ポケモン不思議のダンジョン  Destiny story






小説トップ
第1部 予知夢
18 再会=感動的とは限らない
「さァー、今日も張り切っていくよォーー!!」
『おおーーーっ!!!』

 ペルが声を張り上げ、眠気が残る弟子たちの士気を高める。この朝礼も、そろそろ慣れてきた。
 そして、いつも通りみな散っていく。

「…よし、今日は朝礼全部言えたぞ」
「そうだったんだ。私一昨日で全部覚えたけどな…」


 記憶力の差である。そういえば、ミラノはギルドに入る前からこういうの知ってると思ってたんだけど。

 今日は依頼何をやろうか。そんな話をしながら、俺たちは地下1階へと上っていった。
 
 今日の俺たちのヤル気はいつもより上がっている。というより皆ヤル気が格段に上がっている。というのも、親方が近々ギルドを挙げて遠征へ繰り出そうと考えているらしいのだ。
 その遠征メンバーは、優秀な弟子を数名選抜し、未開の場所の開拓へ乗り出すらしい。もちろん、選抜されればそれなりに親方からの評価をもらっているということが証明されるが、未開の場所の開拓という探検隊魂が燃え上がるような目的のため、みんなペルや親方に認められたい。その一心で仕事に励んでいるのだ。

 俺たちはというと、初依頼でいきなりBランクのお尋ね者を討伐。その翌日の依頼では同じくBランクだったムーンを苦しみながらも逮捕。そして先日の滝壺の洞窟をノーミスで制覇したことで、俺たちの評価はうなぎ登りなのである。
 ここが踏ん張りどころ。決定打になるようなことを成し遂げれば、遠征メンバーへの抜擢はほぼ確実となる。それは俺とミラノもわかっていることだった。

「よしっ!今日も頑張ろうね!」

 ミラノのヤル気はいつもとは全然違う。跳ねるような足取りで、依頼掲示板へとむかった。しかし、そこはいつもと違った。

(ん…?)
「あれ?あの2人…」

 依頼掲示板の前には、どこかで見たことがある『ドガース』と『ズバット』が居た。ミラノの声に気付き、その2人も俺たちを振り向く。

「「「ああーーーーッ!?あの時の!?」」」

 どこぞのアニメのように声がハモる。もちろん、今の三者はズバットとドガースとミラノである。

「なんでお前らがここに!?」
「それはこっちのセリフだ!どうしてあんた達が掲示板の前に立ってるの!?」

 珍しく強気なミラノ。混乱と驚きが彼女にそう言わせているのかもしれないのだが。しかし、ドガースが威張り腐った口調で威圧する。

「ケッ。俺たちは探検家なんだぜ。探検家が掲示板の前に居て、何が悪いんだよ?それこそ、お前らもどうして此処に居るんだ?」

 ミラノは前に会った時に言われたセリフを思い出し、耳が垂れ下がった。俺もそのセリフを思い出した。

「私たちも一流の探検家になりたくて、それでこのギルドで修業してるんだよ」
「はぁ〜!?」
「お前が探検隊〜!?」

 言い方がわざとらしすぎて、見てるこっちまでイラついてきた。一声あげようとしたが、ズバットとドガースが顔を見合わせて頷き、急にミラノを壁際へと押し込んだ。

「イタッ!?」
「おい、悪いことは言わねえ。探検隊は諦めろ」
「な、なんでっ!?」
「だって、お前弱虫じゃねえか。臆病で勇気もない弱虫君が、探検隊は無理だぜ」

 歯に衣を着せることなく、2人は容赦なくミラノに悪口を放ち続ける。

「でもっ、それを克服するために修業頑張っているんだもん!それに、最近は遠征メンバーに選ばれるように、頑張っているんだよ!」
「ほお?遠征があるんだな」

 この2人はギルドが遠征を予定しているということは知らなかった。ということは他の探検家もこのことを知るやつは居ないだろう。というか、如何にも悪だくみが得意そうな奴らにこんなこと言って、大丈夫なのかよ…

「でも、選抜メンバーで行くんだろ?結局は実力だよ じ・つ・りょ・く」

 嫌味が上手すぎる。第三者の自分でさえめちゃくちゃイラついてる。それに負けじと、ミラノが対抗していく。
 てか、実力とか言うけどてめーらおれ一人にボロ負けしたろ。

「実力とか言ってるけどさ、お前たちは私たちにやられるほど弱かったじゃんか!」
「へっ、それは兄貴がいなかったからだ」
「あ、兄貴?」

 ここで初めて、この会話の中で疑問符が浮かんだ。この2人より格上の存在がいるということだ。
 絶対意地クソ悪い奴なんだろうなー。

「おっ!噂をすればこのにおい!」
「…におい?」
「へへっ。兄貴のお出ましだぜ」

 急に梯子から妙な雰囲気を感じた。視線をそこへ向けてみると、地上へと出る梯子から、何かがのっしのっしと下りてきた。
 俺はそいつをぐっと睨み付けていた。しかし、そいつは俺の目の前に歩いて来て…

「おい、どけ。邪魔だわれ!!」

 そう言って俺に尻を向けてきた。

「っ!?」

 俺は瞬時に鼻を手でふさいだ。予想通り、その尻から、屁を超越した何かが俺に向かって噴射された。その臭いのすごいこと。鼻も塞いで息も止めたから臭いは別になんともなかったが、目に染みて少し涙が出てきた。

「ルシャッ!…ん!?何この匂い…」
 その屁は十数秒で収まったが、俺がようやく気管を開けてもまだ臭っていることから、何事にも例えがたい物凄い屁だったことを今更知った。

「…なんだ?お前もやられたいのか?」
「…ううっ…」
(別に俺はやられたというわけじゃないんだがな)

 怖い顔つきで脅され、悔しながらも渋々退くミラノ。いきなり出てきて何をするかと思えばこれである。そんな『スカタンク』を阿保2人が笑顔で迎える。

「さっすが兄貴ー!」
「やっぱネブド兄貴はつえーや!」

 虎の威を借る狐共である。まともに戦ったらコテンパンにやられるくせに。

「それよりお前ら。何か面白い仕事はないのか?」
「いや、それがどこもセコイ依頼ばかりで…」

 てめえらがセコイとか言うんじゃねえ。
 どうせ、金目当ての仕事というのは見え見えだ。どうせ高ランクの指名手配なんぞお前らに捕まえられるか。

「でも、それより…」

 ズバットが耳打ちをする。どうせ遠征があるという話だろう。それに割り込んで何か悪さを企んでいるのも見え見えである。

「ほぅお?いい話じゃないか」
「「でぇっしょぉ〜?」」
「よし、帰って作戦会議だ」

 ネブドが先頭となり、そのまま3人は帰っていった。3人のうち、誰も依頼が書かれた紙を持ってなかったので、結局依頼を取らずに帰っていった。

「…大丈夫?ルシャ?」
「大丈夫も何も!いきなり初対面の奴に屁を浴びせるとか、俺はぜってぇあいつを許さん!いつかこの手でぶちのめす!!」
「い、いつになく怒ってるね…もう関わりたくないような奴らだよ」

 ただいま怒り100%。ミラノから俺を見ると、きっと赤く燃え盛るオーラが俺を包んでいることだろう。
 まあ二度と関わりたくはない。でも、それよりは仕返しに1発ぶっ飛ばして、それでスッキリして終わりたいというのが本音だ。
 

 あーもう。あの3匹思い出したら本当にイライラする。朝から最悪な気持ちで掲示板の依頼を眺める。

『掲示板の更新をします!危ないので下がってください!』
「うるせえ!下がんねえぞ俺は!!」
「下がってよバカ!」




























 


アサシオ ( 2016/03/29(火) 20:47 )