ポケモン不思議のダンジョン  Destiny story






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第4部 Teravolt 〜龍魂〜
46 化身と変身





北の砂漠においては、視界を遮り肌に刺さる砂嵐が厄介だったが、俺達が今居る場所は洞窟。2日続けて砂嵐の中を歩んだ俺たちにとって、悪天候が無いことが恵まれてるように思えた。

「積もる話、なんでアリスは今日俺たちのところに来たんだ?」
「気になるかい?特に隠すことでもないけど、気になるなら話してもいいわよ」

洞窟の中は、暗く、声がよく響く。
元々、今日は最初から北の砂漠に来る予定だった。そこにアリスが訪ねてきた。探検の同行はあちらから求めてきたのだ。その理由を俺は知りたかった。

「話してくれよ。同行の理由は依頼の中には必須だ」
「いいわ。ちょっと前の話だけど、エレキ平原のライボルトとの戦い、私は見ていたわ。あの時ライボルトによってミラノが倒れ、あなたは激昴した。それは覚えてる?」
「ああ」
「...そこから先は?」

そこから先。聞かれてみて思い出そうとしたが、思い出せない。ミラノが倒れた後にある記憶は、力なく横たわるライボルト。取り巻きのラクライも、リーダーが倒されたのを見て、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。その間の記憶は、無い。

「その神妙な顔だと、思い出せないようだね。自我を崩壊させるほどの力を君は発動した。ミラノも倒れていたから見ていない。貴方は記憶にない。覚醒の瞬間を観たのは、私と、対峙していたライボルトの2人だけよ」
「私が倒れてた時?」
「仲間が倒れたら怒るのは当然でしょ?でも、あの時怒りによってルシャの奥底に眠る力が一瞬表に顔を見せた。覚えてるかどうか、1つ聞くわ。戦いが終わったあと、そのライボルトの容姿を貴方は見た?」

戦いが終わったあと。たしか倒れるライボルトに何か捨て台詞を吐いた。そのあと、アリスが俺の前に現れ、何か意味深な言葉を言ってそのままどこかに去っていった。ここあたりで、最初の目的を思い出して水のフロートを回収した。
ライボルトの容姿。捨て台詞を吐いた時に見ている。その姿は。

「...胴体に俺の顔くらいの丸い焼け跡が1つ」
「その傷跡、何を意味しているか分かるかしら?」
「どういう意味だ?」
「貴方が焼け跡をつけるような攻撃は、電撃しかない。炎は使えないでしょ?それに、その跡は1つ。そしてライボルトの特性は『避雷針』わかるかしら?避雷針を無視して一撃で倒したのよ」
「________!」
「その自らの身に覚えがないほどの強力な力の正体...教えてあげるわ。貴方の内なる力、『化身』と呼ばれる力。そして化身の能力を発動したあなたの状態を『テラボルテージ』という」

_____化身______テラボルテージ_____
どちらもあの時、アリスの口から聞いた言葉だ。でもあの時はアリスに対する警戒心と水のフロートのことが頭にあって、その言葉がその時は引っかからなかった。

「『化身』とは、伝説のポケモンが乗り移ったかのように極限に戦闘能力が跳ね上がる能力。あなたの化身は恐らく『雷竜・ゼクロム』。ゼクロムの能力は、『相手の特性を無効化する』。あなたがライボルトの避雷針を無視して攻撃できたのは、ゼクロムの『テラボルテージ』の力よ」
「ゼクロム...聞いたことないな。」
「戦闘の記憶がないのは、単純に貴方が未熟ってだけ。己を鍛えればゼクロムの力をコントロールできる」
「俺が、強くなる...のか。」

そういえばムーンの時も、今思えば化身の力だったのだろう。でも、ライボルトの時も、ムーンの時も、発動というよりは暴発したような感じだった。

「そして、ミラノ。あなたもよ」
「へっ?あ、あたしですか?」
「あなたも使える能力があるわ。トランスフォーム...っていえば聞こえはいいけど、変身ってやつ」

そう言ってアリスはバッグから7色の真珠のような物を取り出した。大きさは片手で包めるくらいの小さなもの。暗い洞窟をその石が淡く照らす。ミラノはその石をまじまじと見つめた。こういう宝物みたいなものには目がないんだよな、こいつ。

「『進化の輝石』っていう宝石。自分の進化系のポケモンに変身することができる石よ。これを貴女にあげるわ」
「へぇっ!?貰っちゃっていいんですか?」
「いいわよ。あたしはもう最終進化系のポケモン。持ってても意味無いわ。それに、よーく考えてね。イーブイという種族は何種類もの進化ができる。でも、変身できるのは一種類だけよ。一度変身先を決めたら、もう他の進化先のポケモンには変身できないよ。まあ、今決めなくてもいいけどね」
(そんな便利な道具があるんだなー...)

横から聴きながらそう思った。店で売ってそうなものにも見えないし、本当に探検家として手に入れた宝物なんだろう。

「さ、行くわよ。ルシャは化身を制御できるようになること、ミラノは変身先のポケモンを決めておくことね」
「はーい...って、今回の同行の目的は、俺たちにそれを教えるためか?」
「それも兼ねて時の歯車の探索。目的を果たすまで同行させてもらうわ」

洞窟は暗く、声がよく響く。時の歯車を求めて、俺達は先へと進む。















そういえば、俺とミラノもそこそこ強くなっている。タイプ相性が悪いが、今回はジュアに頼らず強引に突破できているの理由だ。


アリスが化身、進化の輝石のことなど、探検家として知識と経験があるのはよくわかった。


でも





俺達はまだ一度もアリス本人が戦うところを見ていない。





■筆者メッセージ
進化の輝石の効果が本来と違いますが、小説のオリジナル要素ってことで。
アサシオ ( 2018/12/02(日) 18:26 )