはり、カラシは最後の対決を飾るにふさわしい相手です。登場人物が結構のんびりしている中でも、彼はストイックに頑張るのでやりやすいです。
ダメージ計算は、レベル50、6V、キュウコン臆病特攻素早振り、キリンリキ臆病HP252防御68特攻4特防108素早76振り、ゴルダック控えめHP特攻振り、オーダイル@オボン意地っ張りHP攻撃振り、クロバット陽気攻撃素早振り。キュウコンの悪巧み大文字はノーてんきゴルダックに確定で耐えられます。オーダイルはオボン込みでゴルダックのハイドロポンプとめざぱ草2発を乱数で耐えます。そして剣舞地震でキュウコンの大文字と合わせてゴルダックを確定で倒せます。オーダイルの剣舞激流アクアジェットは晴れ込みでクロバットに耐えられ、返しのアクロバットで落とされます。
あつあ通信vol.63、編者あつあつおでん