第64話「合流、そして発覚」
「お、来てくれたねゴロウ君」
「ワタルのおっさん達じゃねえか。待ちくたびれたぞ!」
屋敷の周辺をうろついていたゴロウは、ワタルとユミ、ボルトと合流した。3人とも疲れが顔に出ているものの、目立った外傷等はない。
「悪いねえ、ちょっと勝負に付き合ってあげてたんだよ」
「それで私達、時間がかかってしまいました。そちらは大丈夫でしたか?」
「当たり前だろ。なんたって鍛えに鍛えた俺がいるんだからな! 今はダルマの父さんとハンサムのおっさんとで屋敷の捜索してるぜ」
「そうか。サトウキビ氏の手がかり、何か見つかれば良いのだけど」
ワタルは一息つきながら縁側に腰を下ろした。その光景は、さながら老人のそれとなんら変わりないものである。
とそこに、ドーゲンが大声で叫びながら走ってきた。4人の視線が一斉にドーゲンに向けられる。
「おーい、ジョバンニのおっちゃんがいたぞ!」
「何、本当ですか!」
「ああ。ある部屋に隠し扉があったんだが、その奥にいた。ついてきてくれ」
「皆さん、助かりましたー。ありがとうございまーす」
「どういたしまして。それにしても、まさかおじさまの部屋の押し入れに、隠し部屋へつながる扉があったなんて」
ジョバンニはサトウキビの部屋の隣にある部屋で捕われていた。サトウキビの部屋にある押し入れの壁に隠し扉があり、そこから入るという仕組みだ。現在、ジョバンニがいる部屋にはダルマを除く全員が集合している。部屋にはファイルが2つ無造作に置かれている。他に、食器や机、大量の書類に使い古された万年筆等、様々な品が整然としている。もっとも、整然としている割りには生活感がある。
ジョバンニは発見時、目隠しをされた状態だった。久々に周りの風景を眺めていた彼は、ユミの言葉に思わず飛び上がる。
「まったくでーす……って、ちょっと待ってくださーい。この部屋の手前は彼の部屋なのですか!」
「そーだぜジョバンニのおっさん。自分の部屋の奥に部屋作るなんて、よっぽど見られたくないんだな。弟子はまるで気付いてなかったみたいだくどさ、部屋の広さと外からの幅で気付きそうなもんだけど」
「……なーるほど。彼がこの部屋を隠したがる理由もわからないではありませーん」
ジョバンニはぽつりと呟いた。ワタルはその一言で目の色を変える。たまらず彼はジョバンニへ質問を投げかけた。
「ジョバンニさん、それはもしかして、サトウキビ氏が何者かわかったということですか?」
「ええ、彼の正体はキキョウに着いた夜に確信しました。皆さんにも話しておいた方が良いでしょう」
「そ、そんな馬鹿な……。そのようなトレーナーだったなんて」
「残念ながら事実でーす。彼から確認を取りましたからね」
ジョバンニが一通り話し終えると、ワタルは言葉を失ってしまった。他の皆も困惑した表情を浮かべている。重い沈黙が場を包んだ。そのような状況で、ユミが口を開いた。
「……ところで、ダルマ様はまだいらっしゃらないのですか? お屋敷で合流というはずでしたのに」
「そういやいないな。あの馬鹿息子め、どこをほっつき歩いてやがるんだ」
「ダルマならラジオ塔だ」
ふと、隠し扉の外から声が聞こえてきた。一同は声の方向に注目する。現れたのはすすけたカラシであった。足元はふらついているが、健在の様子だ。ワタルはカラシに近寄り、問い詰める。
「き、君はカラシ君じゃないか! 一体どこに行っていたんだ?」
「俺のことは気にしないでください、全てが終わったら話しますから。それよりダルマです。あいつはサトウキビのいるラジオ塔に突入しました、今頃は接触しているでしょう」
「何、たった1人でか! カラシ君、何故止めてくれなかったんだ?」
ワタルは冷や汗を一筋流した。ドーゲンの顔からは徐々に血の気がなくなる。カラシは腰からボール4個を手に取り提示した。
「……あいつはただの素人だと思っていましたが、いつのまにか十分な強さを身につけましたからね。それに、俺の手持ちは全滅していたので止められなかったんですよ。それより、急いで応援に行った方が良いと思いますよ。万が一ということがあってはまずいでしょう」
「た、確かにそうだ。全員ラジオ塔に向かうぞ!」
カラシに促され、ワタルは全員に指示を出した。7人のトレーナーは一路、ラジオ塔へと急ぐのであった。
・次回予告
あの人のもとにたどり着いたダルマは、最初で最後の対決をすることに。ポケモンリーグすら注目するその手腕は如何に。次回、第65話「最後の決戦前編」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.45
ストーリーも残すところあと6〜7話。あとは純粋なバトルもの、エピローグのみ。
さて、物語で隠され続けた謎はなんだったでしょうか。そして、その謎が導く結末はいかに。いや、私の拙い文章ならもうバレバレかな。本当はまだまだ上手く隠すこともできるのでしょうが。
あつあ通信vol.45、編者あつあつおでん