からをやぶるの罠
これは、今となっては昔の話だが、ハンテールという地味なポケモンがいた。なぜ地味かといえば、単純に弱いのと、分岐進化のサクラビスや進化前のパールルが目立っていたからである。
ところが、そんなハンテールにも遂に好機が巡ってきた。なんと、非常に強力な「からをやぶる」を習得したのだ。喜んだハンテールは、早速幼馴染のサクラビスを呼んでバトルをすることにした。
「へっへっへ、やっと俺がお前に勝つ時が来たぜ、サクラビス」
「あら。確か、からをやぶるを使えるようになったのよね。もちろん私も使えるけどね」
「な、なんだと! えーい、それでも勝つのは俺だ! いくぜ、からをや……あ、あれ?」
ハンテールは体中に力を入れた。ところが、何も変わった様子はない。よくある「大した変化はないけど格段に強化されている」という展開でもない。ハンテールは訳が分からない様子だ。
「な、なぜだ! からがやぶれないなんて……」
「うーん、もしかしたら『やぶるからがない』から失敗したのかもね。じゃあ今度は私の番、ちょっと恥ずかしいけど……えいっ!」
「おおおおおおおおお!」
サクラビスは貝殻のようなひれをぱりんとやぶり、はたから見ても分かるくらいに能力が上昇した。ハンテールは思わず鼻血を噴出する。
「それじゃ、これで終わりよ。めざめるパワー(草)!」
サクラビスは有無も言わせず攻撃し、ハンテールを吹き飛ばしてしまうのであった。
自分のことはよく知っておきたいものである。
お題:ハンテールで書いてみた。正直、ここまでネタの湧いてこないポケモンも久しぶりです。ネオラントも書いてみたいけど、いじる部分が少なすぎる。これらを見ると、まだ唯一王は恵まれている。
ちなみに、ハンテールが「からをやぶる」を使っても失敗することはありません。