22 意外と繊細な悪だくみ
ぶつけようのない怒りと、今日の探検の疲れが自分に溜まっていた。両腕に力が入りながら、俺たちは弟子部屋で、あることをしていた。
1時間前…
「はぁあ!?たった1個しか取ってこれなかったのかい!?」
「…ああ。これが俺たちの今日の成果だ」
リンゴの森からの帰還後、直ぐにペルへの結果報告だった。どうせドクローズに邪魔されたと言い訳しても絶対に聞くはずがない。ペルはドクローズを何故か信頼しているので、あいつらが邪魔者の立場になったと言おうが、否定してくるのは目に見えている。だが、一応事実は言っておくことにした。
「…理由か言い訳かどうかはそちらの判断次第だが、ドクローズの邪魔が入ったんだ。それで」
「言い訳だな。私はドクローズにも食料調達の依頼を頼んでた。それでセカイイチを巡って対立していたのは目に見えている」
「…ドクローズにも依頼出してたわけ」
これも完全にドクローズの策ということが見え見えだった。しかし、言い返せずにさらにいら立ちは溜まっていく。
「とにもかくにも、お前らの今日の依頼の失敗にドクローズが関連していることは認めてやろう。しかし、親方様はあの3人を気に入っておられる。
たかが新人のお前らが親方様からの信頼が厚い者から邪魔を受けたという反論をしても通るはずがないだろう」
正論がゆえに、言い返す言葉がさらになくなった。しかも、あまりに自信に満ちた口調で言うものだから、怒りに加えて呆れという感情が生まれた。
「…まあ、ゼロではないということは許してやろう。しかかし、失敗は失敗だ。特別に親方様への報告はなしにしてやろう。
だが、今日の夕食は抜きだ。部屋で今日の依頼を成功させきれなかったことを反省しておけ」
吐き捨てるようにそう言われた。
弟子部屋では、何か不穏な空気が小さな空間を埋め尽くす。
「はぁ〜…」
ミラノが大きなため息をつく。
これがギルドに入って初めての依頼失敗。
しかも、遠征メンバー選出が大きく遠のいたのである。特に大きな収穫もなかったし、今日はある意味最悪な日であるかもしれない。
「...まあ、期日はまだある。明日から挽回するぞ」
「...うん」
力ない言葉でミラノは返した。
明日もがんばろう。特に考え込むことなく、俺たちはバッグに入っていた食料を食べていた。
「...生きているのか!?ルシャ・バークスが、この世界で!?」
既に時は深夜。暗い森の中、何者かがそう叫んだ。その心情に伴うかのように、突風と共に草花が鳴いた。
「...そこまで驚くことか?別に生きている可能性は低くはなかったが」
「...アイツの場所は特定できていないのか?」
「まだだな。だが、リンゴの森やトゲトゲ山に奴の痕跡が残っていることから、間違いなくアイツはこの大陸のどこかに、いる」
謎の男2人の会話は、理解が難しい内容だった。焦るようにして問いかける男。それに淡々と答えるもう一人の男。対象的な2人の会話は、夜の暗い森をざわめかせている。
「...身元の確認はまだなのか?せめて目撃例でも…! 」
「そう焦るな。それについては調査団の数名が既に調査に乗り出している。痕跡の発見からまだ日が浅いことから、まだそう遠くにいない…俺はそう考えるが」
「...急いでくれ!一刻を争うんだ! 」
それで会話の最後となった。
2人は互いに別々の道へと歩いていく。