06 夜は意外と賑やか
「いや〜!ホント危なかった!助かったよグラン!お前たちが居なかったらギャラクシーはどうなっていたか…」
現在地、ギルド地下1階。グランたちと共にギルドへ戻り、報酬を受け取りにペルのところへ向かった。依頼掲示板の前にペルはいて、その隣には依頼人のバネブーも居た。ペルはとても上機嫌でうれしそうだったが、俺たちその言葉には喜べなかった。
(…おい。なんで俺らが助けたことになってんだ?)
(知らねえよ!説明してやれよ!)
(こんな上機嫌なのに本当のこと話したらペルの気分落ちるだろ!)
(なんでそういうの気にしてんだよ!落ちるなら落ちるで本当のこと言えよ!)
そんな話もペルの耳には入らず、相変わらず笑顔でしゃべり続ける。ミラノやルナも納得できないような表情をしている。
「これはお礼です。…といっても、これぐらいの物しかないのですいませんが…」
バネブーは丁寧な口調でお礼の品をルシャに手渡した。箱詰めにされており、中を空けてみると、言っていたことと反して様々な道具が入っていた。
「…金一封になんか栄養剤?が3つ。…か」
「…ってええ!?これほとんど簡単に入手できない物じゃん!こんなの貰っていいの!?」
「どうぞどうぞ。真珠に比べたら安いもんですよ。では、失礼します」
実に軽そうな足取りでバネブーは帰って行った。金一封の中身はPと書かれた金貨が大量に入っていた。この世界を知るミラノのリアクションからして、この報酬はかなりデカいものだとわかった。
「お前たちよくやったな。だが、それは預かっておこう」
「「は!?」」
ペルは俺から箱詰めの報酬を盗り、俺たちに背中を向けて何かをやり始めた。すると、ジャラジャラという音が聞こえた。まさかこいつ…
「お前たちの報酬はこれだ」
「「はぁぁあああ!!?」」
渡されたのは10Pと書かれた金貨20枚。たったの200Pである。3つの瓶もすべて奪われた。
「ちょっ、不公平だろこれェ!?俺たちゃ強敵との戦闘も掻い潜ってきたのに報酬9割以上没収かよ!?」
「これがギルドのしきたりだ。我慢しろ」
「「そういう問題じゃねえ!!」
そんなギルドの新弟子とそのギルドのナンバー2が激しく言い争うようすを、掲示板の近くに居たポケモンたちは不思議そうな目で見つめていた。
結局逆転することはできず、俺たちがもらった報酬はたったの200Pだった。
〜☆〜
「ったく!なんだよあのしきたりは!俺たちあんなに頑張ったのに…」
夕食の用意ができるまでの時間、弟子たちは地下2階で座っておしゃべりをしている。テント(?)の門は閉めたので、バビルなどの裏方ではたらく者の仕事は終わり、もちろん地下1階の掲示板の前に探検隊の姿は見当たらない。それでも、『真っ暗だと不気味だから』というわけのわからん理由で無人の地下1階には松明はまだ灯されている。
俺たちは地下2階の大広間の隅っこでグランたちと何気ないおしゃべりをしていた。
「僕たちもあの報酬を没収していくっていうのはまだ慣れないなあ…」
「…ん?てことは、ジュア先輩たちもまだ入って日が浅いってことですか?」
やけに先輩に対する口調が丁寧なミラノ。
「ああ。ていっても、まだ入って一週間とちょっとだけどな。あと、先輩付けはしなくていいぜ。どうせ年同じくらいだし」
…なんだか報酬没収制には一ヵ月ぐらいしないと慣れないような気がした。
そう思っていると、食堂側から心地よい鈴の音色が聞こえてきた。音がした場所を見てみると、『チリーン』が優しそうな笑顔で浮かんでいた。
「みなさーん!食事の用意ができましたよー♪」
「「「わぁーーーー!!!」」」
その喜び方の激しいこと。バビルは驚異的なスピードで回転し、別の者を見てみれば、天井に頭ぶつけるのではないかと思うほどのジャンプをするものもいた。そして、俺が一番乗りだと言わんばかりにみな食堂へ駆け込み、あっという間に俺たちグループは取り残された。
「…ルシャ、俺と早食い勝負な」
「…いいぜ。だけど、ぜってぇー負けねえ」
「その勝負、僕も入れて」
その会話をルナとミラノはやれやれといったような表情で見ていたが、結局はみんなテーブルに用意された果実を次から次へと口に押し込んでいった。
「ごちそうさまー!」
「なんか腹いっぱい食ったら眠くなってきたぜ…」
夕食を終え、食堂から出ようとするときにちらほら会話が聞こえた。
「それじゃ寝るか!おやすみー!」
「「おやすみー!」」
…明日もがんばろう的な夜の集会はないんだな。
〜自室〜
「…ふう〜!やっと寝れるよ…」
ベットに飛びつき、顔を埋めながらミラノが一日の疲れを漏らした。それを見てると俺も眠くなってくる。
「…きょうは大変だったな…」
「うん…でも、私は楽しかったよ!」
(俺は結構危なかったがな)
「…ミラノ、俺を探検隊に誘ってくれてありがとな」
「え?いいよぉ今更…」
「じゃあ、明日も頑張っていこーな」
「うん!」
朝に爆音が耳を襲うことを二人は思い出せず、そのまま眠りに落ちた。