39 ラクライ
【特性:ひらいしん…電気タイプの技を全て自分に呼び込み、無効化する】
自分の電気技が封じられることがしばしば。道中に度々現れるラクライのその特性は、予想以上に自分たちにハンデとなった。
ダンジョン名にエレキが入るだけあって、電気タイプのポケモンが非常に多い。ラクライのほかにも、プラスル、マイナン、エレキッド系統etc。俺へのダメージは半減だが、俺の電撃も半減。まあ、ミラノがいれば楽なんだけどさ。
トレジャータウンに寄らなかったのが間違いだった。楽勝の依頼をこなすテンションだったので、特に万全の準備をしたわけじゃない。もっと、楽に探索できたのにと軽く後悔。
敵ポケモンのレベルが上がっている。少なくとも、遠征の時に戦ったポケモンたちよりも強い。技の一撃一撃が重いというか…半減できるタイプなのが幸いだが、ミラノへのダメージが大きい。オレンの実がどんどん消費され、気づけば…あと5個。
「幸い、PPマックスはたくさんあるわ」
「無駄な戦闘は避けよう。レベル上げは他のダンジョンでもできる…とにかく、省エネ。それだけ」
「らじゃー隊長」
そういえば、探検『隊』なんだから俺は隊長という立場であるんだよな。リーダーの自覚なんて全くないんだが…人数増えることなんてあるのかな?その時はリーダーとして大変になりそうだなぁ。
「ガルルルル!!」
「あー…もう。ラクライお前出てくるなよ」
そう言いながらも、分足らずで倒す。遠征から気になっていたが、ミラノが強くなっている気がする。体当たりの威力はともかく、立ち回りが非常に上手い。電気タイプは俊敏なポケモンが多いが…ミラノはそれを上回る速さと判断力で、敵の隙を突いていく。
それに…気になることが一つ。
「ミラノ。ラクライを見たら教えてくれ。ちょっと…あの種族に関して気になることがある」
「気になること?…別に、いいけど」
他の電気ポケモンではなく、なぜラクライ限定なのか。それは後に知ることになるであろう。
俺たちは、さらに奥へと進んでいく_________
「へぇ〜…そんなことが。それで今ギャラクシーの2人はエレキ平原に…」
「はい。(あの2人ギャラクシーっていう探検家なのかぁ。初耳だ)」
場は変わってトレジャータウン。エイケとバショウと話すのはマリナとリル。日は高く、暑い。探検家は皆ダンジョンへと出向いてるので、商店は今静かだ。
そこへイーブルがやってきた。
「おや、みなさんお揃いで」
「あらイーブルさん!今朝話していたこと、覚えてます?」
「ええ。水のフロートですよね。確か海岸に」
「そうなんです。でも、実はこんなことに…」
ついにいらっしゃいませも言わなくなったバショウ。
今朝話したことについて、マリナがイーブルに説明した。水のフロートは海岸にあると聞いたが、あったのは手紙。水のフロートを何者か
(ドクローズ)に隠され、それを今ギャラクシーの2人が代わりに取りに行っている、と。
「ほう…大分責任感の強いといいますか、立派なお2人さんで。で、その2人は今どこへ?」
「エレキ平原です」
マリナが笑顔でそう答えると、イーブルの顔色が一変した。
「え?エレキ平原!?確か、この時期は…」
視線をそらし、何かを思い出そうと眉を歪める。そして思い出したかのように、はっと視線を戻し、こう言った。
「このままでは、2人が危ない!!」
そう焦りが混じった言葉を言い残し、呆気にとられる4人を残して、エレキ平原へと向かっていった。
『エレキ平原』という名の割には、地形だけみればただの平原である。やや、草が少な目でごつごつした岩が多い。
しかし、俺たちが辿り着いた場所は、これまでと違う。雷の音が強く鳴り響く。おそらく、これまでいた電気ポケモンたちが起こしている雷ではない。
おそらくは_________1人。
磁場でもあるわけでもないこんな荒れた土地に電気ポケモンが住み着く、その理由がわかった。
「ボスか。お前が」
「…我はライボルト。この土地の、ラクライ一族のリーダーだ」
リンゴ片手に睨み付ける先は、おそらく10匹はいるだろうラクライ。それに囲まれるように立つ、ラクライの進化系、ライボルト。
「腹減ってるんだ。速攻で行くぜ…!」
ザッ…!
土を蹴り、突っ込んだ。
ここで話は数分前に遡る_______