第2話「出発」
黄金色の朝日が寝呆けまなこのワカバタウンを照らしている。雲は新雪のように白く、澄み切った青色の空によく映える。この町に、ひたすら走る親子がいた。
「しかし、お前もとんでもないものを忘れるな。トレーナーにポケモンは必須だろ」
「仕方ないでしょ、昨日決めたんだから」
走っているのはダルマと父である。ダルマは青空のようなジーンズと真っ白な半袖シャツという旅らしい格好だ。
「ところで、何で父さんまで走っているの?」
「何だ、俺がいちゃ悪いか?せっかくの息子の門出なんだからな」
「よく言うよ、暇なだけでしょ」
このようなやりとりをしているうちに、2人は足を止めた。目の前には田舎町らしからぬ建物がある。表札には「ウツギ研究所」と書かれている。
「よし、入ろう」
ダルマが研究所に近づき、ドアに手を掛けた。
「ウツギ博士、おはようございます!」
「やあダルマ君、おはよう。……今日はお父さんも一緒かい?」
研究所に入ったダルマは、元気良く挨拶をした。答えたのはこの研究所の主、ウツギ博士だ。すらりとした長身で、研究者にもかかわらずそこそこの体格である。
「そうなんですよ、ウツギ博士。うちのバカ息子が急に旅をすると言い出したもので」
「へえ、遂にダルマ君も旅ですか」
ウツギ博士はゆっくりと歩き、近くの戸棚に手を伸ばした。そこには、赤と白が半々に塗られた球状の物が3個あった。
「ここに3個のモンスターボールがあるんだ。ここから君のパートナーを選んでよ、ダルマ君」
博士がモンスターボールを机に置くと、ダルマは飛び付いた。そして、首を左斜めに傾けた。
「じっくり考えると良いよ、大事なパートナーだからね」
「よし、こいつに決めた!」
数分後、ダルマは元気良く叫んだ。彼は右端のモンスターボールを掴んでいた。
「決まったみたいだね」
「で、どんなやつなんだ?」
「……それじゃ、ご対面だ。出てこい!」
ダルマは頬を緩ませながらボールを投げた。ボールは放物線を描き、光を放った。出てきたのは、青い体の半分はあるだろうあごと、背中にある紅葉色のギザギザが特徴のポケモンである。
「ワニノコだね。僕もこいつは最高のポケモンだと思うよ!」
「ありがとうウツギ博士!それとよろしく、ワニノコ」
ダルマはウツギ博士に頭を下げると、ワニノコと握手を交わした。
「……それじゃ、いよいよ出発か。やるからには、最後まで全力を尽くせよ」
父親が息子に最後の伝えると、ダルマの目に火が着いた。
「勿論!じゃあ父さん、ウツギ博士、行ってきます!」
ダルマはもう一度一礼をすると、元気よく研究所を飛び出すのであった。