ポケモン不思議のダンジョン  Destiny story






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第4部 Teravolt 〜龍魂〜
47 ベルディオ・デルピエロ
隠密な作戦というのは、闇に染まり、月が照らす夜に決行するのが様になる。
だが、どうやら闇に隠れず極秘作戦を働くやからもいるようだ。




 流砂の洞窟から一度視点を移そう。場所は北の砂漠からそう遠くはない場所にあるダンジョン『神秘の森』。
どうやら時の歯車を追う者はプクリンのギルドだけではないようだ。

「はっはっは...それでそのザマか。らしくねーなぁ」
「不意打ちってのは怖いな。あんなところから来るとぁ思わなかった」


木洩れ陽に淡く照らされながら寝そべる1人の男。それを見て酔った中年の如く高らかに嗤うもう1人の男。前者にはどこか威厳を感じる低い声、左目と右肩に痛々しい傷が残されている。だが、左目の傷は古傷のようだ。

「しかし驚いたな...どうやら俺らの予想よりも早く奴らの『殲滅計画』は進んでいるようだ」
「あのデブ幽霊ヤローだけだと思い込んだのが甘かったよーやなぁ。ま、後は任せんしゃい」

無傷の男はそういうと、傷を負ったポケモンに背を向けた。

「どこに行く」
「流砂の洞窟や。あんたの代わりに時の歯車取るくらい、朝飯前じゃて。心身休めて待っとき...ベルディオ」

男は神秘の森から立ち去った。残された男は、立ち去って行く友の姿を見届けると、やがて仰向けになった。

「...ルシャ、お前は今どこにいるんだ?」













 葉の隙間から零れる陽ざし。自らの意識を重くなっていく瞼に任せ、やがて男は眠りについた________
















「ベルディオ...」
「そいつが、時の歯車を盗み続ける奴の名前なのね...」
「正しい名は『ベルディオ・デルピエロ』。あんたら名前もわからんやつを指名手配にしてたの?」
「いや、警察の捜査が無能で」
「こらそこ。保安官に文句言わない」

今まで時の歯車を盗み、世を混乱に陥れている奴の名がアリスによって明らかになった。

「しかしよ、目的はなんだ?時を止めることに目的があるのか?それとも時の歯車を集めて何かに使うのか?」

やや強い口調で俺が問い詰めると、アリスはしばらく黙り込んだ。また、何かとんでもねーことを言うんだろうとでも思ったが________

「さぁねぇ」
「...今の返事はホントに知らないととろう。別に疑う理由もねーし」
「やっと私を信じるようになってきたかい?でも、そんな恐い顔しなくなったら100点ね。それに、あそこ行こうか?」

アリスが指した先には、一片の小さな光があった。あそこが出口、もしくは大広間への入口だと予想した。

「行くか。あそこが中間地点...それか最奥部だ」






洞窟の暗闇に慣れた眼にはやや眩しい場所だったが、すぐに慣れた。道のりは狭い路が続いたが、この場所は、それが嘘のようにとても広い空間だった。
そして、そこには。

「うわぁ!ひっろい湖だよこれぇ!」
「ミラノ...探検の欲求はわかるがもうちょい抑えろ...さて、問題の時の歯車だが」
「流砂の先にある空洞に広がる湖...ですかぁ。いいですねぇ。探検家として最高の気分ね♪」

たしか、霧の湖の時、時の歯車は萌黄色の光を放っていた。此処に時の歯車があるとすれば、同じ萌黄色。もしくは同じ淡さと明るさの赤や青...か。

「あれ?あそこに緑色の光...って!あれがもしかして?」

気づくのはミラノが一歩早かった。湖の中央に、緑色の光がドーム状に輝いている。

「不思議だな。光ってふつー空間全体に拡散されていくもんだが...あそこだけドーム状に光るなんてな」
「ねえ!もうちょっと近づいて見てみようよ!」

ミラノにそう急かされて水際に近づいた、その時。辺りが暗くなった。

「わわ!?き、急に暗く...」
「誰!?時の歯車に近づくものは、私が許さない!!」

空間全体から高い女性の声が届いた。誰だと言おうとしたその先に、声の主が湖から飛び出した。その姿は。

(な?ユクシーだと!?いや、違う。あいつは頭部が黄色だった。こいつは赤色、同系のポケモンか!)
「私の名はエムリット!お前ら、時の歯車を盗みに来たのだろ!帰れ!!」
「え!?い、いや別に盗みに来たわけじゃ...」
「問答無用だ!消えぬなら消すのみ!喰らえ!」

そういうと、エムリットは胸の前で手を合わせた。光の分子がエムリットの周りに現れ、やがて粒がその両手に溜まっていく。

(まずい!)
「『スピードスター・滅』!!」

そこらへんのポケモンとは比べ物にならないほど強力な『スピードスター』 が放たれた。光の束が俺たちを襲う。

「ぐぅ...!」

巻き起こる砂塵。水際といえど、地形はダンジョン内と変わらない。
だが、妙に思った。

「うぅ...あれ?ダメージがない...」

やがて、砂塵が晴れる。その先にいたのは、アリス。

「アリス!俺たちを庇って...」
「はぁ?庇っただなんて、まるで死んだような言い方されちゃ、困りますけど」
「今のがノーダメージとでも?その大口しまったらどうかしら」
「効きもしない。これじゃ道中のスコルピに刺された虫刺されも掻けないわ」

『防いだ』?エムリットの気の荒れようからして、今の攻撃は決して小手調べではなかったはずだ。

「そーいえば、あんたたちに化身と変身を教えたけど、私の能力はまだ教えてなかったわね。ちょーどいいわ。教えてあげる、これが私の能力...」



















「解放、『司祭者(プラヴィーティリ)』」


アリス・ルファウナ・デルタ。ベールに包まれた女が、遂に殺意を現す。






■筆者メッセージ
プラヴィーティリ は 司祭者 の訳語ではないです。
でも、こまけぇこたぁいいんだよね。きっと
アサシオ ( 2018/12/08(土) 22:41 )