ポケモン不思議のダンジョン  Destiny story






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第1部 予知夢
13 調査依頼
「昨日の夜、キザキの森という場所にある時の歯車が…何者かによって盗まれた」

 ペルが吐いたその一言で、厳粛であるはずの朝礼が騒めいた。誰が。何のため。警察は動いてるのか。など、みな口々に自分勝手な質問をペルに浴びせ続ける。それでもペルは冷静に『静粛に!』と叫び続け、やがて静まった。

「場所は大陸の中心部に存在する難関ダンジョン『キザキの森』。今日早朝に探検に出発していた探検家2名が警察に通報して発覚した。既に警察は犯人の捜索に何百人もの体制で動いている。
 時の歯車が盗まれること自体ありえないのだが…1つ盗まれたということは、ほかの時の歯車も盗まれる可能性はある。不審な人物を見つけたらすぐに報告するようにという令が来ている」

 みな驚いた。当然だろう。世界のバランスを保つ柱が1つ壊されたのだから。昨日そういう話をした矢先にこんな事件が起こった。

(…それ以前に、どうやってキザキの森に時の歯車があることがわかったんだ。時の歯車は幻に近い存在だ。どこの本を見ても場所なんか書かれてない。どうやって…)

 
 今の心の声の主が誰であるかは、ここでは明確にしないでおこう。

「今自分たちにできることは、犯人捜索ではない。情報が少なすぎるからな。お前たちはいつも通り、ギルドのために働けばいいのだ。それじゃ!朝の誓いの言葉!せーのっ!!」

『ひとーつ!仕事は絶対さぼらなーい!…』

 朝礼が終わり、いつもと変わらず皆各仕事場へと向かっていく。グランたちも地下1階へと上り、依頼の選択へと向かう。

「ああ。お前らちょっと来い」

 少しぶっきらぼうな口調でペルは俺たちを呼び出した。別に悪いことはやってないけどな。ミラノもそう思いながらペルの前に立つ。
 俺たち2人の顔を見ると、とても楽しそうな顔をしながら、俺たちにある事を伝えた。

「今日はお前らに探検隊らしい仕事をやってもらうよ♪」
「えっ!?やったー!!」

 ミラノは目を輝かせて喜ぶ。俺はというと、大したリアクションはない。『へー』っていう感じ。同じ大広間にいた『グレッグル』やバビルがなんだなんだという顔をしながらこちらを見てくる。

「最近お前らは弟子の中でも特に頑張ってるからな。特に、先日のムーンを捕まえたのは見事だった♪
 そこで、お前らには今日は依頼の遂行ではなく、『調査令』を出す』
「調査って…どこか知らない場所を調査してこいってことか?」
「そうだ。地図を取り出してみな」

 そういわれ、言われるがままに地図をカバンの外ポケットから取り出した。ミラノの顔をちらと見てみると、それはそれは楽しそうな顔だった。探検はこれからだというのに。

「ここだ。今日はお前らにここの調査を頼む」

 ペルが差した場所は、トレジャータウンから遠くは無い滝。地図で見るかぎり普通の滝。ただ、地図上でギルドの丘と滝の大きさがほぼ同じよう大きさというあたり、かなり大きい滝だということが見てわかる。おそらくこれまで通りダンジョンなのだろう。

「ここの最奥部に何かあるのではないかという情報が入った。ダンジョン内の難易度もそこまで高くはない。お前らならできると信じているからな」
「わかりました!」
「うぃーっす」

 適当に返事を返した。だが、ペル本人に頼まれたことだから、この調査を成功、良ければ新発見を報告することができれば、ギャラクシーの評価はうなぎ登りだ。グランたちに近づくためにも、この簡易な調査を失敗するわけにはいかない。



〜トレジャータウン〜



「…お、これからどこ行くんだ?」
「グランじゃねえか。調査令出されてからさ、準備してるところだ」

 丁度商店の前に来たとき、グランたちと会った。グランたちもこれからトゲトゲ山へ依頼の遂行に向かうところらしい。お尋ね者の依頼を2つこなすそうだから、それなりの準備をした跡が少し膨らんでいるトレジャーバッグに表れている。

「…なるほど、滝の調査か。電気タイプのお前は有利になるかもしれんが、たまに地面タイプの奴もいるからな」
「水タイプのポケモンは状態異常にする技持つポケモンが少ないからね。基本的に念のための回復道具で十分だよ」
「回復道具だけいいのか?」
「水ポケモンは威力が強いかつ遠距離技も豊富。こいつと違ってね!」
「黙れ狐」

 頬をぐにぐにするルナをビンタ一発で弾くジュア。地面に突っ伏す哀れな狐。

「…前も言ったが、戦闘能力があればどうにかなる。ただ、打たれ弱い奴がチームに居るなら話は別だが」
「こいつみたゲフッ!?」

 学習しない狐。今度は予測されていたかのように平手で地面に張り倒される。

「…あと、食料もな。未知のダンジョンは深さがわからないからな。せっかく回復の準備はできてるのに空腹で倒れたら笑いものだぜ」
「じゃあ食いしん坊のジュアせゴフッ!?」

 学習しない奴2匹目。…誰がいつジュアが食いしん坊だと言ったんだ。てか他の探検隊の、しかも女をひっぱたくとは、ジュアって容赦ないタイプなんだな。

「そんじゃ、調査頑張れよ」
「おう」

 グランは少し重そうなバッグとルナを担いでそのまま去っていった。言われたことを参考に準備を進める。

「エイケさん、リンゴ2つください」
「はいよ〜!合計100Pになります〜!」
「…!」

 最近、財布の中が賑やかになってきた気がした。






































■筆者メッセージ
文字数稼ぐためにトレジャータウンの場面でいろいろ書きました。日常の場面を描くのは簡単ですけど、ダンジョン内は難しいんだよなあ…
アサシオ ( 2016/03/20(日) 12:34 )