大長編ポケットモンスター「逆転編」 - 大長編ポケットモンスター「逆転編」
第62話「雪辱の戦い後編」
「あれはクロバットか。思った以上に速いな」

 ダルマはカラシの3匹目、クロバットを図鑑で調べた。クロバットはゴルバットの進化形で、全てのポケモンの中でも特に高い素早さを誇る。それ故素早さ調整の標的にされやすい。嫌がらせやサポートを得意とする。

「……こいつのスピード、とくと見ておくことだ。ブレイブバード!」

「負けるな、火炎放射!」

 バトルが再開した。まずロコンがおいかぜに乗り、火炎放射をした。クロバットはそれを受けながらも体の側面をロコンに向け、回転しながら突っ込んだ。回転により予想以上の破壊力を持った攻撃を食らい、ロコンはたまらず気絶した。

「ロコン!」

「ちっ、抜けるとは思ったが見当違いか。だが……こちらが有利になったことに変わりはない」

 カラシは辺りを見回した。先程まで吹いていたダルマのおいかぜが、本来のそよ風に姿を変えた。

「おいかぜがやんだ……」

「これでお前のポケモンは機能停止だな。キマワリのソーラービームにイーブイのじたばた、お前はこれに頼りきり。しかし、先制できなければ意味のないこと。きあいのタスキも消費した今、お前に勝ち目はない」

「……それはどうかな」

「なんだと?」

 ダルマは冷や汗を滴らせながら、不適な笑みを浮かべた。そんなダルマをカラシは怪訝な表情で睨みつける。

「どんなに不可能と思われても、必ず逆転への糸口はある。それがあったからヤドンの井戸で勝つこともできたし、今まで戦ってこれた。そして、それはこれからも変わらない! 頼むぞカモネギ、俺達の腕の見せ所だ!」

 ダルマはロコンをボールに戻し、4匹目のポケモンを繰り出した。植物の茎を口にくわえ、カモネギが舞い降りる。カラシは鼻で笑って指示を出した。

「ふん、自惚れやがって。クロバット、ブレイブバードだ」

「まずはこらえるんだ!」

 カモネギは腹部に力を込め、翼を交差させた。そこにクロバットが4枚の羽を鞭のようにしならせカモネギを襲う。カモネギはずるずる押されていくが、なんとかダルマの目の前で踏みとどまった。ここでクロバットが攻撃の手を休める。

「今だフェイント攻撃!」

「し、しまった!」

 これを好機とばかりに、カモネギは茎でクロバットの頭をどついた。ロコンの火炎放射とブレイブバードの反動のダメージを負ったクロバットは、抵抗できずに力尽きた。

「よし、やっと半分か。まともにやったら大変だから、確実に倒さないとね」

「……キリンリキ、いくぜ」

 カラシは静かにクロバットを回収し、再びキリンリキを投入した。さっきの戦いの疲れはほとんど残っていないようである。

「よし、じた……」

「遅いわ、サイコキネシス!」

 わずかな差だが、キリンリキが機先を制した。キリンリキはカモネギの体を雑巾のように絞った。これをこらえられるはずもなく、カモネギはあっさり瀕死となってしまった。ダルマは歯ぎしりしながらカモネギをボールに納める。

「嘘だろおい、あんなに素早さ伸ばしたのに先制されるなんて」

「くく、残念だったな。もう少し強いポケモンなら勝てたかもしれないが」

「うるさい、馬鹿にするな! イーブイ、出番だ!」

 ダルマは顔を紅潮させながら5匹目を送り出した。出てきたのはイーブイだが、今日は手ぶらである。

「はっ、やっとチャンスが巡ってきたぜ。キリンリキ、こうそくいどう!」

「こっちもチャンス到来! あくびだ!」

 キリンリキは最初と同じく力を抜き、高速で移動した。他方イーブイはあくびをし、キリンリキの眠気を誘った。カラシは首をかしげながらイーブイを見つめる。

「……なんの真似かは知らねえが、悪あがきは止めとくことだ。バトンタッチ」

「……この一瞬、待ってたぜ。イーブイ、もう1度あくび!」

 ここで勝負が大きく動いた。キリンリキは現在の状況を引き継ぎ、カラシの最後の1匹であるガラガラに交代。ダルマはイーブイに再びあくびをさせた。カラシはせせら笑いをしながらキマワリを見下ろす。

「おやおや、遂に血迷ったか。ガラガラ、骨ブーメランだ」

 ガラガラは自慢の太い骨をイーブイに投げつけた。ガラガラとは思えない機敏な動きについていけず、イーブイは倒れた。ダルマは勝ち誇った顔でイーブイをボールに戻ず。

「助かったよイーブイ。これでガラガラは眠る!」

 ダルマはガラガラを指差した。ガラガラは舟を漕いでいるかと思えば、骨で体を支えて寝てしまったではないか。すかさずダルマは最後のポケモンをスタンバイする。

「キマワリ、ソーラービームだ!」

 キマワリは自らの体を焼きながら光線を発射。寝ているガラガラに逃げ場はない。一撃で地に伏せた。

「ば、馬鹿な!」

「さあ、あとはキリンリキだけ。次の1手で勝負が決まる」

「くっ、そんなことは百も承知。キリンリキ、これで最後だ!」

 カラシはガラガラを退かせ、キリンリキに全てを託した。カラシの命令にも力が入る。

「キマワリはサンパワーの特性でダメージが蓄積されている。サイコキネシスで決めろ!」

「そのくらいなら耐えられる! もう1度ソーラービーム!」

 キリンリキはキマワリを丸めて握り潰した。キマワリはこれを余裕を持って耐え、2度目のソーラービームを撃つ。光線はカラシもろとも飲み込んでいった。

「ぐぐ、がはぁっ!」










「畜生、何故だ! 何故このような素人に負けたんだ俺は!」

「……現実的な理由としては、手持ち不足かな。さすがに4匹で6匹を相手にするのは難しいよ」

 戦いの後、カラシは膝をついて地面を叩いた。ダルマはカラシに近寄り声をかけようとしたが、さえぎられた。

「言っておくが、慰めならいらないからな。お前に負けたせいで今回の報酬はなしだ。笑いたければ笑うがいいさ。さあ、笑えよ!」

「そ、それは遠慮しとくよ。なんだか、発狂するか泣きだしそうだからな。それより、まだ報酬もらってなかったのか?」

「……ああ。後払いという約束だったからな。おかげで俺は赤貧のままだ。どうせもうすぐ逮捕されて、評判も失っちまうさ」

「なるほど。ならもう1度こちら側についたらどうだ?」

 ふと、ダルマが口から漏らした言葉に、カラシは目を丸くした。それからいきらかうろたえる。

「な、何をふざけたことを。そんなこと、できるわけがないだろ」

「そうかあ? カラシががらん堂にいたのを知ってるのは俺だけだ。俺が黙っとけば大丈夫だろう。ついでに、報酬を上乗せしてもらえば良いさ。少しくらいならはずんでくれるよ。手柄なしよりはよっぽどましだろ?」

「……不思議な奴だ。さっきまで敵だった人間を平気で引き抜くなんてな」

「そんなに変か? ポケモンバトルなんかも野生のポケモンと戦って仲間にするわけだし、普通じゃないかな。それに俺達は頭数すら集まらない状況だから、いちいち気にしないよ」

 ダルマはそうまとめると、ゆっくり歩を進めだした。

「じゃ、俺はラジオ塔を調べてくるから。仲間になるならがらん堂の屋敷に行ってくれ、みんないるはずだから」

「……ちょっと待て、こいつを取っとけ」

 突然カラシはポケットから石のようなものを取り出し、次々ダルマに投げつけた。ダルマはそれらを全てキャッチする。

「こ、これはげんきのかたまりか。4個もあるけど良いのか?」

「気にするな。……上にはあの男がいる。せいぜい頑張ることだ」

「カラシ……。助かった、じゃあ行ってくるぜ」

 ダルマはそう言い残すと、ラジオ塔に突入した。夜はまだ深いが、星の明かりがダルマを照らすのであった。



・次回予告

一足先にがらん堂の屋敷へと忍び込んだドーゲンとハンサムであったが、大勢の弟子達に囲まれる。このピンチを救ったのは、あのトレーナーだった。次回、第63話「遅れてきた勇者」。おじさん達の明日はどっちだっ。



・あつあ通信vol.43

終わった、やっと連戦が一段落しました。ジョウトカントー縛り故、普段考察もしないようなポケモンばかりを起用しましたが、予想通りかなりてこずりました。あれでも、パウルさんとカラシのパーティは気に入ってるんですよ。やっつけにしては上手くできているんで。

ダメージ計算は、クロバット陽気攻撃素早振り、カモネギ陽気攻撃素早振り、イーブイ意地っ張り攻撃素早振り、ガラガラ@骨陽気攻撃素早振り、キマワリ@メガネ臆病特攻素早振り。クロバットのブレイブバードでロコンは確定1発、カモネギのフェイントと火炎放射、ブレイブバードの反動でクロバットは倒れます。カモネギはなんと最速でも調整キリンリキより遅いです。後は太陽神の独壇場。キリンリキのサイコキネシスはサンパワーのダメージを1回受けても確定で耐えるので、そのまま無双できます。

あつあ通信voL.43、編者あつあつおでん



あつあつおでん ( 2011/11/08(火) 10:00 )