大長編ポケットモンスター「逆転編」

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大長編ポケットモンスター「逆転編」
第12話「昔話の始まり」
「うう、意外と長いな……」

「情けねえなダルマ!」

「あ、ポケモンセンターが見えて来ましたよ!」

日が大きく傾く中、影法師となったダルマ一行は海の上に掛けられた橋を渡っていた。キキョウシティの南に続く32番道路は長く、午前中に出発したにもかかわらず、まだまだ道は尽きることを知らない。ダルマは息を切らし、体を揺らしながら歩いている。ゴロウとユミは、さすが若者と言わんばかりに前を行く。

そんな中、地平線の彼方に何やら見えてきた。右手の森、左手の海のどちらでもない。モンスターボールらしきものが点灯している建物がぽつんとあるのだ。

「おい、あれもしかしてポケモンセンターか?」

「モンスターボール印の看板……間違いありませんね」

ゴロウとユミは互いに確認すると、実に軽やかに走りだした。

「おいダルマ!もたもたせずに来いよ!」

「ま、待ってくれ〜」

ゴロウが20メートルほど離れたところから叫ぶと、ダルマはしおれた声で答えた。腹の鳴る音と共に。





ポケモンセンターは全てのトレーナーが利用できる施設である。ポケモンの治療、宿泊、食事など、ここだけで大抵のことができる。それゆえ利用者が多く、街の中心地に建てられる。近頃は地下にバトルのスペースが設けられ、バトル講座なるものも開催されているようだ。

そんなポケモンセンターのロビーにある談話室に、ダルマ達はいた。ダルマは水を飲み、ゴロウはナナの実ジュースで喉を鳴らす。ユミはフエンせんべいとお茶でまったりしている。

「ふう……生き返る」

「おいおい、そんなんじゃポケモンリーグなんて夢のまた夢だぞ!」

「そんなこと言われてもなあ」

ダルマは目線をゴロウから逸らし、窓の外を見た。所々に雲が流れている中、月が弱々しく光っている。もっとも、まだ完全に日が暮れていないからなのだが。

「にしてもここ、今日は俺達しかいないのか?」

「みたいですね」

「まともな道があるのにわざわざ洞窟通る物好きなんていねえからな」

現在、このポケモンセンターにはダルマ達のほか、従業員しかいない。その従業員らも、テレビを見たり本を読んだりしている。そのため、今なら呼吸の音も聞き取れそうだ。

「で、明日はどうするんだ?ダルマ」

「そうだな……ん?」

突然、ポケモンセンターのドアが開いた。そして1人の男が入って来た。男は初め周囲を見回し、それからダルマ達に近づいた。

「おい、あんた達は旅のトレーナーか?」

「そうですけど……どちら様ですか?」

「おっと失礼。俺はサトウキビという者だ、よろしく頼む」

男サトウキビは頭を下げた。彼の身なりは3人の視線を浴びた。藍染めの着流しは所々ほつれている。輝く太陽のような白さの帯も同じような状態だ。足にはわらじを履き、着流しの中から見える胸にはさらしが巻いてある。頭には丈の短い烏帽子を被っている。体には無駄な贅肉が微塵も見受けられない。だが、彼らが最も目を奪われたものは、他にあった。

「ところでおっさん、なんで夜なのにサングラスなんかかけてんだ?」

ゴロウが注目したもの、それは顔にあった。ゴロウは眼鏡と評したが、形はお月様のようだ。レンズは黒く塗られており、奥底に潜む目は見えない。

「おいゴロウ、失礼だぞ!」

「俺は構わねえよ、少年。ところで、名前を教えてもらえるか?」

「名前ですか?俺はダルマです」

「ユミと申します」

「ゴロウだ、よろしくな!」

「ああ、よろしく」

サトウキビは近くにあったソファに座った。そしてこう尋ねた。

「お前達は旅の途中みたいだが、このポケモンセンターを使うとは珍しいな?」

「そうでしょうね。キキョウシティからすぐコガネシティやエンジュシティに行ける道がありますから」

「けど、俺達は物見遊山の旅をしてるわけじゃないんだぜ」

「端から見れば、こんな所に来る方がよほど物見遊山に見えるけどね」

ダルマの一言でゴロウの話が止まった。しかし、そんなことはお構い無く話は続く。

「ではいわゆるポケモン修行か?」

「そんなところです」

「そうか。やはり皆それぞれきっかけはあるのだろう。よければ話してくれないか?」

サトウキビはダルマの方へ顔を向けた。それにゴロウとユミも続いた。

「じゃあ、俺から話すよ」

「待ってました!」

「よし、では頼むぜ」

ダルマは残りの水を一気に飲み干すと、口を開き始めるのであった。



あつあつおでん ( 2011/10/31(月) 09:14 )