01
時をさかのぼること約2年……。
ある夏の日の朝、鶴姫は浜辺で大きく伸びをした。深呼吸をすると、心地よい潮の香りが体中に広がっていく。
「…う〜〜〜〜〜ん!!やっぱり、朝は気持ちがいいです!」
そう言ってほほえんだ彼女…鶴姫は、この島の姫でありながら巫女
でもあるという元気な少女。さらにイクサが絶えないこの世の中、自ら島のポケモン水軍を率いているという勇敢な一面ももちあわせている。
明るくて、かっこ良くて、誰からも好かれる……。そんな姫様だ。
見渡せば一面の青い海にタマンタが跳ねているのが見え、すみきった空にはキャモメがゆうゆうと飛んでいた。
毎朝のように見るいつもの光景をゆっくり眺めていると、鶴姫の元にポケモンが駆け寄ってきた。ヘイガニとマリルだ。
「おはようございます〜。今日もいい1日になりそうですね!!」
彼女の笑顔とは裏腹に、二匹はうかない顔をしている。
「リル…」
「ヘイ、ヘイ…!」
何か言いたげに島の中心部の方向を指さした。
「??」
どういうことかと首をかしげていると…
「姫巫女様ぁぁ〜!!!!!!」
誰か走ってきた。……兵士だ。パートナーのニョロボンを連れている。
兵士は鶴姫の前で止まると、上がった息をととのえて報告した。
「………また、です。またイタズラされました!!」
「そんなっ!!」
ヘイガニとマリルもコクコク頷く。どうやら、それを伝えようと来てくれたらしい。
鶴姫は「ありがとうございます」と二匹に呟くと、急いで言った。
「案内してください!!」
……そう、今島でイタズラ…盗難事件が多発している。物の種類は食べ物から宝物までさまざま。犯人もまだ不明で、分かっているのは『青いポケモン』だということのみ。この島に住む人間もポケモンも皆迷惑していた。犯人を捕まえるためさまざまな工夫やトラップを仕掛けるものの見事に回避し、あっという間に犯行におよぶため捕まらなかったのである。
鶴姫一行がようやく現場である神社の書庫へたどり着いた。
中はきれいにならべてあったはずの巻物や書物が床にころがり、唯一そのままだった書棚に三冊分ほどの隙間が空いていた。
「もうまったくっ!!誰なんですか一体っ!!」
怒りながらも書物を拾い始めた鶴姫達のようすを、物陰からうかがう者が一匹……。
その事を彼女らは知るよしもなかった。