大長編ポケットモンスター「逆転編」 - 大長編ポケットモンスター「逆転編」
第41話「心強き味方」

「はあっはあっ……倒しても倒してもきりがない」

 がらん堂との対決が始まって30分ほど経過した。ダルマ達は善戦を続けていたが、がらん堂の人海戦術に押されがちであった。ダルマは息切れしながらも叫ぶ。

「まだまだ、この程度じゃ終わらない! アリゲイツ、水鉄砲!」

 ダルマの相棒アリゲイツは、がらん堂の若者目がけて弾丸を撃ち続ける。たかが水と言えど、ポケモンが放つものだ。1人ずつ確実に吹き飛ばし、有刺鉄線に叩きつける。だが、いくら痛め付けても彼らは立ち上がり、ダルマ達に詰め寄る。

「くそっ、まだ動けるのか。さすがに鍛えてるな」

 ダルマは舌打ちをした。彼の耳に、徐々に苦しくなる戦況が続々と聞こえてくる。

「うわっ、おじさんのポケモン全部やられちゃったよ……」

「ぬぬぬ、このドーゲンが最後の1匹まで追い込まれるとは」

「きゃっ! 全員瀕死ですわ……」

 各員の手持ちをどんどん倒され、残ったメンバーに新たな敵が迫る。それによりまた敗退する者が現れ、また別の者に矛先が向けられる。ジリ貧を通り越してどうしようもなくなってきた。

「……言ったはずだ、多勢に無勢と。貴様もそこまでだ、チャンピオン」

「ぐぐ……まさかここまで強かったとは。がらん堂、少々侮ったな」

 発電所の入り口付近ではワタルとサバカン達の戦いが展開されていた。辺りには下っぱの山ができているが、ワタルも無傷では済まされなかったようである。既にポケモンは5匹倒され、切り札のカイリューも片膝をつく有様だ。

「だ、ダルマ様……このまま私達、負けてしまうのですか?」

「ば、馬鹿言うなよ。まだ逆転のチャンスはあるはずだ」

「それでも! まだ戦っているのはダルマ様とワタル様だけですよ……?」

 ユミは左右に目を遣った。あちこちでセキエイ陣営のメンバーが縄で縛られ、残すところダルマとユミ、ワタルのみとなった。ダルマはユミを背後に連れ、発電所の壁を背に奮闘しているが、もはや四面楚歌と言うにふさわしい状況である。

「まあ、確かにヤバいな。けど、弱音を吐くのはまだ早いよ」

「え……?」

「……コガネで俺が諦めた時、ユミは俺を鼓舞した。だから俺も言わせてもらう。まだ終わるような時間じゃねえ!」

 ダルマは目の前をアリゲイツに任せ、側面から迫るがらん堂の内側のすねにローキックをかました。痛みに悶絶するがらん堂員はその場にうずくまる。

「俺達は世間的には犯罪者。ここで捕まったって、これ以上どん底に落ちることなんてないさ。だったら、あらゆる手段で抵抗してやるよ。思い残すことがないように!」

「だ、ダルマ様……」

 ダルマは、右へ左へ大忙しに攻撃を加える。駆け付ける人数が撃退する人数より多いのでますます囲まれていくが、ダルマは抵抗を止めようとしない。

「……私だって、最後まで意地を見せます!」

 ユミは拳を握ると、勢いをつけて飛び上がり、がらん堂員の胸元を蹴った。その一撃は多数の構成員を巻き添えにした。さながら、ポケモンの技にあるとびげりのような威力だ。

「チェストー!」

 ユミの雄叫びで周囲がにわかに怖気づいた、まさにその時。近くで何かが落ちる音が鳴り響く。あまりの大きさに、全ての者が音源に注目する。

「……そこまでだ。3人がかりなれば、チャンピオンとて心得なき素人の如し」

「か、カイリュー!」

 地響きの正体は横たわるカイリューであった。ワタルはカイリューをボールに戻すと、苦虫をつぶしたかのように顔を歪ませる。

「余興は終わりだ。皆の衆、残った3人を捕らえよ」

 サバカンの号令のもと、がらん堂員は大挙してダルマ達に襲いかかった。ワタルは観念したのか、目を閉じ両手を上げた。

「ここまでか……」

 ダルマも快晴の青空を見上げた。彼は回転しながら接近する棒状の物体した。物体はぐんぐん距離を縮め、がらん堂員をなぎ払いながら地上に到達した。

「な、何が起こったんだ……?」

「ダルマ様、あれを見てください!」

 流れが掴めないダルマはもちろん、あらゆる勢力が上空を注視した。よくよくチェックすると、発電所の屋上に1人と1匹がいるではないか。各々が驚嘆の声をあげる中、1人と1匹は飛び降りた。1人は迷彩柄のズボンに真っ黒なシャツを着た少年。1匹は頭蓋骨をかぶり、中から眼を光らせている。

「あ、お前は……カラシ! それにそのガラガラ、進化したのか」

「久しぶりだな、確か……ダルマだったか。ガラガラも挨拶してるぜ」

 飛び降りた1人と1匹、カラシとガラガラはダルマに一礼した。ガラガラはそのまま、地面に刺さっている骨を回収する。

「カラシ様、どうしてこちらに? あなたはロケット団と協力していたのでは?」

「おっと、話は後だ。まずは邪魔者を蹴散らす。俺達の力をよく見ておくことだ」

 カラシは口笛を吹いた。それに呼応し、ガラガラは得意の骨ブーメランを放った。以前のように、パワー不足で飛距離が伸びないということはなく、ばっさばっさとがらん堂員に土をつける。一方カラシはブーメランの軌道を縫うように移動し、取りこぼしたがらん堂員を別の構成員目がけて投げ飛ばす。快刀乱麻とは彼のためにある言葉だと唸りたくなる手さばきで、見事下っぱの大半を地に伏せさせた。

「き、貴様は凶悪犯罪者ロケット団のカラシか! がらん堂の前に立ちはだかるとは……」

 先程まで優勢だったサバカンは、歯ぎしりしながらカラシとガラガラを睨み付ける。だが、もはやそのような威嚇に力は伴っていないのは、誰の目からも明らかだ。

「なら、俺と1試合やるか? チャンピオンを倒したとはいえ、そっちも手負いみたいだが大丈夫か?」

「……ぐ。今日のところは見逃しておこう。だが覚えておけ、がらん堂は貴様らを逃すことなからん」

「へ、おとといきやがれ」









「いやー助かったぞ少年。この年であれだけ強いとは、息子にも見習ってもらわねばな」

「父さん、それは余計なお世話だよ」

「でも、本当に助かりましたわ。ありがとうございます」

 がらん堂が撤退した後、捕縛されたセキエイ陣営を救助し、カラシとの対面を果たした。感謝の言葉にも彼は顔色1つ買えない。ダルマはそんな彼に根本的な質問をした。

「ところでさ。なぜ俺達がここにいるとわかったんだ? それと、助けた理由は?」

「……簡単なことだ。1つ、情報収集をした結果から推測しただけ。2つ、お前達セキエイ陣営に協力しようと思ったからだ」

「え、もしかして君も参加してくれるのか?」

 予想外の発言に、ワタルの声はうわずった。カラシは不敵な笑みを浮かべて言う。

「ああ。ただし、それ相応の報酬を頂く」

「なるほど。じゃあ、ポケモンリーグの出場資格なんてどうかな?」

「……中々悪くないな。では、俺は今日から正式に協力させてもらう。今から俺の活躍ぶりに舌を巻くがいいさ」

 カラシがセキエイ陣営入りを宣言すると、各人は大いに沸くのであった。ダルマ達に心強き味方が加わった瞬間である。


・次回予告

ダルマ達一行はフスベシティのポケモンセンターを奪回し、束の間の休息を楽しむ。そこで、ユミの2つのタマゴが激しく揺れるのであった。次回、第42話「新たな仲間は色違い」。ダルマの明日はどっちだっ。



・あつあ通信vol.22

最近はワタルが喋る機会が多いので、誰が主人公か自分でも度忘れしている感じです。しかし今日は久々にダルマが主人公らしい台詞で存在感を発揮できたと思います。彼は最後まで主人公の座を守り切ることはできるのでしょうか。様々な面で彼に試練が続きます。

あつあ通信vol.22、編者あつあつおでん




あつあつおでん ( 2011/11/04(金) 10:51 )