14 滝壺の洞窟 探索
「…」
「…」
まず、この状況を視覚と聴覚で感じたことで説明しよう。まず、耳を塞ぎたくなるような物凄い轟音。車造ってる工場の見学に来たわけじゃあるまいし。そして、目の前には降り注ぐ、いや。墜ちてくる大量の水。上を見ても水源は遥か上にある。
「…ホントにここを調査しろというのか」
トレジャータウンを出て10分ほど歩いた。目の前に立ちはだかる巨大な滝は、俺とミラノのやる気を完全に喪失させた。
トレジャータウンでは生き生きしていたミラノも生きた心地がしないような顔をしている。
「…まずは言われた通り調査を開始しないとな。まずはこの滝の…」
そう言いながら、興味本位で滝の流れに指一本触れてみた。すると、拒絶反応が起こったかのように、物凄い激痛が指を伝わり全身へと伝わり、いつの間にか俺は尻もちをついていた。
「…痛ぁ…この水流半端じゃねえな。お前も触ってみろよ」
「へぇっ!?」
「いいから触れって!!」
「いやだいやだ!ちょっと待って!!」
悪戯心が働き、ミラノの前足を掴んで強引に滝に近づける。それに必死に抵抗するミラノ。
「なんで痛いってわかってて触らなきゃいけないのさ!?」
「いいから触れって!これも冒険の一種だ!」
「ただの無謀じゃん!」
珍しくミラノがツッコむ。このやり取りはしばらく続いた。そろそろ嫌がってきたので、少し手の力を弱めようとすると―――
(…なんだ…?)
リンゴを触った時と同じ感覚に襲われた。急にめまいが起こり、全身の力が抜け、俺はそのまま地面に倒れた。
(…あれ?ここって…)
気が付けば、さっきと同じ滝の前に来ていた。ミラノは居ない。代わりに、黒く丸い影のような物体が目の前に居た。
影は滝へと近づき、何かを伺った。そして再び後ろに下がり、何をするのかと思えば、滝へと突っ込んでいった。
死んだな。そう思っていると、滝の音が急に弱まり、何故か滝の向こう側から足音が聞こえた。
(…滝の裏側に空洞があるのか。あの足音が影のものならば…)
目の前が真っ白になり現実へと戻った。
「…はっ」
「いてっ」
がばっと起き、今まで俺の体を揺さぶっていたミラノにぶつかった。
「…あ、ごめん」
「大丈夫。急にどうしたの…?」
俺は今見えた幻をミラノに話した。ミラノはもちろん驚いたが、リルを捕まえた時に同じめまいが起こっていたことを思い出すと、首を縦に振った。
「…前にも同じように夢が見えて、その夢は2つとも正夢だった。この夢も正夢だと私は思うから。どっちにしろ、この滝の奥以外に調査できそうな場所はないから」
俺は何も言わず、少し後ろへと下がった。ミラノも何も言わずに俺の隣に並び、共に前に立ち塞がる滝を睨んだ。
「…よし、行くぞ。せーのッ!!」
「それっ!!」
俺たちは滝の中へと姿を消した。こう書き表せば何も問題など無いように見えるが、実際は物凄い威力の水が俺たちを襲い、体全身にとんでもない激痛が走っていた。
体中がめちゃくちゃ痛い。…でも、痛いということは生きている。生きているということは…
「…やっぱり裏は空洞か」
「ペルはここの奥を調査しろと言ってるんじゃないかな!?」
「そうだな。第一滝壺に洞窟があるだなんて誰も思いもしなかっただろうな。行くぞ」
洞窟の中は涼しかった。太陽の光が当たらないから熱が籠らないと同時にめちゃくちゃ暗い。自分の頬に電留を流して、懐中電灯の代わりにした。
このダンジョンで警戒すべき相手は『アメタマ』。別に俺の電気ショックで効果抜群ノックアウトになるのだから、近距離戦は問題ない。しかし、大部屋で奴に気付かれたとき、『電光石火』の思い出したくない一撃に加えて、『あわ』で長距離攻撃を仕掛けてくる。
その威力の高いこと。探索前は6個ほど準備していたオレンの実が4階現在で残り2個まで減らされてしまった。
「…あと何階ぐらいだ?」
「結構深くなってきたよね…入口のところと比べて地形も結構変わってきてるから、全くのカンだけどあと3、4階ぐらいあるんじゃないかな…」
マジかよ、と弱音をこぼしながらも、コダックやらモンジャラやらの雑魚を蹴散らしながら奥へ奥へと足を踏み入れていった。