ポケモン調査探検隊 タブンネ地下帝国発見!?
「知られざるさまざまなポケモンの生態を隔週に渡ってお届けする、ポケモン調査探検隊のお時間です。本日ご紹介するのは、このレポート!」
――恐るべきヤグルマの真実!タブンネ地下帝国発見!?――
「ご存知、タブンネといえば、献身的な性格として知られるポケモンです。時にポケモンセンターでの補佐役を行い、草むらから時折現れ、野生のポケモンでありながら、初心者トレーナーの育成を助けてくれます。今回はそんなタブンネの知られざる生態に、皆さんと共に迫っていきましょう。」
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2013.03/15 [fri] - AM 01:35:23
混沌と生い茂る深き闇の中、猛毒を持つ危険なポケモンも生息する大樹海、ヤグルマ密林を休み無く歩き続けて、約2時間と35分34秒。
ついに我々調査隊は、密林のゲート付近への到達に成功した。
数々の隊員のポケモンが倒れる中、人工灯の光に包まれ、安堵の中ゲートを潜り抜けた我々の前に立ちはだかったのは、巨大な鉄の怪物だった。
「なんだ、あれは!」
シリンダーブリッジ 長さにして1945m 塔高83m 向かいにあるヒウンシティの人工光の影響か、硬質感のある近代的な装飾の目立つ橋だが、その歴史は古い。
ヒウンの街からリゾート砂漠を迂回する4番道路から直進し、5番道路と16番道路に分かれるライモンジャンクションには区画整理の問題から、交通渋滞の改善が求められてきた。そこでこのシリンダーブリッジが建設される事になるのだが、後に起こるヒウンシティの大規模な企業成長が、近代化を求める高取得者達を、シッポウシティ方面へと押し上げていく。
結果的にヤグルマ密林には迂回路が敷かれる事になるのだが、これが当時発足の段階にあったシッポウシティからの鉄道用線路建設工事の予定地をそのまま応用したものとなり、これと同時期に行われた予算の見直しから、ヤグルマ密林を渡るヤグルマ鉄道用線路の計画は実現不可能となった。
ヤグルマ密林に区画整理された道があるのと、シッポウシティからヤグルマ密林へと続く線路が途中で切れているのは、この名残である。
何故我々がこの区画整理された平坦な道を通る事なく、あえて広大な密林の中を直接進む事になったのか。それは長時間森の中を歩く事によって、我々の身から、薄汚れた都会の匂いを消し去る為である。
何故そんな事をする必要があるのか。それはこれから出会うポケモンが、非常に警戒心のつよい状態で、秘密裏に行っている事を探る為である。と、これは毎度の如く我々が野生ポケモンの生態を探る上では儀式のように行っている事であるので、今更説明の必要もないだろう。
我々調査隊は、ゲートから直接シリンダーブリッジに向かわず、休憩用ベンチの置かれている柵を乗り越え、シリンダーブリッジの下部、一見して何の変哲もない橋を支える鉄柱付近を、物陰に隠れて観察した。
すると、人目を警戒したタブンネが、周囲の様子を観察しながら、草陰から姿を現し、なにやら鉄柱付近を不自然に歩き始める。
そして次の瞬間、我々は驚くべき光景を目にする事になる!
―――CMの後!衝撃の事実が明らかに!―――
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「番組の途中ですが、ここで緊急ニュースをお知らせします。先程、シリンダーブリッジ、ヤグルマ密林付近の自然保護区域に、無断で進入した男が、現行犯逮捕されました。男は「番組のつもりでやった、後悔はしていない」と延べ、犯行の意図を明らかにしましたが、この詳しい動機については、明らかになっていません。ニュースをお伝えしました。」
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「この時間は[ポケモン調査探検隊]放送の予定でしたが、番組の予定を変更して、アニメ番組をおとどけします。まことに申し訳ありません。それでは引き続き、アニメをお楽しみ下さい。」
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どこにあるのか知れぬ、広い空間。
生放送の番組を見ていたとある一同は、この事態に安堵の声を浮かべていた。
時おり天井から、乗用車の排気音が聞こえてくる。
「ジュンサーがうまくやったようだブンネ。」
「この場所はトレーナーの育成にも一役買っているブンネ。当然だブンネ。」
「ブブブン、イッシュ地方で我々の息の掛かった公共組織はいないブンネ。さて、トレーニングを続けるブンネ。」
一匹のタブンネが合図すると、大規模な空間に明かりがともる。
そこには100いや、1000を超えるタブンネの軍勢が、大量のトレーニング用機器、見覚えのある特殊機器と共に、リーダーらしきタブンネの呼びかけに応え、一斉にそちらを向いていた。
「危機は去ったブンネ!今日も新人トレーナーの為に、己の経験値を高めるブンネー!」
『タブンネー!』
『タブンネー!』
「まずは今日のノルマブンネ!訓練用ポケモン図鑑を使ってのレベル認識誤操作トレーニングと、倒れた時の経験値分散数値の固定トレーニングブンネ!はりきっていくブンネ!」
『タブンネー!』
『タブンネー!』
ここはシリンダーブリッジ地下、タブンネ大帝国。
今日もここでは、イッシュの草陰に旅立つ、新たなタブンネ達の育成が行われている。
だがその帝国の存在に気付くトレーナーは、極めて少数である。
だが決して足を踏み入れてはならない。
何故ならそれは、事実を知らぬ者を増やす事につながるのだから……。
「あ!侵入者ブンネ!捕まえるブンネ!」
「シンプルビーム部隊突撃!困らない程度に記憶を操作して帰すブンネ!」
『シンプルー!!』
『シンプルー!!』
ぎゃぁー!
おしまい