大長編ポケットモンスター「逆転編」

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大長編ポケットモンスター「逆転編」
第47話「キキョウシティ解放作戦前編」
「お、ようやく見えたぞ」

 茂みの中からダルマは周囲を伺う。人はいないが、3階建ての古びた塔がたたずんでいる。ダルマはポケギアを耳に当てながら、茂みの中を移動する。

「マダツボミの塔はあったかい?」

「はい、発見しました」

「よし、それでは早速忍び込むんだ。洗脳電波の中継装置を確認したら、速やかに破壊するように。バッジは装置しているね?」

「もちろんです」

 ダルマは左胸にあるバッジに触れた。「ワ」の文字がプリントされた安物の缶バッジである。

「それから洗脳電波を妨害する電波が発信されている。くれぐれも落とさないようにね」

「了解です。ではワタルさん、行ってきます」

 ダルマはポケギアのスイッチを切ると、そそくさとマダツボミの塔に潜入するのであった。










「ここに来るのもだいぶ久々になるな」

 ダルマはマダツボミの塔の2階を歩き回っていた。無事に突入できたのか、追っ手は見当たらない。また、内部からの応戦もまるで起こらない。

「予想通り、洗脳電波に頼っているから警備が甘いな。これなら俺1人でも十分仕事できる」

 ダルマは、いつ現れるかわからないがらん堂の構成員を警戒しながらも、軽い足取りで階段を上る。また、なぜか腰も塔を支える柱のように揺れている。

 こうしてダルマは最上階に到達した。彼が辺りに目を遣ると、およそ古風な建物には似つかわしくない機械が視界に飛び込んできた。

「お、あれが中継装置かな? 不用心だな、こんなに堂々と置くなんて」

 ダルマは怪しい機械に接近し、それをまじまじと眺めた。機械は西の窓に沿って設置されており、アンテナとコンピュータの構成である。稼働中なのか、低い唸りのような音を放っている。

「それじゃ、早いとこ終わらせようか。アリゲイツ、頼む」

「ちょっと待った!」

 ダルマがアリゲイツをボールから出した、まさにその時。何者かが階段を駆け上がってきた。その人物は、足元まで届く灰色のフード付きコートを着用しており、コートの裾がたなびいている。内側に着るのは黒のワイシャツ、白のネクタイ、岩井茶のズボン、これまた黒の革靴で、右手首にはミニチュアのトランプとサイコロが付いたミサンガをはめている。

「……あのー、どちら様ですか?」

「それはこっちの台詞だ! 俺がちょっとトイレに行ってた間にこんな所まで来るとはな、やりやがるぜ」

「で、結局どちら様ですか? 人に聞く前に自分から名乗り出る。俺は学校でそう習いましたよ」

「く、くっそー。反論できねえ。……軍師リノムと申します。がらん堂の幹部として、キキョウシティの中継装置を守護しています」

「そうですか。俺はダルマ、旅のトレーナーです。早速ですが、これは壊しときますね」

 ダルマはがらん堂のリノムに一礼すると、さりげなくアリゲイツに合図を送った。アリゲイツは中継装置に水鉄砲を食らわせると、自慢のパワーで装置を持ち上げ、窓から放り投げた。数秒後、何かが地面に激突する音が響いた。

「あ、みんなの嫁が!」

「よ、嫁? あの機械が?」

「そうだ。がらん堂に従うだけでなく、『あの機械はみんなの嫁であり共有財産であり、決して傷つけてはならない』って洗脳してたんだ。ちゃんとシャニーという名前もあったのに……」

 コートの奥で体を震わせるリノムに対し、ダルマは困惑するしかなかった。至極当然の反応である。

「許さねえ。許さねえぞてめえ、嫁の仇は俺が取る! トゲチック、出番だ!」

「え、ちょっと待ってってば!」

「るせえ!」

 リノムはボールを手に取り力強く投げつけた。登場するのはカラフルなわっかの模様のある、卵の殻のような色をした鳥ポケモンだ。ダルマはすぐさま図鑑をチェックする。トゲチックはトゲピーの進化形で、癖のある特性を2つ持つ。技はそこそこあるが、特に補助技のレパートリーが光る。これを活かしたサポートが主流となっているようだ。

「なるほど、タイプはノーマルと飛行か。あまり戦いたくはないけど、仕方ない。アリゲイツ、新技のお披露目だ!」

 ダルマの指示の下、アリゲイツはトゲチックに接近した。そして右腕に冷気を発生させ、トゲチックの腹部に殴りかかった。トゲチックはその場にうずくまる。

「なんだと! どうなってんだどうなってんだ!」

「へへ。隠し玉の冷凍パンチ、大成功だ!」

「……くっそー、なめやがって。神軍師の俺の力を見ろ! トゲチック、ぜったいれいど!」

「な、なにいぃぃぃぃぃ!」


・次回予告

がらん堂幹部のリノムと戦闘を開始したダルマだったが、その常識を覆す戦略の前に終始押され気味。バトルの行方はどうなるのか。次回、第48話「キキョウシティ解放作戦後編」。ダルマの明日はどっちだっ。


・あつあ通信vol.28

最近の執筆の流れが、あつあ通信→本文→次回予告の順に固定されてきました。このコーナーで書きたいことが結構あるものでして。ちなみに、本文は流れをちょろっと書いて下書きなしでやってます。誤字が心配ですが時間短縮のためにはやむを得ません。誤字がありましたら報告お願いします。
ちなみに、岩井茶というのは黒と緑を合わせた色に少し白を混ぜたような色で、例えるなら「黒っぽい畳」です。ググれば出てきますが、良い色ですよ。


あつあ通信vol.28、編者あつあつおでん


あつあつおでん ( 2011/11/04(金) 10:56 )